10.10.2017

[film] The Meyerowitz Stories (New and Selected) (2017)

7日の土曜日の昼間、LFFの(自分にとって)2日目、Embankment Garden Cinemaていうとこで見ました。
こんなとこに映画館あったのかしら? と思ったら駅の横の公園に特設テントみたいのができてて、そこが映画館になっているのだった。 スクリーンのでっかさも音も申し分なかった。

今回のLFFで一番見たくて、真っ先に取ったのがこれ(ほんとは、"Lady Bird"に来てほしかったのだが..)で、見れたのであとは割とどうでもよく.. はないかやっぱり。
いまはWes Andersonの新作よりもRichard Linklater の新作よりもPTAの新作よりも、Noah Baumbachの新作が見たかったの。

ものすごく、身体が震えるほどおもしろかった、画面が切り替わる(たまに途中でぶち切れたり)ごとに、暗転するごとに、ああ、ってページをめくりたくなって、でも読み進めるのも勿体なくて、という読書の壺にはまったときの感覚がやってくる。 映画を見ていてこういうのはなかなか来ない。

全体でチャプターが4つくらいあって、最初が"Danny"、次のが"Matthew"。 ちょうど「フラニー」と「ゾーイ」みたいに。

冒頭、Danny Meyerowitz (Adam Sandler)が娘のEliza (Grace Van Patten)とダウンタウンの路上で駐車スペースを探していて、この探しかたで彼の性格がだいたいわかって(ま、通常のAdam Sandler)、彼は彫刻家の父Harold Meyerowitz (Dustin Hoffman)のアトリエ兼アパートを訪ねて、そこには義母のMaureen (Emma Thompson)と妹のJean (Elizabeth Marvel)がいる。 Maureenの料理はひどいみたいだけど誰も文句いわない。
Dannyは定職を持たずにだらだら暮らしているようだが、かつては音楽を志したこともあったらしい、というのがElizaとのピアノのデュオでわかったり、父の友人 - L.J. Shapiro(Judd Hirsch)の個展がMOMAであるというのでDannyは父にくっついていくが、父はそれなりに名前は知られているもののもはやシーンの端っこにいることがわかったり。

Dannyの弟で、でも母親が違うMatthew (Ben Stiller)は西海岸で不動産を切った貼ったでいつも電話ばっかりで慌ただしくて、でも成功しているらしいことは身なりとか話しかたでわかって、なにもかもDannyとは違ってぱりっとしている。 父がまず気に掛けて無意識に口にするのはMatthewのほうで、その辺もDannyには気に食わないから、ふたりは犬も食わないような小競り合いばかりしている。

他にもいつも忘れられるJeanのこと、元妻のJulia (Candice Bergen)のこと、自主製作で変てこジャンクポルノみたいなのを作っているElizaのこと、L.J.の娘のLoretta (Rebecca Miller - "Maggie's Plan"の監督だよ)のこと、みんないちいち紹介していったらきりがない(でもおもしろくてさ)のだが、そんな一族がHaroldが脳内出血で倒れて昏睡状態になると更にがたがたの最悪になっていって、さてどうなるのかしら? と。

こないだの"The Big Sick"だとコーマになった彼女のまわりで一途な恋が小爆発するが、こっちの方は家族の中心にあったHaroldの不在が更なる混乱とか不和をまき散らして、やがて驚くべきことに(驚かなくてもいいけど)、なんとなく風邪が治るみたいによくなったりもする。 それが家族なのだとは間違っても言えるようなもんじゃないのだが、家族ってずっと誰かが風邪をひいているような、そういう集団のことさ、くらいの言いっぷり。 このかんじは例えば"The Squid and the Whale" (2005)の家族像にも確かにあった。

ここのとこ、"Greenberg" (2010)  - "Frances Ha" (2012) - "While We're Young" (2014) - "Mistress America" (2015) と、何があったんだか知らないがちょっと脇道にいってしまった変なヒトたちを描いてきたNoah Baumbachがもう一回家族を描いて、そこではこれらの変なヒトたちのいろんな断片がぐるぐる弧を描いて踊っているので、なんかすごい。 でも、それでも正論を吐くような奴はこれっぽっちも出てこない、という線は守られていて、誰もがみんなとても愛おしい。

とにかく、Dustin Hoffmanを真ん中に、その子供、腹違いの兄弟にAdam SandlerとBen Stillerを置く、それだけでもう、ありがとうしか出てこないよ。 このふたりのそれぞれの映画でかっこよくないじたばたの取っ組みあいを何十回も見てきた気がするが、ここの兄弟の取っ組みあいなんて、あまりにそれがそのまま出ているので感動して言葉を失う。

これは"(New and Selected)"なので"(Old and Selected)"でも"(New and Revised)"でもなんでもいいから続いていってほしい。
とりあえず次は、Haroldの3人の元妻たち、とか。それかElizaの冒険とか。

音楽は、ついにRandy Newman先生ですよ。 エンドロールの歌声に感動した。
でもそれ以上にちらっと聴こえてくるPrefab Sproutの"Wild Horses"に泣きそうになったわ。

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