7.02.2024

[film] The Bikeriders (2023)

6月24日、月曜日の晩、Curzon Aldgateで見ました。

そういえばバイクって乗ったことないし、集団とかチームでつるんでなんか(スポーツとかけんかとか)やるのも、その反対のアウトローみたいのも嫌いだし、だからあんまし見る気にはなれなかったのだが、予告がなんかよくて、監督はJeff Nicholsなので見ようか、くらい。

写真家のDanny Lyon (映画ではMike Faistが演じている)が、1963年から67年にかけてバイカーやその周辺の人たちにインタビューしたのを写真と一緒に纏めた同名本が原作で、だからドキュメンタリーをフィクションとして再構成したようなもの、と見てよいのか。

シカゴのVandals Motorcycle Clubの取材で、まず話を聞く相手はKathy (Jodie Comer)で、なんとなく夜に遊びにいったバイカーたちのたむろするバーでBenny (Austin Butler)と出会って恋におちた経緯が語られる。スコティッシュみたいな舌足らずのべらんめえのアクセントで、それがビリヤード台の前で捨て犬の目をしたBennyとぶつかって、Bennyは犬みたいに寄ってきて声をかけてくるのだが、Kathyはわざと突っぱねたりして、それだけでこの映画いいわー になる。その後の経緯はすっとばして「結婚した」になったり。Kathyの語りはこの後も続いていくのだが、バイカーたちの内側に取り込まれるでもなく外側に立つのでもない、バイクの荷台に乗っかるけど「なにが楽しいんだか」みたいなしらーっとした目と態度がとてもよいの。

VandalsのリーダーはJohnny (Tom Hardy)で、自分の家も妻子もある大人なのに、なんでか子分たちの面倒をみる羽目になっていて少し困ったふうの鈍重な熊で、事故で亡くなったメンバーの葬式で親族に唾をはかれても我慢して、でも組を存続させなきゃいけないことについてははっきりと意識していて、自分のあとを継げるのはBennyしかいないと思っている。

話はよくある他の組との抗争が勃発して広がって出入りだ出入りだ敵討ちだー みたいな方に向かうのではなく、ソロでばこん、てやられたり小規模でやりかえしたり、やられたバーに行って(バーテンダーがWill Oldham)焼き討ちするとかその程度で、血圧のあがる少年漫画とかアクション映画ぽい場面や見せ場はまったくなくて、無愛想で不恰好な男たちの乗ったバイクが路面を擦りながら転がっていく、それだけでいいじゃん、て。実際それだけでじゅうぶんよいような。

チームのなかで一匹のBennyは別として、なに言ってるのかほぼ不明のMichael Shannonとか、同様に西から流れてきた得体の知れないNorman Reedusらのありようの方が印象に残り、チームに入れてほしい、って寄ってきたガキ(Toby Wallace)をJohnnyが突っぱねた頃から彼らバイカーの世界周辺がよりキナくさいやばいものに変わっていく。そういうのはもう誰にもどうすることができないものだった、ってしょんぼりと閉じてしまうある季節の終わりを。

マッチョな暴力やドラッグの導入とともに彼らの道路が煙って汚れていく、その少し手前の摩擦の断面を切り取って、その路面で彼らはどんなふうに動いたり風を感じたりしていたのか。 『断絶』 - ”Two-Lane Blacktop” (1971)にあった路面に反響していく不機嫌と居心地の悪さはここにも - 時代は少し前だけど。

真ん中の3人 - Austin Butler - Jodie Comer - Tom Hardyのぜんぜんあんたなんて頼ってないしひとりでやれるもん、だけどやっぱりいてほしいかも - いていいよ、のお互いに少しだけ寄っかかった関係がすごくよくて、Austin Butlerはこないだの”Elvis”よか好きかも。

音楽も深く考えないノリとしか思えないノリのガレージ系がやすりのように気持ちよく響いてきて、それだけでじゅうぶん。

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