7.09.2024

[film] Kind of Kindness (2024)

7月4日、木曜日の晩、Picturehouse Centralで見ました。35mmでの上映だった。英国ではR18指定。

邦題は『憐れみの3章』。Yorgos Lanthimosの”Poor Things”(2023) に続く新作。予告を見てもぜんぜんおもしろそうじゃなかったところに164分、と聞いて引いて、どうしようか… だったのだが前作がオスカーを獲ったりしている有名なやつなので見ておいたほうがよいかー くらい。(見なくてもよかった)

3章に分かれていて、いつもの(なぜか馴染みのように見えてしまう不思議)Emma StoneとJesse PlemonsとWillem Dafoeと他にもいるけど、それぞれが異なるシチュエーションで異なる役柄で出てくる。各章のタイトルは"The Death of R.M.F."、"R.M.F. is Flying"、"R.M.F. Eats a Sandwich"で、Yorgos Stefanakosの演じる”R.M.F.” – この人物の役名だけは3章通して固定されている – が少しだけ登場するがパイロットだったり死体だったり、単なるなにかの象徴としているような。

Robert Fletcher (Jesse Plemons)は妻から読む本から何からなにまで豪邸に暮らす経営者のRaymond (Willem Dafoe)の意向に沿ってきちんと調達されコントロールされていて、両者はそれに従って生きることに快楽を感じてきたのだが、交差点で車に乗ったR.M.F.に車ごとぶつかって殺せ、というのだけは応えられないでいたら、すべてを失って途方にくれて… "The Death of R.M.F."

警察官のDaniel (Jesse Plemons)は海洋生物学者の妻Liz(Emma Stone)の失踪を嘆いていたが、彼女はヘリコプターに乗ったR.M.F.によって救出されて戻ってきて、でも彼女は別人のようになってしまっていたので挙動不審になったDanielは停職処分をくらって、Lizが父に語った夢の世界では犬が人間を支配していて、LizはDanielの言うことになんでも従うので.. "R.M.F. is Flying"

カルト教団の信者であるEmily (Emma Stone)とAndrew(Jesse Plemons)は、すべてを癒して死者を生き返らせたりできる能力を持つ女性を探したり試したりしていて、Emilyは別居中の夫に会ったりして、彼に薬を飲まされてレイプされた後で「汚れている」って教団を追われて… "R.M.F. Eats a Sandwich"

こんなふうにあらすじを書いているだけでわけわかんない、というかどうでもよくなってしまうのだが、既にある/あった関係 - その最初からなんか変 - の、支配したりされたりの糸が捩れたり壊れたりして、その周辺で疑念と不信が渦を巻いて被虐(M)と加虐(S)の快楽をめぐるピンポンが始まって… 「まとも」な人はひとりもいなくて、でも「まとも」とか「普通」なんてないのだ、ということを今さら言いたいわけではないし、もちろんそこに「憐れみ」も”Kindness”も欠片もあるようには思えない。

ある特定の、特殊な関係 - 使役とか服従とか動物とかカルトとか - のなかに第三者的ななにか - 「死」もそうかも - が挟み込まれたり持ち込まれたりすることで、変な方角 - その人は本当にその人なのか、その人でよいのか、なにを以て証明するのか、等 - に揺れたりブレたりこじれたりするさまとかその報いとかを描こうとしているようなのだが、”The Favourite” (2018)や”Poor Things”にあったデザインされたそれなりの外壁がないので、ただ非道でなんか気持ち悪いなにかが晒されているだけ、のように見えて、そこに”Kindness”とか言ってみたところでなんになるのか。たんに悪趣味ねえ、で終わってしまうのではないか。 もちろん悪趣味を晒すのがいけない、とは言わない、けど悪趣味を悪趣味たらしめる何か - それが例えば、”Kind of Kindness”だと思うのだが - が明示されないのでただのげろげろ漫画みたいになっているような。

音楽はピアノをヒステリックにカンカン引っ叩くのと荘厳ぽいコーラスのが交互にやってきて、でも結局一番残るのは(予告でも流れる)Eurythmicsの”Sweet Dreams”だったり。

全体としてはモダンアートのすごい外れたのに当たってしまった時のかんじというかー。

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