7月14日、日曜日の昼、Institut Français内のCiné Lumièreで見ました。
英語題は”Green Border”、邦題は『人間の境界』。ポーランド/チェコ/フランス/ベルギー合作映画。 モノクロの4章からなる147分。
監督はポーランドのAgnieszka Holland。ポーランドとベラルーシの国境にある立入禁止区域 – “Green Border”を中心にそのどちら側にも行けなくなった人々 - 所謂難民が、「難民」とされてしまう悲劇を描く。
欧州(ではなくなったけど、でも)に暮らす人間として、きつい内容であることはわかっていたが見ないわけにはいかない。
2021年に国境で実際にあったことだし、今でもおそらく続いている。
冒頭、飛行機に乗ってベラルーシに降りたつ難民たちがいる。シリアのISISから逃れてきた3世代の家族(老いた祖父、夫婦、幼い姉弟に赤ん坊)に兄に会いに行こうとしているアフガニスタンから逃れてきた女性ひとりが加わり、事前に手配してあった車に乗りこむ。子供らは無邪気にここからスウェーデンに行けるのだ、と思っている。
ところが車がポーランド国境付近の森にきて、向こうに警備隊がいるのを見た運転手はここで降りろ、って彼らをおろすと逃げるように消えて、おそるおそるポーランドに入ることはできたものの、すぐに国境のガードに捕らえられてベラルーシの方に送り返される。...というやりとりが罰ゲームのような不条理さで繰り返され、ライフラインだったスマホのバッテリーもお金もなくなり、難民たちは寒さと沼地の湿気と空腹と不衛生で雑巾のようにぼろぼろになっていく - 見ていて本当につらい。
ベラルーシの大統領Lukashenko – 独裁者の卑怯な政治駆引きと、それに乗っかる形で都合よく難民排除をしたいポーランドの思惑の狭間で、ここなら抜けられるかもと思って自国から逃れてきた彼らが動物以下の扱いを受けているのを見て少しだけ動いてくれる国境警備隊の若者とか、国境付近で支援を行う活動家たち - 3章では彼らの苛立ちが描かれる - とか、森でシリアの子の死体を見て、難民の実情を知り震えながら立ちあがるセラピストのJulia (Maja Ostaszewska)とか、よい人たちの行動も描かれるのだが、正義感や使命感なんかより、まずその虚しさと絶望がまず先にきているような。どんなに、どれだけ手を尽くしても救えない人々の数が余りに多すぎるし絶えないし。救うにしたってまずは国境と法が立ちはだかって動きようがないことばかりだし。
タイトルの”Green Border”への皮肉も含め、難民の、彼らの扱いに対する容赦のない、希望なんて欠片もない描かれ方には監督の強い怒りが見える。これがひとつの国ではなく(ひとつの国だってだめけど)、ふたりの国を跨いで互いをカバーする(≒責任とらなくてよい)政策のような形で実行され放置され、それを周辺国 – どこも難民政策には苦慮している - が傍観し、結果容認している、という構図に。直接的に戦争をしているわけではないので殺し合ったりする絵は出てこないものの、難民を人間と思うな、飛んでくる弾丸だと思え、という言葉が出てくる。イスラエルのガザに対する扱いもそうだけど、こういうことを考えて実行に移しても構わない、それで仕方ない、と片付けてしまえる頭の中が恐ろしい – なにも考えていないとしか思えない。
他国のことだから、はこういう場合は言っちゃいけない。あたりまえのこととして。
そして自国のことは、これと同じくらいクソ酷いので、どっちに対してもトサカを立てて文句を言い続けるしかないわ。
ベラルーシでLukashenkoの後に大統領になったSviatlana Tsikhanouskayaを追ったドキュメンタリー”The Accidental President” (2023)が丁度公開されていて、これを見てから、と思ったのだがいろいろあってまだ行けていない。
7.24.2024
[film] Zielona granica (2023)
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