14日の土曜日の昼、SOHOのCurzonで見ました。LFFに出たClaire Denisの最新作で、英語題は”Let the Sunshine In”。
これがロラン・バルトの『恋愛のディスクール』のadaptationだというのは見てだいぶ経ってから知った。ふええー。35年くらい昔に読んだけどいろんな意味でちんぷんかんぷんだったことを思いだす。憶えているのはそれくらい。
でも映画はおもしろかったよう。
Isabelle (Juliette Binoche)は美術家で、かつては結婚していて娘もいるのだが今はひとりで暮していて、冒頭からデブの銀行家のおやじとねっちり絡みあってて、でも考え方も含めてすれ違いが多いので彼は未練たらたら寄ってくるのだがきっぱり捨てて、人気の中年舞台俳優ともそういう仲になるのだがうまくいかなくて別れて、どっかの田舎のバーですれ違ってダンスした男とも彼こそは、というかんじになるのだがやっぱり難しくて、とにかくどの男も口喧嘩をした挙句にいいかげんにしろよおめえは、というかんじの捨て台詞残して背中を向けて去っていく。 今どきのドラマの紹介文ふうに書くと、永遠の愛を求めて彷徨い続けるめんどくさい中年女性、ということになってしまうのだろうが、そこに騙しみたいのがあって、ここに漂う「めんどくささ」を解して分解していくと、結局のところ恋愛のディスクールなんてどれもそんなもので、永遠に成就することなく表面を滑っていくばかりなのだから永遠に転がしながら彷徨っていればいいのだ、みたいなふうになる。恋愛なんてそもそも、とにかく厄介なもんなんだから近寄らないにこしたことはない、とか。でも恋愛、したいんだよね? とか。
最後に誰あんた? というかんじで突然でてくるGérard Depardieuのうさんくさい占い師のディスクール – Isabelleを生き返らせて瞳に星を灯してしまう - がまさにそのありようを正しく指し示していて、でもこれの前のシーンでは、それと同じ類のディスクールが別の女性 (Valeria Bruni Tedeschi)をおいおい泣かせてしまっていたりする。この絶妙のだめだめでしょうもないかんじがたまんない。 金井美恵子をとっても読みたくなる。
映画のかんじとしてはロメールの恋愛劇をより散文調にぶった切って、でもねちっこく臭気たっぷりにしたかんじで、教訓とか格言とか練りこんでもよさそうだけど、そっちには踏み込まないでこれはディスクールなのだと。このへんのクールな語りっぷりがClaire Denisなんだねえ。
これがIsabelle Huppertさんの“Elle“とかになると、ディスクール? うっせえんだよ、て言って、だっきん。
10.20.2017
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