BFI Southbankの12月の特集、”Muse of Fire: Richard Burton”がどれもおもしろくて、いろいろ見ているのだが、いちいちきちんと書いている時間がない。備忘のために感想をメモ程度で。
The Comedians (1967)
12月7日、日曜日の午後に見ました。邦題は『危険な旅路』。
原作はGraham Greeneの同名小説(1966)、映画化を前提に書かれて、脚本も彼。
監督はPeter Glenvilleで、彼の最後の監督作品となった。撮影はHenri Decaë、キャストも含めてもろ英国、ヨーロッパぽいのだが、アメリカ映画。 35mmフィルムでの上映。
ハイチでNYから戻ってきたホテル経営者のMr. Brown(Richard Burton)と武器商人のMr.Jones (Alec Guinness)とMr & Mrs Smith (Paul Ford, Lillian Gish) の名前も含めて極めて典型的な白人のお金持ちが、野蛮でなにされるかわからないハイチの政権中枢の人たちと関わって脅迫、監禁、暴行など大変な目にあって逃げ回っていくお話し。
あとはMr. Brownとハイチ駐在の南米大使の妻Martha(Elizabeth Taylor)の不倫関係とその夫の大使(Peter Ustinov)とか。 とにかく当時のスターがたっぷり出て来て、でも彼らはハイチ側からするとただの金づるのコメディアン程度にしか認知されていない、ってひどい。っていうのと、状況としてものすごく悲惨で危機的なのにコメディアンのような振る舞いをすること(or Die)くらいしかできない、とか。
当時の政治情勢からすればそれなりに意味のあるメッセージが込められていたのではないか。
Alec Guinnessはこの後タトゥイーンに逃げて、ここで殺されたJames Earl Jonesは(いつものように)蘇って、10年後にあの映画で再会して対決することになるのだな、と。
Boom! (1968)
12月8日、月曜日の晩に見ました。
iMDBでの表記は”Boom”なのだが、”!”を付けるのが英国では欠かせないらしい。邦題は『夕なぎ』 ← やるきなし。
原作はTennessee Williamsの”The Milk Train Doesn't Stop Here Anymore” (1963)で、原作者は自分の映画化作品のなかでは一番よい、と言っていたらしい(本当か?)。監督はJoseph Losey、音楽はJohn Barry。 35mmフィルムでの上映。
John Waters先生が熱狂的に愛する1本なのだそう。なるほど。
イタリアの孤島の一軒しかない大邸宅に暮らすFlora(Elizabeth Taylor)のところにChristopher (Richard Burton)という謎の男が現れていきなり犬に襲われてぼろぼろになり、彼は彼女を知っているようだが、彼女は知らなくて、そんなふたりが会話を重ねていって、なぞの男The Witch of Capri (Noël Coward – 本物)が絡んできたりするが、基本は不治の病で身勝手に暴れまくる富豪のFloraと彼女を迎えにきた死神であるらしいChristopherのやり取りが殆どで、タイトルの”Boom!”は波が岩にぶつかった時にたてる音をChristopherが何度か言うときに出てくる。
当時人気に陰りが出始めていたElizabeth Taylorの復活を狙った一発だったが、興行的には大失敗に終わるという伝説をつくった1本で、でも展開もキャラクター造型も、相当散文調のめちゃくちゃなのに、なんだかおもしろく見れてしまったのはさすがJoseph Losey、というべきか、このふたりの輪郭の強さがもたらす何かなのか。
The Night of the Iguana (1964)
12月5日、金曜日の晩に見ました。
原作は、これもTennessee Williamsによる同名戯曲(1961)で、監督はJohn Huston。
教会の牧師(Richard Burton)は説教中に錯乱して教会を追いだされて、テキサスの旅行会社でバスのツアーガイドをしていて、メキシコへのツアーで彼に言い寄ってくる少女Charlotte (Sue Lyon)の親から目をつけられて、母娘ともにあまりにうっとおしいので、旧知のワイルドなMaxine(Ava Gardner)が経営する海沿いの丘の上の安ホテルに全員を滞在させたり、そこにやってきた自称画家のHannah (Deborah Kerr)と車椅子の彼女の父親(Cyril Delevanti) - 彼は詩人だという - と出会ったり。
ぜんぜん身寄りでもなく互いに関係もない4人+その他大勢が中米の孤島のようなところでなんとなく縛りつけられて自由不自由があまりわからないまま捕らえられたイグアナのように暮らした数日間を描いて、京マチ子のようなAva Gardnerと(父をケアする)原節子のようなDeborah Kerrが生きているかんじがしてよかった。
A Subject of Scandal and Concern (1960)
12月7日、日曜日の午後に見ました。
今回の特集のなかでも珍品扱いされていた1本で、John OsborneがTV放映用に書いた60分のドラマ。監督はTony Richardson。BFI Archiveに保存されている35mmフィルムでの上映。
BBCのSunday-Night Playという60分のドラマ番組枠で、当時16mmフィルムで撮影されたドラマがなんで35mmフィルムとしてアーカイブに保存されているのか、その事情などはっきりとはわかっていないらしいのだが、90年代のどこかで大量にフィルムプリントとして焼かれた形跡があるそう。(えらいなー、それにひきかえNHK…)
1842年、実際にあった冒涜罪(blasphemy)をめぐる裁判で、社会改革家の教師George Holyoake (Richard Burton)は、教会は国から年間2000万ポンド貰っているのだから牧師の給料は半分でよい、と発言して捕まって裁判にかけられる。その裁判の様子を追ったもので、ここでのRichard Burtonにいつもの威勢のよさはなく、おとなしく、ちょっとやつれた丸メガネでおどおどと自分の主張を述べていて、でも固い信念で決して曲げないし譲らない。
“Look Back in Anger” (1959)を作った翌年に同じ脚本家、同じ監督でこれを撮っているのってなんかすごい。ただ、どちらも根底には社会のありように対するはっきりと表には出てこない、表しきれない怒り、があるような。
12.17.2025
[film] The Comedians (1967)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。