6月27日、木曜日の晩、BFI Southbankで見ました。
昔の(かな?)香港映画を紹介する小企画からの1本で、4Kリストア版のUKプレミアだそう。上映前のイントロでは、とにかく英国に持ってくる手続きが大変だった、とか。 英語題は”The Wild, Wild Rose”、日本公開はされていない模様。グレース・チャンの名前で検索してもほぼ歌手としてしか出てこないし。
監督は王天林 (Wong Tin-lam)、音楽にはRyōichi Hattori(服部良一)のクレジットがあった。 モノクロで128分のミュージカル。
ピアニストで婚約者のいるまじめなHanhua (Zhang Yang)が学校で教える仕事を諦めてキャバレーみたいなバーでのピアノ伴奏の仕事を始めようとしていて、それによって職を失う前任ピアニストのおじさんが妻は病気で子供も小さいのでお願いだから、って泣いて騒いで揉めているのを見てこんなところで仕事するのかー、とがっくりしていたら歌い手として登場したSijia (Grace Chang)の歌がすばらしくて - 実際に安定しないところはあるけど艶があって自在に伸びてすごく素敵 – ぽーっとなり、彼女の伴奏をしているうちにどんどん彼女に魅せられていくのだが、14歳から歌っている彼女には別れて刑務所に入っているやくざな夫がいたり、辞めさせられたピアノのおじさんの家族のために無理してお金をやりくりしてあげていたり、見えない影の部分が見えてきて、でもそういうところも含めて吸い寄せられるかのように動けなくなり、念願だった学校の音楽教師の職のオファーも来たのに蹴って、嘆き悲しむ婚約者と実母も棄てて、Sijiaのところに走ってしまう。
のだが、出所して嫌がらせにきた彼女の前夫を叩きのめしたHanhuaが別れた婚約者と実母の通報で刑務所に入れられたあたりから彼の様子がおかしくなって、出所してもずっと酒に溺れてSijiaを家に閉じこめ歌の仕事を一切断ってしまい、でもこのままじゃ生活できないし、わたしは歌が歌いたいの、って勝手に仕事を始めると…
原案はビゼーの「カルメン」だそうで、他にも着物を着て「蝶々夫人」を歌ったり、「リゴレット」のあれを歌ったり、スタンダードっぽいのもいっぱい歌うので、ストーリーも含めてわかりやすくて、最初のほうのファム・ファタルものっぽい展開から、Hanhuaの転落~汚れっぷりがものすごくなって、その生々しさの方から目が離せなくなる。ストーカーものを越えて、何かが憑りついてエクソシストみたいになっていくようで。
「カルメン」なので悲劇として終わるのだが、最後にみんなでアパートの扉を叩いて救出しようとするところとか、あまりにしょぼくてなにやってるの? の笑いが出てしまったり、全体としては珍品扱いされてしまうやつかも。もうちょっとちゃんと作ればよいメロドラマになったに違いないのに。 でもGrace Changの堂々とした歌いっぷりはずっと聴いていたくなる。「ジャ・ジャン・ボー!」って掛け声をかけるおもしろい曲(2回歌われる)があって、これが服部良一の作曲だったり。
モノクロの擦れたかんじが昔の邦画にもありそうなので同じストーリーと設定でやるとしたら - もう既にあるのかしら? - 誰が演じるのがよいか、とか考えるのも楽しいかも。 越路吹雪 & 森雅之かなあ、とか。
7.02.2024
[film] 野玫瑰之戀 (1960)
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