8.11.2025

[music] BBC Proms: From Dark Till Dawn

8月8日、金曜日の晩23:00から、9日土曜日の朝7:00にかけて、Royal Albert Hallで見ました。

少し前にここで書いたBBC Proms Late Nightの拡大版というか、これまでなかったよね? と思ったが今回が初めてではなく、80年代にも開催されていたらしい。MCの人がその時も来ていたひと〜? と客席に聞いたら手を挙げていた人が数名いた。

夜通し朝までライブ、というと、これまでフジのRed Marqueeの床とかクラブ系のくらいしか経験がなくて、クラシックでやったらどうなるのか、今回もアリーナはスタンディングで椅子はなし、後ろの方は最初から座ったり転がったりの人々が多めだったが、最前のかぶりつきの人はずーっと立って聴いていた。すごいなー。

自分はいつものStall(椅子席)の一番前の端っこで、べつに寝たくなったら寝ちゃえばいいし、だったのだが、それにしてもなんで土曜日じゃなくて金曜日の晩にやるのか。仕事があるから備えてのお昼寝とかできないじゃんか。(リモートにして少しだけ寝たけど)

全8時間のライブは8アーティストが出る3部に分かれていて、それぞれの合間に20分くらいの休憩があるのと、各部の途中にも15分間の小休憩があって、みんなビールを買うのに並ぶのだが、売店は午前1時くらいには閉まると。それにしてもみんななんでそんなに「まず」ビールなの?

最初にBBCのラジオ放送用の(?)男女ふたりが出てきてルールや時間割などの説明をして、今宵の出演アーティストのキュレーションをしたAnna Lapwoodさんによるパイプオルガンから。ここのパイプオルガンの音は本当に気持ちよい。”Pirates of the Caribbean”のテーマもやったりしてみんなわーわー喜んでいたが、この曲も映画もおもしろいと思ったことがないのでここは少し微妙だった。

次のBjarte Eike率いるノルウェーのBarokksolisteneは太鼓、ダブルベース、いろんな弦いっぱい、女性ダンサー2、全員が歌って動きまわって止まらない、ものすごく楽しいトラッド/古楽バンドで、彼らのトラッドの範囲は北欧やカナダ、スペインまで含む汎ヨーロッパのそれで、全体がつんのめりつつ隙間を交互に緩急自在に編みあげていく間合いと掛け合いが絶妙で、バンドサウンドてして聴いてみると緻密で、ものすごく好みなやつだった。またライブあったら行くかも。こういう出会いがあるのがたまんないのよね。

この後がAnna Lapwood の指揮によるPembroke College Chapel Choir。選曲も含めてコーラスを美しく響かせるというよりスペクトラムとして広げてみようとしているような。最後にBob Dylanの”Make You Feel My Love”をやって、オルガンとコーラスがDylanをこんなにも変えてしまうのか(よい意味で)と。

午前2時半からの第二部の最初はピアノの角野隼斗で、どういう人か全く知らなかったのだが、それで日本人の客が多かったのかー、と後で気づく。
舞台の上にはグランドピアノ(右)と仕込み - 詰め物をしたアップライトピアノ(左)の2台。最初のショパンのワルツは結構がりがりに硬く、自分にとってショパンのピアノ曲はぐにゃぐにゃ茹ですぎのポリーニが基準になっているのでこんなのもあるのかー、だった。

ピアノ2台を使った(アップライト→両方→グランドピアノ)ラヴェルの”Boléro”はこの人のパーカッシヴな強さがうまく活かされていて、なかなか盛りあがる。で、その後にRadioheadの”Everything in Its Right Place”。この曲の出だし(あのアルバム全体の、でもあった)の、おっそろしく不穏で異物な鍵盤の鳴りをどう表現するのかに興味があったのだが、割と普通にグランドピアノで流していた。これに続けて”Like Spinning Plates”もやって、ここは次のソリストのチェロ奏者Anastasia Kobekinaとのデュオ。この2人のをもっと聴きたかった。

休憩後のAnastasia Kobekinaのソロもすばらしかった。バッハの無伴奏チェロの一番二番で現代曲を挟みこんでいく(or その逆?)構成で、現代曲にはJohnny GreenwoodやBryce Dessnerの曲もある。最後のLuigi Boccheriniの”Fandango”がすごくよかった。チェロの可能性を.. というより、こんなにもうねったり弾んだり掠れたりするものなんです、ってあっさり淡々と捌いていくその手つきがかっこよい。

第三部は5:00からで、おそろしいことにここまでちっとも眠気に襲われなかったのは、それだけ楽しかったからと思われ、やはりさすがに次の12 Ensembleではちょっときた。けどストリングスの板があたまの奥に入りこんで、ああMessiaenだあ、とか叫んでいたのは確かに生々しく残っている。

次のセネガルのソロ・アーティスト - Seckou Keita はkoraっていう22弦のハープと彼の歌、数曲ではここにパーカッションが絡んで、ああおてんとさまがやってきたんだわ、って。

ラストはSleeping at Lastっていうアメリカのソロアーティスト - 元はバンドで90年代にBilly Corganに見出された人 - Ryan O’Neal - で、名前が(も)ちょうどよいんじゃない、と半分シャレで選ばれたらしい。ちょっとBon Iverに似たかんじの声と歌とピアノ。そこに最後はPembroke College Chapel ChoirとAnnaのパイプオルガンも入ってなかなか荘厳にきまって、閉まった。

終わったのは冗談みたいに朝の7時ちょうどで、出口にいるスタッフの人にいつものように”Good Night”と言ってからちがう”Good Morning”だ、って言い直し(向こうも間違ったりしていた)、ホールの外に出ると普通の週末の朝になっていて、South Kensingtonの駅まで歩いた。

この後は、いつものふつーの土曜日で、昼に映画を取っていたのでシャワーを浴びて2時間だけ寝た。

来年もあったら、まだ生きていたら、また行きたいな。

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