7.18.2024

[theatre] Alma Mater

7月9日、火曜日の晩、Almeida Theatreで見ました。
作はKendall Feaver、演出はPolly Findlay。

“Alma Mater” – アルマ・マーテルっていうのは「母校」のことよね、かつてどこかの学校の校歌にあった気が.. した。

舞台は四角でベンチくらいの寄りかかって座れる高さの台で囲われていて、学校のピロティのようでもあるし、戦いのリングのようにも見えるし、奥には創設者だろうか - 女性の肖像画が掛かっていて、劇が始まる前にはそこで俳優/登場人物たちが寛いで談笑している。

英国のどこかの全寮制の(たぶん)カトリックの大学で、最初に80年代、ここに女子学生が入りだした頃のセクハラ系のいたずら(女子の部屋に卑猥ななにかがー)が笑いと共に軽く振り返られて、時代はいま – より少し前かな。

その最初の頃に入学した女子学生のひとりであるJo (Justine Mitchell)が同学で最初の女性学長をしているカレッジの寮で、新入生歓迎パーティーの晩、新入生のPaige (Liv Hill)が同学年のGerald (Liam Lau-Fernandez)にレイプされた、と3年生のNikki (Phoebe Campbell)に告げる。Nikkiはあってはならないことだから学校本部に言いに行こう、とPaigeを引っ張るのだが、彼女はいやだできない、とうずくまってしまうので、NikkiがJoのところに行って報告すると、Joは動揺しつつも学校の規定にある通り、本人にここに来て報告させるよう返すと、Nikkiは傷ついている本人にそんなことできるわけないでしょ、と怒って、埒があかないので掲示板サイトにレイプ被害を報告する – と同様の#MeTooポストが山のように連なってしまい…

JoはChairmanのMichael (Nathaniel Parker)とその妻でJoの親友でもあるLeila (Nathaniel Parker)とこの件の対応方針を巡って議論するのだが、学校として対応しなければいけないこと/すべきこと、その外側で一人歩きを始めて膨らんでいく事件のこと、これまでの学校の伝統とかカルチャーとこれから、などがぐじゃぐじゃになってJoの態度も対応も二転三転してしまう。

そこに例えば80年代はもっと大らかだったのに、みたいなMichaelのにやけたコメント - 冒頭の事件も参照 – もあり。更に加害者の母親(強め)も現れて彼の将来もあるんだから投稿を消すように言ってきたり…. そして被害者に対するケアも加害者への追求も舞台上には一切出てこない。

伝統を重んじたり対面を気にする傾向の強い組織が、こういう事態になった時にいかにその脆さやみっともなさを露わにするのか、という内側の政治劇が中心で、毅然と立ちあがるNikkiや被害者のPaigeの影がやや薄められてしまうなー、と思っていると加害者の親がかき混ぜに来て、結果としてはやや焦点のぼけた、コメディに見えなくもないものになってしまったのは、これでよいのか? 学校関係者の会話にクローズアップして緊迫した法廷劇のようにした方が伝わったのでは、と思う他方で、ここに描かれたような全体像がはっきりといまの学校の現実を反映しているのだとしたら…  というその先に「母校」が。ここは人を育てる機関で、ここで育ったというのはこの先ずっとついてまわるわけでー。劇のポスターは女性が創設者の肖像画に真っ赤なスプレーを吹きつけているイメージなのだが、でもこのシーンは劇中では描かれない。

80年代~90年代のバブリーで大らかな時代を過ごした当時の若者がじじいとなって今の社会の中枢のほうに寄って、割としょうもないことをしたりやったりが(もうとうに)始まっているという感覚がすごくあり、同時に被害者の人権はぜったいに守られるべきというその線の周りでなんでこうなるかな?(怒)という事態は続いている。これは時代や世代のせいにできるものではないし、許されることではないしー。

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