7月10日、水曜日の晩から12日、金曜日の晩からパリに出張があって、仕事は金曜日の午後に終わるので戻りのユーロスターを夜遅めのにしてもらって少しだけ展覧会の方に。
オリンピックに向けた交通規制は既に始まっていて至るところにいろんな柵とか、機関銃を抱えた軍の人達とか、ぜんぜんやるきなさそうな広告に溢れていて、こういう普段と違うモードになっている時のパリであちこち動こうとしてもぜんぶ想定が外れて徒労におわる、というのは数年前の地下鉄ストの時にイヤというほど味わったので今回はオルセーとルーブルだけ。金曜日のルーブルは21:00まで開いている。
まずはオルセー美術館のほう。 150年前、印象派が誕生した当時のパリとその爆心地で展示されていたもの、描かれていた風景などを振り返る展覧会の最終週。個人的に印象派の展覧会というと1994年、Metropolitan Museum of Artでの”Origins of Impressionism”が決定版で、あれに匹敵するくらいの… ではなかったかも。
絵の展示会場の隣で、VRツアーみたいのもやっていたが、こういうので当たり! ってなったことはないのでパスした。絵は実物があるんだからそれを見ればいいじゃん。
印象派誕生のきっかけ・起源とされる1874年4月、アカデミーのサロン選考に落ちたアーティストたちが写真家ナダールのアトリエで開いた展覧会 - 後に「印象派」の画家と呼ばれることになる彼ら(ただの寄せ集め)の最初の展示がどんなだったか、その時のサロンに合格した作品たちと拒絶された作品の両方を持ってきて並べて、当時の展示の様子から絵に描かれたテーマまでを比較概観していく。
最初のほうのパート、サロンに合格した作品たちの展示はきらきらのアクセサリのように壁一面に、並べるというより張り紙のようにびっちり、クラシックで写実的で、個々の作品や作家より、サロンとしての場の風格を際立たせるような並び - 選ばれただけで光栄にござりまする、と。
これに続く後の「印象派」作家たちの展示はやはり相当にてんでばらけて見えて、今では有名なのばかりだし、「印象派」のネーミングの元となったモネの『印象・日の出』 (1872)も特別扱いになっているものの、サロンの壁をぬけてこちらに来てみると、銭湯の絵みたいな、批評家がおちょくりたくなるのもわかる散漫な「印象」しかないような薄味のが。
ここから全てが、というような張りとか強さを感じさせるものなんてカケラもなくて、普仏戦争の負けとか国内で続く内戦とか社会の疲弊がゆっくり沁みていく反対側で、オペラ座ができて都市として大きく変わろうとしていたパリの空気 - オリンピック直前の今とちょっと似てる? - を反映しているかのように凡庸で輪郭のボヤけた風景画の陽光と膨らみ、野外で寛ぐ家族 - 最近流行っているのかBerthe Morisot - など見るところは多い。
これらはやはり今から150年の歴史と時間、その間に積み重ねられたいろんなのを振り返ってようやく見渡すことができるあれよね、というのが確認できるのと、これができるのはオルセーだからだねえ、というのと。展示はこの後にワシントンのナショナル・ギャラリーに巡回するそうな。
この後に5階の印象派の常設展示の方も見て、下の特別展にあれだけ持っていってもまだこんなにあるのかー、とか。
1874 Dessin ! Que dessinait-on en 1874 ?
5階でやっていた関連の小企画で、1874年の素描はどんなだったか、と。Manetのすごく小さい”Portrait de Nina de Callias”がすごくよかったが、それ以外は、風景とかのラフなスケッチとか落書きみたいのばっかしで、やっぱこんなもんだったのかも、と。
あとは、いつものようにボナールの猫たちを見てから出る。
Chefs-d'œuvre de la collection Torlonia - Masterpieces from the Torlonia Collection
ルーブルではこれだけ見ておきたくてー。
ローマ古代彫刻の世界最大級の個人コレクション - トルロニア家(財団)のそれがブルガリのスポンサーのもとでの修復を終えてローマで公開されたのが2020年、それが初めてイタリアの外にでた、と。石の彫刻って日本の昔の木造仏像などを見るのと同じで、詳しくないし見る目もないのでなに見てもわぁー、ばっかりなのだが、とにかくトルロニアの大理石の艶 – 乳白色ぴっかぴかなの - とそれが波や襞となってひとや動物を覆ったり被さったりしているさまが本当に美しくて、いくらでも見ていられる。椅子の下の犬とか、腹を開かれて干物になっている獣たちとか、すごいなーしかない。できればもう一回みたい。
ここで時間使いすぎて帰りの電車が間に合わなくなりそうだったので、常設展示の方は見ないで – ありえない - 外に。 食材店も行く時間なし。オリンピックのばか。
7.22.2024
[art] Paris 1874. Inventing Impressionism
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