9月5日、金曜日の晩、Picturehouse Centralで見ました。
Spike Leeが、黒澤明の『天国と地獄』 (1963) - 英語題は”High and Low” - を現代のNYを舞台にリメイクした結構な話題作だと思うのだが、UKでの公開も宣伝もものすごく地味でどうみてもやるきないっぽい(初日なのでスクリーンだけはでっかくしてくれた)。
日本の若者たちが黒澤のオリジナル版を見ていないことについて、Spike Leeが日本のジャーナリストを責めた(彼のいつものあれよ)そうだが、だって日本で黒澤を見ろ、って言ってくるおやじって、ぜったい上から目線の黒澤の映画に出てくる脂ぎった悪役みたいなじじいばっかりだったんだもの。(だから見てないよ。お金も時間も限りがあるんだよ)
原作はEd McBainの小説” King's Ransom” (1959) – これがそもそもNYをモデルにした架空の都市が舞台だったのだが、冒頭、イーストリバーを中心にブルックリン側から映しだされるダイナミックなNYのスカイラインも、自分にとってはあんまリアルには見えない(変わりすぎてしまって)。そういうところまで含めた嘘っぽさ、絵空事のかんじがでかでかと。
主人公は音楽業界の伝説的なプロデューサーDavid King (Denzel Washington)で、冒頭のシーンは彼のWilliamsburgあたりの高層アパートのペントハウスから、その内部は高そうなアートとかレコードコレクションとか、彼にとってのアイコンとか、自分が表紙になった雑誌のカバーとかで覆われている。妻のPam (Ilfenesh Hadera)はブラックカルチャーを支援する慈善家で、息子のTrey (Aubrey Joseph)はバスケットボール選手で、問答無用で今の過剰な富裕層の典型。
Treyを車で学校に送っていったその晩に彼が誘拐されたという報が入り、アパートに捜査本部が置かれ、何をしても、どれだけ払ってもいいから彼を取り戻せ、と伝えてしばらくしたら、Treyは戻ってきて誘拐されたのはKyleではなくDavidの親友で運転手のPaul (Jeffrey Wright)の息子Kyle (Elijah Wright) であることがわかる。
自分の息子じゃなくても親友のKyleを救ってくれるよね? とTreyはパパにお願いするのだが、ビジネスでも岐路に立たされて迷っている最中に膨大な身代金の出費は痛くて、でもすぐに返事を出せないDavidにSNSはざわざわし始めるし、警察はPaul自身が仕組んでいる可能性も視野に入れていたり、いろんなことが立ちあがって出口が見えなくなる。
結局Davidは取引に応じることにして、自ら身代金を担いで④の地下鉄でBorough Hallから試合で人々がごったがえすYankee Studiumまで乗っていって(停車駅にいちいち思い出が)、更におそろしいことに球場の外ではPuerto Rican Day Paradeが行われててごった返す、なんてもんじゃない修羅場になっている。人混みが嫌いな人だったら秒で失神してもおかしくない、NYが一年で一番やかましくなる一日に、いくら荷物にGPSを仕込んでいたからと言って、犯人を捕まえることなんてできるだろうか? - いやぜったいむり。(これ、単独犯のように描かれているけど組織で動いているよね?)
でもDenselだから。 “The Taking of Pelham 123” (2009)でも、”Unstoppable” (2010)でも、やってきたことなのでまたしても、はあるけど、彼が電車に乗りこんだら解決しないことなんてないから。無敵だから。
そして今回もまた、なのだが、最後は結局Yung Felon(ASAP Rocky)とのラップ対決で - 殴りあいでも銃でもなく – 負かしちゃって、伝説上の人物なのでそういうもんなのかもしれないけど、すべてを取り戻してしまって、お手あげになる。
Spike Leeはたぶんこれを過去から連なるNYのドラマ(音楽、野球、移民、ダンス、アート等) – Highest/Lowestも社会階層に加えてNYの地理 - マンハッタンだとUpper/Lowerだけど – にしようと思っていたのかもしれないが、とにかくDenselがでっかすぎてどうしようもない。 ここはもういっかいマンハッタンにゴジラを上陸させるくらいしかないのではないか。
9.12.2025
[film] Highest 2 Lowest (2025)
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