10.03.2017

[theatre] After the Rehearsal / Persona

9月の最後の週はばたばたで身動きがとれなくて疲れきってしにそうで、29日、金曜日の夕方にようやく解放されたのでBarbicanで見てきました。
ぐったりの脳に2時間50分のお芝居がなんかの癒しになるとも思えなかったけど、少なくとも、ちっとも眠くはならなかった。
チケットは£40。安いよね。

Barbicanでの公演は4日間のみ、演出はIvo van Hove、劇じるのはToneelgroep Amsterdam。
Ingmar Bergmanの2本の映画 - "After the Rehearsal" (1984) と"Persona" (1966)を休憩を挟んでの2本立て。 前者の俳優は3人、後者は4人で、メインの3人はどっちにも登場する。 映画は大昔に"Persona"は見たけど、"After the Reheasal"は見ていない。
Ivo van Hoveがこの2本をくっつけて上演する -  そこに何かないわけがないわ。

After the Rehearsal
常に完璧を目指す鬼演出家のHendrik Vogler (Gijs Scholten van Aschat)が壁に囲まれたリハーサルルームにいて、次回の上演作 - ストリンドベリの"A Dream Play"に向けて準備を重ねているのだが、リハーサルの後で主演のAnna (Gaite Jansen)が忘れ物を取りに戻ってきて、そこであれこれ言い争いが始まって、若くて美しい撥ねっかえりのAnnaとなんでも自分のコントロール下に置かないと気がすまない完璧屋さんのHendrikの緊張が高まったところで、彼のかつてのMuseで恋人で、でも今は疲れてぼろぼろになってしまったRachel (Marieke Heebink) - Annaの母が現れて今のあたしはこんなだけど、て話を始めて、更に火種を拡げていく。

舞台の本番のその時間、そこに向けたリハーサル、その後の時間、これらの時間はひとつで複数で、でも繋がっていて、それらを生きる人も同じ時の経過のなかを生きていて、そこには演劇の終わりに約束されるような統合とかフィナーレとか、そんなのない。
我々は延々と「リハーサルの後」 を生きていかざるを得ない。 その面倒くささ、複雑さと、それでも女性はなんて魅力的なんだろうねえ、と(←男性の視点。 舞台演出家ってなんであんなに男性が多いのかしらん)。

最後にDavid Bowieの"Lady Grinning Soul"が流れる。いいねえ。

Persona
舞台の上で突然声が出なくなり体も硬直して動けなくなって入院しているElisabeth Vogler (Marieke Heebink)に医者は看護婦のAlma (Gaite Jansen)を専任のケア要員にアサインして、ふたりは少し病室で過ごしてから、今度は医者が海辺にもつ別荘で療養することになる - 病室の四方の壁が倒れて海辺の光景が広がる(ここ、気持ちよい)。  ラジオの音楽を聴いたり、突然の嵐をもろにかぶったり、ふたりだけで親密な時間を過ごして、Almaは恋愛のこととか過去の過ちとかとりとめなく一方的に喋りまくって、Elisabethはだんだんそれに反応するようになる。 Almaの記憶が共有されていってあたかもふたりの共有された記憶のようになっていく。 ところで、わたしはなぜあなたではないのか?  それを隔てているものはいったいなんなのか?
そして最後にどこかから物理的な、ナマの男 (Gijs Scholten van Aschat)が現れたとき、ふたり(の間)にはなにが起こるのか?

ベルイマンの心理劇がそうであるように、どちらの劇も数十通りの切り口での解釈が可能だし、Ivo van Hoveがこのふたつを組み合せたことについても、そこは同様なのだが、人を縛って身動きできないようにしてしまうもの(例. 演劇)と、同様に頭の奥に潜伏していて突然に人を苦しめたり追い詰めたりする記憶(ここでは過去の堕胎とか)というものの相克、というのはあって、更にいうと、演劇、というのはそんなリアルライフに対する拘束であると同時に仮面による解放としても機能しうる、で、それらがどんなふうに効いたり効かなかったりするのかは、そのひとのジェンダーとか職業とか立場とかその組み合わせによっていろいろで複雑で。

でもそしたらなんでもいいことになっちゃうじゃん! というあたりを、Ivo van Hoveの劇はいつもスマートにかっこよく回避したり整理したりして見せてくれるので、とっても気持ちよいの。 で、あまりに気持ちよすぎるので、そんなのぜんぶうそ、どろどろのげろげろだろ、ていうのもわかるから —

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