7.13.2024

[film] Jam (2023)

7月6日、土曜日の午前11時にCurzonのAldgateで見ました。
英語題は”Sleep”。 週末の11:00開始って結構早い時間帯なのだが、コーヒーがついていた。

監督はこれが長編デビュー作となるBong Joon-hoの弟子らしいJason Yu。ホラーのようだが眠りがテーマらしいのでやかましくなさそうだし、そんな血まみれになることもなさそうだし、くらい。 以下、たぶん少しネタバレしているかも。

昨年スキャンダルで自殺してしまった(のは見た後で知った。痛ましい)Lee Sun-kyunがなんかの賞を貰ったこともある俳優のHyun-suを演じていて、妊娠している妻のSoo-jin (Jung Yu-mi)とポメラニアンのペッパーと暮らしていて、アパートの壁にかかっている板には「どんなことでも2人で一緒に乗りこえよう」みたいな標語が書いてあり、Soo-jinがHyun-suをやや引っ張っているかんじがするものの仲はよさそう。

ある晩寝ていたHyun-suがむっくりと起きあがり「自分の中に何かいる… 」と呟いたあたりから就寝中の彼の挙動がおかしくなり、自分の首をがりがり引っ掻いて血まみれにしていたり、窓の方に歩いていって開けて飛び降りようとしたり、冷蔵庫を開けて生肉生魚を食べていたり、そしてペッパーが …. どう見てもおかしくなってきたので一緒に医者に行ってみると睡眠障害と診断されて薬を貰って寝袋に入って動けないようにしたり、生まれてきた子供に手を出されるのだけはなんとかしないと、とか。

それとは別に最近住む人が変わった真下の部屋に暮らすおばさんと少年が訪ねてきて、おふたりおさかんなのは結構なことざんすがもう少し音量を、とか言われ、そういえば、と彼らの前に下に住んでいたおじいさんもよく文句を言いにきた、というのがわかる。

あと、Soo-jinが実家に暮らす母に相談したらお札とか曼荼羅みたいなシートとかを持ってきて、祈祷師まで連れてきたりするので、これは自分達ふたりで解決することなのだ! ってきれたり。で、きれつつも最後はそこにすがるようになってしまったり。

流れとしては、幸せで健康な夫婦、明るい家庭を目指すふたりのうちのひとりに眠りの闇の向こうから何かがやってきて、それはSoo-jinの強迫観念に近い「よい夫婦」へと向かうエコーがもたらしたなにかだった… という辺りがじりじり湧いて形になっていくのではないか、と思っていた。で、それが浮かびあがったところでSoo-jinは何とどう対峙するのか、それに勝つ、あるいは負けた時、ふたりの身に、或いは赤ん坊に何が起こってしまうのか、など。

その可能性を引き摺って維持しつつ、結局はオーソドックスでトラディショナルな憑きものモノになってしまったのはちょっとつまんなかったかも。自分の中にいた何かは自分や妻が生み出した観念的な何かではなく、本当に外にいた邪悪なやつだった、と。あれならHyun-suが自分だけ別のアパートに引っ越そうか、と言ったときにそうしておけばなんとかなったかもしれない、とか。あの時間が来てしまったとき、いったい家族に何が起こったのか、を見たかったかも。

あと、なんでSoo-jin ではなくHyun-suの眠る頭の中ででこれが起こったのか、ジェンダーの役割観点で考えてみるとなかなか識閾下の厄介なあれこれが見えてくるのかもしれない。眠るHyun-suの頭に巣くっていたのはごりごりの…  Hyun-suのあののっぺらとした声とか。

最小限の出演者で、限られた場所設定で、ここまでいろんな可能性や矢印を示してはらはら、はあまりしないけど考えさせてくれたのは楽しかったかも。それが眠り、という毎日起こっているのに自分ではあまり制御したり、どうしたりすることのできない何かに根ざしている、というあたりも。だからあの当たり前のオチはなー。

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