8.23.2025

[film] The Life of Chuck (2024)

8月17日、日曜日の昼、Curzon Victoriaで見ました。

脚本、監督はMike Flanagan、原作はStephen Kingの2020年に出た短編集に収められていた作品。
昨年のトロント国際映画祭でPeople's Choice Awardを受賞していて、予告では”Stand by Me” (1986)や”The Shawshank Redemption” (1994)に並ぶ感動! って熱く煽ってきて、そういう(どういう?)「感動」がなんか嫌でこれらの感動作をずっと見てきていないのでどうしようかな、だったのだが、Tom Hiddlestonを見にいく、ということにしてー。

三幕構成で、Act 3の"Thanks, Chuck"から時間を遡っていく形式。
全体のナレーションをNick Offermanが極めて落ち着いた、プレーンな声でやっている。

中学校の教師のMarty (Chiwetel Ejiofor) - Bridget Jonesが出てくるかと思った - がWalt Whitmanについての授業をしていると救急車が走っていって、生徒たちのスマホが次々に繋がらなくなり、なにやら惨事が起こっているようで、外に出ると人々は途方に暮れていて、そんななか、”Charles Krantz: 39 Great Years! Thanks, Chuck!"っていう謎の看板を目にするようになっていく。 Martyの元妻のFelicia (Karen Gillan)と再会して、この事態はなんなんだ?になっていると、Chuckの看板以外には交通手段も人々もいなくなり、もうどう見てもこの世界は終わりそう、というのが見えてくる。

並行して、死の床にあるCharles “Chuck” Krantz (Tom Hiddleston)で彼を看取っている妻と息子の姿が描かれて、Martyが経験している世界の終わりはChuckの死に伴う彼の内なる宇宙の消滅に伴ったものなのだ、ということが(我々に)わかる。

Act 2の"Buskers Forever"は、銀行員ぽくスーツを着て鞄をもって歩いているChuckがマーケットの道端でひとりドラムスを叩いている女の子の前で立ち止まり、なにかに突かれたようにそのビートにあわせて踊りだし、そこに彼に振られてうんざりしていた女性が加わって、ふたりは見事なステップを披露して、三人は片づけをして別れる。それだけなのだが、この映画は残念ながらほぼここだけかも。でもここだけでも見に行ってよいかも。

Act 3の"I Contain Multitudes"の主人公は、幼い頃に父と母を交通事故で亡くして祖父母の家に引き取られた7歳のChuck (Cody Flanagan)で、祖母のSarah(Mia Sara)にダンスを教わり、酒に溺れている祖父のAlbie (Mark Hamill)からは家の上のキューポラには絶対に立ち入るな、と言われ、学校の先生からはWhitmanを通してマルチチュードについて学ぶ(タイトルは「草の葉」にある一節で、Bob Dylanも曲のタイトルにしている)。

やがて祖母が亡くなると祖父のアル中がひどくなり、彼はChuckに会計士になることを勧める(数学がすべてだ)のだが、Chuckはダンスが好きで、ダンスサークルを通してCat (Trinity Bliss)と知り合い、イベントのダンス大会で喝采を浴びる。Chuckが11歳になってAlbieが亡くなり、全財産を相続した彼は、禁じられたキューポラに入ることができて、彼がそこで見たものは…

こんなかんじなのだが、まずは”The Life of Chuck”の”The Life”がどんなものだったのかが、幼年期と晩年を除くと十分に描かれていない(Kingの他の短編にあるらしい)ので、汲みとれるものがなさすぎるし、いや、マルチチュードを内包した生のありようを示しているのだ、それを知るのだ、なのかもしれないが、そんなのそうですか/そうですね、で終わっちゃうし。こんなふうに断片やモーメントを切り取ってその集積から「感動」を導けるのって、インスタとかTikTokのあれなのだろうか、ひょっとして自分に見えていない霊のようなものがいたりあったりするのだろうか、とか。

最後にChuckは自分がAIを搭載したロボットだったことを知る.. だったらもう少しおもしろくなったかも。

他方で、先に書いたTom Hiddlestonのダンスだけはよくて、“Much Ado About Nothing”でも存分に踊っていたが、祖母が手本にしていた(家のTVに映る)Gine Kellyくらいを狙えるかもしれない。踊ることの、その内部で肉の震える感覚を伝えることのできるダンスの使い手はそんなにいない。この人の身体はそれを実現できている気がする。あとちょっとだけ、カメラがきちんと動いてくれたらなあ…

しかし、老いて蹲っているMark Hamillを見てもすぐ”Last Jedi”にしちゃうのはよくないな。(自分が)


明日、土曜日の朝にここを発って、日曜日の朝に羽田に着いて3日間東京にいて、水曜日の朝に戻ります。手術後のチェックと人間ドックがメインなので、ご挨拶もしないまま毎度の不義理をお許しください。 だって暑いの嫌なんだもの。

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