8月9日、土曜日の午後、CurzonのMayfairで見ました。
リリース30周年を記念したリバイバルがものすごく小規模に行われていたのと、このクラシックなシアターももうじきなくなってしまうので、見にいく。
原作はJane Austen(最初著者名は”By A Lady”とされていた)の最初の小説(1811)、監督はAng Lee、脚本を主演のEmma Thompsonが書いて、この脚色でオスカーを受賞している(脚本、ほんとにすばらしい)。 
邦題は『いつか晴れた日に』 … (改めて)「はあ?」ってかんじ。
そういえば、同じくリリース30周年で少しだけリバイバル公開されていた”Clueless” (1995)もJane Ausenの”Emma” (1816)へのオマージュで、それを言いだすとColin Firthが出ていたTV版”Pride and Prejudice”も95年。 なんだったんだ1995年。 そしてJaneの生誕250周年の今年は、Elinor役に”Normal People” (2020)のDaisy Edgar-Jonesを据えたリメイクが進行中である、と。
そういえば、こないだ見たフランスのrom-com “Jane Austen Wrecked My Life” (2024)では、パリの書店Shakespeare and Companyで働く主人公が初めてJane Austenを読むという客にこれを勧めていた。同じ職場の男性に対しては、あんたなら”Mansfield Park”(1814)かなあ(たしか)、とか。
本編上映前に、今回のre-releaseを記念してEmma Thompsonからの挨拶ビデオがあって、みんな若かった、”Titanic”前のKate Winslet、”Paddington 2”前のHugh Grantがいる… とか語ってくれて、それだけでなんかお得したかんじになる。(最後に顔を見せるのは..)
父が亡くなり、遺言により邸宅から追い出されて田舎のコテージ - でも十分豪華に見える - に引っこむことになった母(Gemma Jones)と娘3人 – Elinor (Emma Thompson), Marianne(Kate Winslet), Margaret (Emilie François)がいて、彼らに寄ってくる人々のなかにはよい人もいれば、意地悪な人もいる。彼らがどんなふうに意地悪だったり、どんなふうに素敵だったりするのか、を姉妹それぞれの視点 – まさに“Sense and Sensibility” - 『分別と多感』のなかでヴィヴィッドに描いて、これと同様のことが次の”Pride and Prejudice” (1813) - 『高慢と偏見』のなかでは突き刺さってくる他者の眼差しも加えたより深化・錯綜した形で綴られて、これらは(自分の身に降りかかってこない限りにおいて)最高におもしろいスリル満点の読み物となる。
こうしてElinorは姉妹たちを追いだした強欲陰険なFanny (Harriet Walter)の弟のEdward Ferrars (Hugh Grant)と出会い、Marianneは最初にColonel Brandon (Alan Rickman)と出会い、それからちょっと洒落てて奔放なWilloughby (Greg Wise)とぶつかってめろめろになって、こいつにふられて病で死にそうになったところをBrandonに慰められて救われる。
理想の男たちは最初から王子様として現れるわけではない。Edwardはおどおどして目を合わせようとせず、明らかに挙動がおかしいし、Brandonはむっつり怖そうで、ふたり共なにを考えているのか簡単にはわからない。Willoughbyだけはわかりやすく爽やかに寄ってきて気持ちよいところを撫でてくれる。だがそのわかりやすさはわかりやすく裏の顔と事情を晒してこちらをあっさり叩き落としてくれる。
ここには明らかにJane Austen特有(というかここから広がっていった世界も含め)の、男女(だけでなくなんでもそうだが)関係はそんな単純に決まったり決められたりするものではなく、こっちから出ていってなんぼのもん、にどうにか、ようやく、なる(ものはなるんだからやっちゃえ)、ということを性差とか境遇とか関係ない普遍的な駆け引きのなかに図示して子供にも大人にもためになるったらないの。
とにかくMarianne - Kate Winsletがすばらしい演技を見せて、あれだけ酷い目にあったってどうにかなるのだ、というのとしっかりさんに見えるElinor - Emma Thompsonだってわかりやすい勘違いをして、そんなでもどうにかなるのだし、そのSenseとSensibility勝負の世界に、べつになーんの、だれの保証も慰めもない、けど飛びこんでみればよいのだ、って。 この辺の押しつけがましくなく軽く背中を押してくれるのってよいなー、しかない。
8.20.2025
[film] Sense and Sensibility (1995)
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