12.07.2025

[film] Pillion (2025)

11月29日、土曜日の晩、BFI Southbankで見ました。
原作はAdam Mars-Jonesの小説”Box Hill”、監督はこれが長編デビューとなる英国のHarry Lighton。

封切を記念してなのか、この上映の前になにやらイベントがあったようで、革ジャンでじゃらじゃら金物を身に付けたライダーのおじさん(若い子いなかった気が..)達が歓声をあげて映画の看板の前で記念撮影などをしていて、いつものBFIとはぜんぜん違う雰囲気だった。

入り口にはStrictly18禁、とあって、米国公開版では更にカットされるようなのだが何が/どこがそんなに? くらい。

白のライダージャケットでぎんぎんにキメたAlexander SkarsgårdとハリポタでDudley Dursleyを演じたHarry Mellingの共演なので、”The Bikeriders”(2023)よりもダークでサイコでヴァイオントなホラーになってもおかしくないのに、クリスマスの(クリスマス映画だよ)ちょっと切ない青春rom-comだった。真ん中のふたりがとにかくものすごくよい。

“pillion”って、ぜんぜん知らなかったのだが、バイクの後ろの席に乗る人のことを指すのだそう。なんだかかわいいかんじだが、この映画の彼はもろそんなかんじ。

Colin (Harry Melling)は違反駐車切符を切る仕事をしながらパブの寄せ集めバンドで合唱したり、やさしく見守ってくれる両親と暮らす内気な子で、ある晩ライダーのグループでパブにやってきたRay (Alexander Skarsgård)を見て電気にうたれていたら彼からメモを渡され、裏の駐車場に行ったら強引にされてぼうっとなって、でもその後は何度連絡しても無視されて、諦めかけた頃に彼の家に呼ばれて夢の時間を過ごして、やがて彼に採寸されて自分のライダージャケットと首輪を作って貰い、髪も長髪から五部刈りにして、ライダーの集まりにも参加して、充実した日々を過ごしていく。

Colinのママは末期癌の治療中で長くないので嫌がるRayを家に招いてみんなで食事(当然気まずさの嵐が)をしたり、そういうことをやって少しづつ仲良くなっていっても彼の家に泊まるときはいつも床に寝かされて、彼の横で一緒に寝るのは許されなかったりするので、ある日いきなりブチ切れたColinは彼のバイクに跨って彼のところを飛び出して…

男女のカップルのお話しだったらネタにもならなさそうなことが、無頼のライダー集団の寡黙な男と家族に大切に育てられてきた真面目な青年の間だとこんなにも謎めいておもしろく手に汗握ったり切ないロマンスのようになってしまうのはなんでか? バイクの走りが時空の何かを歪めてしまうのだろうか。あの終わり方にしてもライダーならしょうがないのか… になる(なる?)

Rayは自宅のエレピでへたくそなサティを弾いたり、Karl Ove Knausgård の”My Struggle”を読んだりしているのだが、その割に本棚は空っぽだったりしてちょっと不思議、というかRayが日々何を考えているどういうオトコなのか、(おそらくColinにも)最後までわからない感が残って、ライダーっていうのはそういう種族なのだろうか? とか。

日本だとゲイ・レズビアン映画祭の枠になってしまうのかもしれないが、これはふつうに(18禁)一般公開されてほしいな。


最近は訃報があまりに多すぎていちいち打ちのめされていたらこっちがやられてしまうので、1分くらい黙祷しておわり、にしているのだが、Martin Parrはちょっと驚いた。ついこの間、彼のドキュメンタリー映画で挨拶に来ていたし、新作のサイン本、まだふつうに出ているのに…   
ありがとうございました。あなたの撮った天国の写真を見たいよう。

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