9.06.2025

[film] Drømmer (2024)

8月17日、日曜日の夕方、BFI Southbankで見ました。

日本でも公開が始まっているノルウェーのDag Johan Haugerudによるオスロ三部作。日本に行ったりしている間に上映が終わって、”Love”だけ見逃してしまい、とりあえず見た2本についてだけ書いておく。Joachim TrierのOslo trilogyと混同していて、あんま乗れないでいたら別物だったことに気づいた。

こちらではKrzysztof Kieslowskiのトリコロール3部作に匹敵する、みたいな宣伝文句もあったが、そこまではー。

Drømmer (2024)


こちらでのタイトルは”Oslo Stories Trilogy: Dreams”。
3部作を順番通りに見ようとすると、これが最後にくるらしいが、知らないで最初に見てしまった。

17歳の高校生Johanne (Ella Øverbye)がいて、シングルマザーのKristin(Ane Dahl Torp)と暮らし、祖母のKarin (Anne Marit Jacobsen)がいて、特に不満も問題もなさそうだが、なんか抱えていそうな。
そんな彼女のクラスに新任教師でテキスタイルのアーティストでもあるJohanna (Selome Emnetu)が来てから、一目で恋におちたJohanneは落ち着かなくなり、彼女の姿を目で追うようになってどうしようもなくなり、夜の街を彼女の家まで追っていってドアをノックしたら泣きだしてしまい、Johannaは彼女を抱きしめて家に入れてあげる。

後半は、JohanneがJohannaとの親密な時間について書いたものを出版経験のある祖母に見せて、祖母はその大胆で脆くて熱い孫の書いた内容を母にも共有して、これは事実なのかJohanneの夢とか妄想みたいなものなのか、それはそうとしてテキストとして出版してもよいくらいよく書けているけど、どうしようか、みたいなことを自問したり会話したり、母はどうしようもなくなってJohannaのところに行ってみたりする。

JohanneがJohannaのフラット(すごくすてきな部屋よね)で過ごした(実際に起ころうが起こるまいがの)夢の時間、そこから紡がれた夢の織物を巡って、それぞれがいろんなことを思ったり言ったりして、決して理解したり共感しあったりするものではない、ただ17歳の娘/孫の夢に巻かれてあうあう右往左往する、その3代がなんかよいの。これが例えば男性中心の(3代)だったらどんなドラマになっただろうか - ぜんぜん見たくないや - とか。


Sex (2024)

8月24日、日曜日の夕方、BFI Southbankで見ました。“Oslo Stories Trilogy: Sex”。
タイトルでなにかを期待してきてしまった人はかわいそうに。

これが3部作の最初の1本だそう。
煙突掃除を仕事にしているふたりの男が休憩時間か終業後なのか、見晴らしのよい屋根の上に座って話をしている。男A (Jan Gunnar Røise) が男B (Thorbjørn Harr)に、自分がDavid Bowieに女性として見られている変な夢を見る – しかもそれが悪くないかんじのでー、という話をしてから唐突に、こないだ男性とセックスをした、と告白 – というシリアスなトーンではなく、お菓子を食べました、みたいな軽い調子で、向こうから誘われて、一旦断って外に出たけど戻ってついやってしまった、みたいな調子で言う。男Aとってはこんなふうに話してもどうってことない、ってかんじで、やったからといって自分はゲイではないと思う、なんて言う。晴れた日、屋根の上で煙突掃除のおじさんふたりがそんな話をしているのがなんかおかしい。

その場は、へえおもしろいねえー、くらいのかんじで終わるのだが、男Aはそれを妻 (Siri Forberg)にも同じ調子で話しちゃって、そうしたらその内容は妻にとってはえらい衝撃で、あなたにとってセックスはそういう「程度」のものなのか、それは大切な人とするものではないのか、って彼の方は言葉に詰まったり謝ったりしてみるのだが、そもそもそんなに悪いと思っていないから喋ってしまったものなので予想していなかった(それはどうか、だけど)彼女の反応に当惑して、ふたりの関係は気まずいものになっていく。

これも↑の”Dream”と同じように、当事者によって語られたことが当人の意図とか事実なのかどうなのか、を超えて親しい人になにかを投げかける、その波紋がもたらす困惑や混乱を追っていて、それが実際に起こったことであるかどうか、ではなく、その宙に浮いて当人が思ってもいなかった空気を作りだしてしまう、その波模様がおもしろい。 彼にとっては女性として見られている夢の方が注視すべきことなのだろうが、そっちの方は誰も相手にしてくれなかったり。

この2作、おもしろいなー、と思いつつも、これのどこがおもしろいんだろうか? というのを考えさせるところもあって、まだ考えたりしている。愛でも夢でもセックスでも、行為そのものを描こうとしないその立っている位置、だろうか。

あと、機内で見たら気持ちよく眠れそうな映画かも。

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