10.02.2017

[music] Nick Cave & The Bad Seeds

9月30日の晩、O2アリーナで見ました。
こっちに来て初めてのアリーナのライブ。 チケットは確か3月頃、発売開始の日に取ったのだが、2時間くらい遅れて入ったらもう立ち見のフロアなんて跡形も残っていなくて、それもだいぶ昔のことだったからライブがあるのを忘れてしまうところだった。

O2の最寄の地下鉄の駅のサービス案内のボードには手書きでNick Cave & The Bad Seedsのファンの皆さんへ、って彼らの曲名がうまく散りばめられたメッセージがあって、とっても愛を感じた。 あれをライブのたびにやっていたら大変だろうに。

アリーナの入口にはセキュリティチェックの長い列ができてて、くぐるまでに軽く20分以上かかった。 Vegasもあんなことになってしまって、これから大規模なライブはどんどんチェックが厳しくなって、列は長く伸びていくのだろうなー。 やれやれ。

サポートアクトはなしで20:15開始とあって、バンドが出てきたのは20:30を軽くまわったあたりだった。
ステージの真ん中にスタンディングの最前列のところに渡れる板が渡してあって、その左右にも客と触れあえる餌場みたいのがあるのだが、左右のほうには渡し板がないので、都度ジャンプしてお濠を超えていて、あぶねえよなおい、と本人も言っていた。

こうして2曲目の"Jesus Alone"からしばしば彼はそのお濠を渡って、手を差し伸べてくるひとりひとりに手を差し伸べて秘跡や抱擁を「悪い種」を蒔いて散らしまくっていくのだったが、これがばかでかいアリーナであることを思うと、なんかすごいよな、て改めて思った。

だってものすごくポピュラーなメガヒットがあるわけではなくて(あるのだったらごめん)、一緒に歌えるようなやつは殆どないし、音は甘味の一切ない、がりがりごりごりのブルーズ、ゴスペルみたいな壁とか岩石みたいに無愛想なやつばっかで、いじわるく言うとやばい目つきのいんちき宣教師とか説教師がおらおらってたぶらかしているように見えないこともなくて、でもこの音で、あの声で、一緒に地獄に堕ちよう、とかいわれるのだったらいいの。 MorrisseyとNick Caveには、そういうことされてもいいんだ。

4曲目くらいの"Higgs Boson Blues" 〜 "From Her to Eternity" 〜 "Tupelo" 〜 "Jubilee Street"が最初のピークで、吹いてくる地獄の業火に焼かれてやられて、もうどうでもいい好きにして、になる。 
アリーナの音はすごくよくて、重く、濃く、煮えたぎった音の波が上に下にざーざー押し寄せて脳の奥を引っ掻いてくれるかんじ。 ものすごいどしゃぶりとか暴風雨を浴びて気持ちいい、て思うひとがいるなら、こんなに気持ちよく迫ってくる音はないかも。

でもやっぱり"Into My Arms"はみんな歌うんだねえ。

もういっこのピークは終わり間際の"Red Right Hand" 〜 "The Mercy Seat" 〜 "Distant Sky" 〜 "Skeleton Tree"で、善の神様がもういいかげんにしなさい、って怒髪天になって、地面が割れて地の底が抜けるすさまじい音が鳴って、あらゆる鬼だの魑魅魍魎だのがそこらじゅうに湧きだして、阿鼻叫喚としかいいようがない。 よくもあんなやかましい音を出せるものだねえ、って思った。 特別なノイズマシーンとか使っているわけではなくて、ぜんぶ手動で、それぞれが手元のを叩いたり引っ掻いたりしているだけなのに。 

そこまでやって地表を業火で焼き尽くして、それでも最後のひと掬い手元に残るものがあって、それがNick Caveが伝えようとしているなにかなのだ、て思う。

アンコールでは板を渡ってさらに先の客席に降りていってずうっと一緒に歌って抱擁してを繰り返し、更にステージにみんなをあげて挟まれるかたちで一緒に歌い、ラストの"Push the Sky Away"ですべてを遠くに追いやって空の向こうをほんの少しだけ明るくして終わった。 (Bobby Gillespieがいたらしいが、ふーんいたの、て程度)

とにかく、ようやくライブに触れることができてよかった。


R.I.P. Tom Petty..  7月にライブを見たばかりなのに。
90歳くらいになっても”American Girl”をかしゃかしゃやってくれる絵を思い描いていたのに。
ありがとうございました。おやすみなさい。

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