3日の晩に、BloomsburyのCurzonで見ました。 英語題は、”On Body and Soul”。
なんとなく気になっていて、終わっちゃいそうだったので慌てて。
今年のベルリンの金熊を受賞しているハンガリー映画。 監督は女性のIldikó Enyediさん。
イメージ写真が森のなかの鹿なので鹿の話かと思ってたらちがった... けどすばらしくよくてびっくり。
オープニングはやはり2頭の鹿で、牡鹿と牝鹿で雪に覆われた深い森のなかで互いに顔を近づけあったりしている。 以降、森のなかの鹿たちは何度も出てくる。
屠殺食肉工場で財務部長をやっている初老のEndre (Géza Morcsányi )がいて、片手がマヒしていて、でも穏やかなひとなのでみんなに慕われていて、ある日、彼の職場に新たに品質検査官のMária (Alexandra Borbély)が派遣されてくる。
服装は地味で表情は氷のようで、何を聞かれても機械のようにしか答えないので職場での評判は散々で、家に帰ってもその日のやりとりをすらすら反復して遊んだりしている。(後で、彼女は起こったことをその時間も含めてなにからなにまで全部記憶できてしまう特殊な能力の人だということがわかる)
職場で起こったちょっとした事件のために警察が来て、その犯人を捜すために女性の心理学者が来て社員ひとりひとり個別に面談をすることになって、事件とぜんぜん関係のなさそうな質問をしてくるのでイラつくのだが、昨晩見た夢は? の質問にEndreが答えた夢の内容とMáriaが答えたそれが同じだったのでなにこれ? になる。 それは変な形の池がある森の中でEndreは牡鹿になってて、もう一匹は牝鹿で、Máriaは牝鹿になっていて、もう一匹は角が立派な牡鹿で、二匹は鼻を寄せあったり近づいたりはしているもののつがいではないらしい、と。
それまでは職場で冷たい通り一遍のやりとりしかしていなかったEndreとMáriaはそれを知らされて(知らせちゃっていいの?)驚き、動揺するのだが、もともと静かな人たちなので落ち着いて、しばらくの間、前の夜に見た夢の内容とか光景とか寝ていた時間とかを互いに確認したりするようになって、そうするとどう考えてもふたりは夜の間、同じ夢の世界にいるらしいこと - ただし鹿になって - がわかる。
これをどう受けとめるべきか、それまで恋をしたことがなかったらしいMáriaは少し慌ててセラピストに相談したりしてみて、これが恋というものであればそれをしてみてもよいのではないかということになり、携帯を買ってみたり、人の肌に触れることができるようになるために仕事場にいる牛に触ってみたりマッシュポテトに指を埋めてみたり、ポルノを見てみたり、CD屋にいってデスメタルからなにから恋の音楽をいちにち延々試聴して、決めきれなくて店員のひとに決めて貰ったり - 店員が勧めてくるのがLaura Marlingの"What He Wrote”なの - あれこれやってみるのだがそう簡単には転がってくれなくて、この二頭の鹿はどうなってしまうのか。
始めのほうはリアルな屠殺のシーン(やっぱり苦手)もいっぱい出てくるし、荒っぽい若者が入社してきて粗暴な振る舞いをしたりしているので、殺戮とか猟奇なほうにいっちゃうのか、いつそっちのほうにくるりと反転するのかはらはら気が気じゃないのだが、地獄みたいなところにはいかないので安心して。 むしろどんどん透明になっていって、途中でよじれて天を仰いでしまったりもするのだが、見たあとのかんじはすごくよくて、うわああー、ってなるから。
そして、”On Body and Soul”ていうタイトルもわかるの。
ああ、鹿になりてえ。
10.07.2017
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