12.12.2025

[log] Prospect Cottage - Dec. 6th 2025

12月6日、土曜日、Kent州、Dungenessにある – “Dungeness”というとまずはアメリカの蟹なのだが、蟹のいるアメリカのワシントン州のDungenessは、ここのDungenessから取った、ということを知った – Prospect Cottageに行きました。英国に来てからずっと行かねばリストに入っていた地点。Vanessa BellのCharleston、Virginia WoolfのMonk’s House、HaworthのBrontë home、などに続くシリーズ。

映画監督Derek Jarmanが父の死後1987年に購入して、1994年に亡くなるまで暮らして、彼の死後はパートナーのKeith Collinsが暮らして維持して、彼が2018年に亡くなった後は、売りに出されたり維持のための寄付活動があったりしたのだが、いまは落ち着いて一般公開されるようになっている。

のだが、夏だとチケットがすぐ売り切れていたりでなかなか行く機会がなくて、どうせ行くなら一番暗くてきつい時期にしてやれ、って決めて、ついに、ようやく。

ロンドンのSt Pancras Internationalから電車で40分、そこからバスで約1時間、そこから歩いて15分、というアクセスの面倒くささも遠ざけていた要因か。やはりふつうは車で行くらしい。

天気予報ではずっと雨95%くらいだったので、ずぶ濡れ上等バケツでもタライでも、だったのだが、雨はこなかった。かわりに風がとんでもなく強くて、久々に飛ばされそうになった。

バス停を降りると廃線になった線路が海まで伸びていて、それ以外は地の果てまで砂利の荒野 – としか言いようがない – がずっと広がっていて、廃れた漁師小屋のようなの、棄てられた木の船がぽつぽつあって所々で鳥が群れて(たぶんなにかの死骸をつついて)いる。このランドスケープだけである種の映画が好きなひとはやられてしまうに違いなくて、Derek Jarmanもそうだったのだと思う。

Prospect Cottageもそういうなかの一軒で、窓枠が黄色い以外は真っ黒で特に大きくもなく、柵とか門に向かう小道とかもなく、砂利と砂漠の植物みたいのとオブジェがぽつぽつと置いてあるのか並べられているのか。南側の壁にはジョン・ダンの詩が彫って.. じゃない浮かびあがっている。

時間 - 確か30分間隔くらいでスロットが切られていた - になると中から案内係の青年が出てきて小屋内ツアーの説明 - だいたい40分、中の撮影は禁止、聞きたいことはなんでもその場で聞いて、など - をする。自分の他には3人の家族らしき人達 + 赤ん坊で、この子は見事なリズムでずーっとえへえへ唸っていた。

部屋は決して広くない客間、書斎、書棚のある部屋、寝室、キッチン、後から足された部屋など、どの部屋にも彼の描いた/作ったアートが並んでいて、ぶっとい木の重そうな木と合わせると、あまりアーティストのお部屋には見えない、木樵のような無骨なやりかけのかんじ、そこがなんだか彼らしい。

冬は厳しそうだけど、キッチンの窓はとても広くて光が入っていて、これなら・ここなら暮らせる、暮らしたいな、になった。

ガイドの人からは、彼の晩年のキリスト教の宗教画への傾倒のなかで、John Boswellの名前が出てきて、へー、ってなったり。

あっという間に終わって、でも平原の向こうにあるはずの海を見ないで帰るわけにはいかず、風に逆らって20分くらい歩いて、クールベの絵のそれみたいにぼうぼうと愛想のない海と砂しかない浜辺を眺めて帰った。

戻りのバスは30分遅れて乗る予定だった電車にも乗れず、いろいろその日の予定が。

パリではDerek Jarman特集をやっているのかー… 随分と見ていないかも。


Turner & Constable Rivals & Originals

↑ので荒野を歩いて風と光に晒されていたら数日前に見たこれを思い出したので。
11月30日、日曜日の午前にTate Britainで見ました。まだ始まったばかりの企画展。

1775年生まれのJ.M.W. Turnerと1776年生まれのJohn Constable、どちらもRoyal Academy of Artで学んで英国の風景画の世界を刷新した彼らの生誕250年を記念した展覧会。たいへんおもしろい。

風景画なのだが、このふたりのそれは英国の光(と暗さ)、雲、海、雨、湿気、これらが刻々ぱらぱらと変化していく様も込みであわさったそれで、写真のように切り取られた断面、というより絶えまない変化のなかにある光と水に晒され覆われた景色をどうにか平面に転写しようとして、実際に画面は焼けたり湿ったりで、いつも触ってみたくなって、こういうことが起こりうるのは英国だから、としか言いようがないかも。

場内ではふたりが競演した”Mr. Turner” (2014)の一部が上映され、そこで展示されていたWaterlooの絵の現物もあったり。

結構な数が出ていたので、Tate BritainのTurner常設コーナーはがらがらではないか、と思って行ってみたら、そこに並べられたConstableまで含めて、いつもと全く変わっていないのだった。

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