12月10日、水曜日の晩、Almeida Theatreで見ました。
クリスマスなので、クリスマスっぽい演劇を見たいな、と思って。でもOld Vicの”A Christmas Carol”はチケットがバカ高いので、ほぼ諦めてしまった。最近あれこれ高すぎ。
原作はSam Grabiner、演出はJames Macdonald、休憩なしの約1時間50分。
舞台は北ロンドンにあるフラットの1室 – 元オフィスだか倉庫だったかのような、だだっ広いが中央に大きなテーブルと椅子があるだけでものすごく殺風景な、物置きの中みたいなリビング、天井を金属のぶっといパイプが通って上に括りつけられた大きなヒーター?ストーブ?に繋がっていて、時折でっかいエンジンのような音をたてて突然動きだしたりする。あと、下を地下鉄のNorthern Lineが通っているらしく、時折フラット全体ががたがた振動する。
そのリビングの隅にものすごく安っぽく適当そうなクリスマスツリーがあって、でも一応電飾は点いてて、冒頭、その部屋に着いたばかりらしい父のElliot (Nigel Lindsay)がそれをなんだこれ? という冷めた目で眺めている。彼を迎えた息子でその部屋の住人Noah (Samuel Blenkin)も彼の妹のTamara (Bel Powley)もユダヤ人なので、時期はクリスマスだけど、クリスマスだからと、クリスマスを祝うつもりで集まっているわけではなさそう。(だからタイトルも)
そこにノンユダヤのMaud (Callie Cooke)やTamaraの元恋人でイスラエルから戻ってきたばかりのAaron (Jacob Fortune-Lloyd)などが加わって賑やかになって、クリスマスディナー... ではない中華のテイクアウト(意地でもクリスマスなんて祝わない)でテーブルを囲んで、あと時折フラットの住人で、明らかに挙動のおかしい隣人(Jamie Ankrah)が突然血まみれになって現れたり、前半はほぼシットコムのノリで、クリスマスという変な、彼らにとってはどうでもいいイベントに伴う家族の集いをどたばたと描いていって、突然ストーブが鳴りだしたり電気が落ちたりするタイミングも含めてアンサンブル・コメディとしてなかなかおもしろい。この辺で淡々と展開されるユダヤ人家族の像、というのはこれまでいろんな映画で描かれてきたそれに近くて、これらは単に自虐ネタのように「変」に落ちるというより、この違いはどこからくるだろうのか、を考えさせるような。
でも後半になって、ガザの件で心を痛めているTamaraがこれについて「ジェノサイド」と言ってしまった途端、Eliotはぶち切れて、折角のディナーがすべてぐじゃぐじゃになっていく。 基本はお前に(ジェノサイドの、自分たちの苦難の)なにがわかる? というどこかで聞いた話、TVの討論やインタビューでもよく見る風景だし、そうなっちゃうんだろうな、というのも良い悪いは別として納得がいく。
家族の団欒の場で、触れてはいけない話題に触れてしまった後、それぞれはどう振る舞うのか、興奮して暑くなったElliotは上着を脱いで隅でぐうぐうザコ寝してしまい、そこから起きたらなんとなく… これってユダヤ人家族でなくてもそうなりそうなことはわかって、そういう赦しやなんとなく収まってしまう場の雰囲気に希望を見るのか、こんなふうだからいつまでたっても... ってどんより暗くなるのか、そのどちらも許容するかのようにChristmas Dayの夜は過ぎていくのでした、と。
最後のほうで、例の変な隣人が「道に落ちていたから」って袋に入ったキツネの死骸を運んできて、どうするんだよ? になり、Noahが調べたらネズミはそのまま棄てていいけどキツネは当局に報告しなきゃいけないんだって、とか、そういうネタも含めて、ちょっととっ散らかって纏まりのつかない印象もあるのだが、いろんな神様が降りてきたその仕業なのだ、って思うことにしよう、でよいのか。
個人的にはガザのことは本当に辛くて、ほかにもいろいろあったのでこのクリスマスはなんもやるきにならず、しょんぼりとお祈りして終わると思う。 みんなよいクリスマスをね。
12.19.2025
[theatre] Christmas Day
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