6.29.2024

[film] Strike: An Uncivil War (2024)

6月18日、火曜日の晩、Curzon BloomsburyのDocHouseで見ました。

“Battle of Orgreave” – 「オーグリーブの戦い」と呼ばれる1984年6月18日 - 見た日は丁度40周年となる日だったのか - 炭鉱ストでの炭鉱労働者と警察隊(サウス・ヨークシャー警察とメトロポリタン警察を多く含む)との衝突を描いたドキュメンタリー作品。上映後に録画してあった監督と出演者 - あの日ストに参加していた人たちとのQ&Aの映像が流れた。

初めのほうで英国各地での炭鉱ストライキの歴史が語られ、60-70年代頃の、特に72年のそれは労働者の権利確保と待遇改善に大きく貢献したりしてきた。ので、今回のもこんなことになるなんて誰も想像しておらず、笑ったりしながら朗らかにストの前線に向かう労働者たちの姿が映しだされ、ただ、普段だったら車を止められたりするところでそうでなかったり、いつもとは少し様子が違っていた、と。

ストが始まるとピケ隊は一箇所に追われて固められ、その周りをこれまでにない規模の警官隊が取り囲んで、盾でびっちりガードしてそれを打ち鳴らして威嚇しながら追いつめて、その囲いが少しだけ開くと馬に乗った騎馬隊が固まっているピケ隊を方々に蹴散らし、彼らが散り散りになったところを追いかけて寄ってたかって袋叩きにして引っ立てる、を繰り返す。それがまるで時代劇の戦のシーンを見るように秩序だった状態で行われる。Uncivil War …

当時のサッチャー政権は、香港やインドを植民地にしていた時代に地元民を制圧する際に使った暴力的な手法マニュアルを導入してなんとしてもストをどうにかしろ、と警察に指示をしており(その秘密文書もでてくる)、そこまでして政府と体制側の威信(というのかなんなのか)を保ちたかったのか、労働者を抑え込みたかったのかと、暗澹とするが、それ以上に前線で、非武装状態の、Tシャツなどを着たふつうの労働者や若者たちに寄ってたかって殴る蹴るのやりたい放題をやって笑ったりしている制圧部隊の映像には恐ろしいしかない。

結果、ピケ隊の71人が暴動で、24人が暴力的障害で起訴され、報道映像は警察側の証言 – ピケ隊が暴徒化したので鎮圧した - ばかりを流したので完全に警察側の手の内の勝利で終わり、この衝突以降、ストの参加者も規模も小さくなって衰退して、やがて鉱山そのものも閉鎖されてしまう。(91年になって警察側はこの時の暴行、不当逮捕、不法拘留、悪意ある訴追を認め、補償金を支払っている)

警察と政府の共謀も怖いがそれ以上に恐いと思ったのがメディアの対応で、BBCは当初のニュース映像でピケ隊の投石→騎馬隊の投入、と伝えていた順番が実際には逆だったことを後になって認めていて、こんなの指示を受けてやっていたに決まってるし、間違っていたごめん、で済まされるわけないし。ドキュメンタリーの最後の方で、もうおじいさんになっている当時の参加者にまだ怒りは収まらないですか? と聞くと、誤ったことを報道されたんだぞ、って泣きだしてしまうところが残るし、それはとてもわかるし。

当時のサッチャー政権がどれだけ腹黒く極悪で、今も忌み嫌われているかがよくわかる内容だったが、後からでもちゃんと検証して謝罪や補償がされる反対側で、振り返って思うのはやはり現在の自分がいた国のほうで、ストやデモをやってはいけないこと、のようにすり込まれているうちに政府も司法も警察もメディアもダンゴになって戦前のそれに回帰していて、拷問も揉み消しも捏造も、なんでもありになっている… っていう方の恐ろしさ、だわ。

SDGsだウェルネスだ、などみんなきれいっぽいことばかり並べて浮かれている今こそ向かいあうべきドキュメンタリーだと思った。

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