7.04.2024

[film] Bye Bye Tibériade (2023)

6月29日、土曜日の昼、BFI Southbankで見ました。
France-Belgium-Palestine-Qatar共同制作のドキュメンタリーで、英語題は”Bye Bye Tiberias”。

HBOのTVドラマ“Succession”は見たいなーと思いつついつも時間がどこかに消えてしまうので全然見れていないのだが、そこに出演しているフランス系パレスチナ人俳優のHiam Abbassがフランスで生まれ育った娘Lina Soualemの監督するドキュメンタリーで、自分(Hiam)が生まれて出ていった国、彼女の母、祖母の、戦争で追われて出なければならなかった土地を旅して自分の、家族の過去を再訪していく。

最初に出てくる色褪せたホームビデオの映像には、HiamとLinaの母娘がイスラエルの都市ティベリアにあるティベリアス湖で水浴する姿があって、この時はLinaを母や親戚に見せるために里帰りしたようだったが、Linaにはあまり記憶として残っておらず、Hiamは母娘の話題以外は語りたがらないように見える。湖をバックに向こうがシリア、向こうがレバノン、向こうがヨルダン、とHaimが指し示すと、指し示せる距離の間にあるこの土地がいかに地政的に面倒かつ厄介なところであるかが一目瞭然で示され、過去のニュース映像や写真、母娘が壁に貼りだすLinaの母の祖母、母の母、母、それぞれの女性たちの、それぞれの家族や親戚の写真、結婚式のお祭り、幼いLinaを含む四代の女性たちが写った一枚の写真から、1948年のパレスチナ戦争の前と後で、先祖からの土地を奪われ、ティベリアを追われて転々としながらも懸命に生きた、家族を生かそうとした彼女たちの物語が語られていく。それは本に書かれるような、映画で描かれるような大きな歴史ではなく、例えば家族みなで楽しく暮らしていた家はあそこに建っていたんだよ(もうないけど…) - というふうに。

そして、当たり前だけど、そうして語られる家族の、母や叔母たちのお話しは遠い彼方のパレスチナのお話しではなく、とても近しく親密なものに見えてきて、20代の初めに俳優になるべく国を出て最初にイギリス人と結婚して別れて、フランス人と再婚してLinaを生んだHiamにとっても単に懐かしい以上のもどかしく複雑なものになっていることが見えてくる。自分のあのときのあんなふるまいを祖母は、母はどう見ていたのか、許してくれるのだろうか、取り戻すことはできないものか、会いにくることができなくてごめんね、など…(言葉には出さないけど – “Bye Bye Tibériade”が精一杯の...)。

Hiamの母の妹でシリアにいるので絶対に会えないと思っていた叔母と、通常であれば国交がないので行くことはできないはずなのにHiamのフランスのパスポートがあったので、こいつで会いに行けたときの話がよくて、ふたりで近寄って、叔母が肩を抱いてHiamの体の匂いをくんくん嗅いで、これがうちの家族の匂いだよ!って。そんな家族なのに散り散りにされてしまうなんて、どれだけ辛かったことだろう。

パレスチナ問題 – いまのイスラエルが「浄化」しようとしている人たちは、女性や子供たちを含むこういう人達で、これはこの間から始まったことではなく、1940年代からずっとあって世代を超えてこんなふうに連なっているのだ、って。でも80年以上やったって、これらは絶対瓦礫にできるものではないのだ。ってわからないのか。

と、改めて抵抗に向かう決意を新たにするのだった。


渡英して半年が過ぎてしまった… どうしようなんもしてない

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