12.15.2025

[film] Tea and Sympathy (1956)

12月3日、水曜日の晩、BFI Southbankで見ました。
メロドラマ特集で、11月15日にあったイベントMelo-dramaramaの補足番外編として、”Beyond Camp: The Queer Life and Afterlife of the Hollywood Melodrama”というパネルトークがあった。

ハリウッドの「女性映画」やメロドラマが長年クィア文化に深く結びついてきた - Bette DavisやJoan Crawfordなどがゲイ・アイコンとして崇拝されているのはなぜなのか? R.W.Fassbinder, Almodóvar, Todd HaynesらがDouglas Sirk のスタイルを継承・変奏しているのはなぜなのか? などについて、”The Heiress” (1949)や(いつもの)”Written on the Wind” (1956)のクリップを映しながら議論をしていく。

男性中心社会/至上主義の目には見えない過酷さがあり、その過酷さを生き抜こうとしてモンスター(or 犠牲者)となるメロドラマの主人公にクィアが接続されていくのはものすごくふつうの、そうだよね、しかなくて、それをそうだよね、にしてしまっては何も変わらないので、これはOne Battle After Anotherなのだ、と改めて。

今回はネタの起源を40〜50年代の米国ハリウッド映画にしていたが、英国であればこれの根は階級制度に、日本であれば家父長制起源のものになって、でもこれはネタがどう、とかいう話ではなくてそれだけこの野蛮な人でなしの世の中で苦しんでいる人がいる、というのと、その中で、他からどう見られても蔑まれてもいい、とにかく生き抜く術と姿をください、という祈りのなかでメロドラマというアートが立ちあがってきた、と。

これの終わりに特別上映として:

Bourbon Street Blues (1979)

Douglas Sirkの最後の監督作品とされている25分の短編で、原作はTennessee Williamsの一幕戯曲”The Lady of Larkspur Lotion”(1946 and 1953)を基にした作品。

酔っ払って全てを失い明日がないぞって更に酔っ払う女性と彼女に文句を言い続ける女性、その口論の終わりの方にぬうっと現れるR.W.Fassbinderの生きているのか死んでいるのか瀬戸際の異様なオーラ。たぶん彼女たちの口論の中身がわからなくても、ここに晒された呪いのように臭ってくる酩酊とアートのありようはずっと。


Tea and Sympathy (1956)

12月3日、↑の企画の後に、参考作品として上映されたのを見ました。企画テーマに見事にはまる一本。

35mmフィルムのテクニカラーで、フィルム上映で見るDeborah KerrやMaureen O'Haraって、なんであんなに美しいのか。これって美術館でもシネコンでも絶対見ることのできない美のひとつではないか。

原作はRobert Andersonによる1953年の同名戯曲で、メインキャストはブロードウェイの舞台からそのまま(舞台、見たかったなー)。監督はVincente Minnelli、撮影はJohn Alton、音楽はAdolph Deutsch。邦題は『お茶と同情』 … 「同情」じゃないよね。

Tom Robinson Lee (John Kerr)が同窓会で高校を訪れて、17歳の自分が暮らしていた下宿屋の自分の部屋に行ってみると、いろいろ蘇ってきて…

そこでは大勢の男子学生が家主でスポーツのコーチでもあるBill (Leif Erickson)の家で体育会ど真ん中の集団生活の日々(隅から隅まで吐きそう)を送っていて、でもTomはBillの妻Laura (Deborah Kerr)と庭先でお茶をしたりお花とか縫い物とか本の話をする方が好きで、Lauraも彼のことを大切に思うようになって、でもそうしていると同級生たちにLady Boyってバカにされて虐められて、尊敬していた父親 - Billの親友でもある - からもそんなことじゃいかん、て言われ、その虐めはエスカレートして地元の娼婦Ellie (Norma Crane)のところに夜に行ってこい、っていう酷いことを強いて、無理をしたTomは自殺をはかって…

全体の殆どが、流血こそなくても愚かで幼稚でバイオレントな描写に溢れていてしんどいのだが、最後に森に逃げこんだTomとLauraの、というかDeborah Kerrのあまりの美しさにびっくりして涙が引っこんでしまう。こんな美しいのってあるのか、この美しさと共に生きよう - ってTomも思ったのだと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。