10.14.2017

[film] My Generation (2017)

8日の日曜日のLFF。 この日1本目に見るはずだった"Wonderstruck”は前に書いたように地下鉄が動かなくなって大慌てで駆けこんだ先のOvergroundの電車が目的の駅に止まってくれなかったので諦めた。
ぜんぜん聞いたことも見たこともない駅に来てしまい、しかも3時間くらい空きができてしまったので、Rough Tradeに行ってレコード漁ろうかとバスに乗ったら途中にGeffrye Museumがあったので降りて寄ってみた。 英国のふつうの暮らし - 家、部屋、建付けとかも含めて展示しているところで、前から行ってみたかったの。庭園もとても素敵なかんじだったし。
展示内容をみてわかったのだが、今自分の借りているところは昔の住居でいうと屋根裏部屋に位置づけられるらしい。
なるほどなー。 ← そんなのわかっとけ。

Rough TradeではThe Wedding Presentの本- “SOMETIMES THESE WORDS JUST DON’T HAVE TO BE SAID"が置いてあったので買った。 すごくよい本だよ。

映画は、3時過ぎにCurzonのChelseaで見ました。
ここはKings Road沿いの映画館(シネコンではない)で、Kings Roadはブティックとかカフェとかガーデニングの店とかいっぱいあって、平日は見るからにお金持ちなマダムが犬ころを散歩させたりしてて、古くからの貴族とかもうじゃうじゃ暮らしている界隈で、そういう老人たちにとってのアイコンであるところのMicheal Caineが出てくるドキュメンタリーで、本人も来るというので、ぱんぱんの場内は着飾った老人たちの枯れた香水の湯気でむんむんで、みーんなシャンパンのグラスとか傾けてやがるの。映画館で。

Michael Caineのドキュメンタリーではなくて、60年代のLondonがなぜ特別なのか、特別だったのかをMichael Caine自身の語りとインタビューの抜粋、当時のフッテージの切り貼りといろんな関係者の語りで浮かびあがらせる。出てくるのはDavid Bailey, Joan Collins, Roger Daltrey, Marianne Faithfull, Lulu, Paul McCartney, Terry O'Neill, David Puttnam, Mary Quant, Vidal Sassoon, Sandie Shaw, Penelope Tree, Twiggyなどなど。

冒頭に流れるのがThe Kinksの"Dead End Street"で、それがそのまま"Waterloo Sunset"に変わり、これだけで泣きそうになるのだが、60年代のロンドンの街中を、当時のばりばりのMicheal Caineが歩いたり車に乗ったりの映像 - "Alfee"とか"Gambit"とか - と、それと同じ動作を反復する現在のMichael Caineの姿が交互に切り替わって、それを見ている老人たちの溜息、吐息が渦を巻いてすごい。

50年代の停滞を経て、60年代のLondonはWorking Classの若者にも等しく機会を与える、そういう方向に大きく転換したのだ、というのがポイントで、そうやって開かれた扉を通して音楽でもファッションでもすごい才能がいっぱい現れて、それは国内に留まらずBritish Invasionという形で世界に知れ渡って、続いてやってきたドラッグカルチャーの到来と共に一挙に萎んだ、というわかりやすいお話し。

これまで余りきちんと考える機会も材料もなく、なんとなくぎんぎんしていてすごいと(みんなが言うから)思っていた60年代のSwinging Londonのありように初めてきちんと、その時代の典型的な像 - 彼自身がWorking Classから出てスターになった - Michael Caineをガイドに迎えて知ることができた気がした。
(ちなみに彼は最初Michael Whiteていう名前で活動していて、スタジオに電話してその日の出番があるか聞いていたら丁度いい役があるけど同じMichael Whiteがいるから名前変えろって言われて、たまたまその電話ボックスの外の映画館でかかっていた"The Caine Mutiny"の看板を見て"Caine"にしたんだって。別の映画がかかっていたら別の名前だったかも、って)

ただもちろん、彼のあの容姿や振る舞いでもって当時のGenerationを表象させてしまうことがどこまで正しいことなのか、という当たり前の問いは残る。それって日本の50-60年代の青春を石原兄弟とか日活映画のイメージで語ってしまうことの危うさと果たして同じなのか違うのか、そこはわかんないかー。 でもそれにしたってほんとにみんなかっこいい(よく見えてしまう)のはなんで? ていうのはあるよね。

映画が終わってやんやの大喝采の中、Q&AでMichael Caine氏が登場する。(Madnessの"Michael Caine"と共に、はただの夢でした)
もうさー、足を組んで座っただけで映画のMichael Caineとおなじなのよ。

いろんな質問が出て割とさばさば答えていたが、俳優を志しているという若者がひとつアドバイスをください、というのに「どんなアクセントでも喋れるようになりなさい」と即座に返したのにはおぉー、てみんな唸っていた。 あと「対面で演技をするとき、片方の目で相手をじっと見て、もう片方の目でカメラを見る、これをできるようになりなさい」って。

あと、Londonの町が変わったと感じたのはどんなときでした? に「イタリア料理店ができたこと」ていう答えとか。

あと、ドラッグがなんでだめだったか - はいうまでもないか。

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