9月4日、木曜日の晩、BFI Southbankのシリーズ”Projecting the Archive”のお蔵出し35mmフィルム上映で見ました。
原作はG.B. Sternによる1939年の同名小説、監督はJack Lee。
イントロで、この作品が映画デビューとなった女優のSusan Hampshireさんが出てきて、当時のオーディションの様子などをお話ししてくれた。現在88歳になる彼女は完成されたこの映画を見ていないそうで、このトークの後に見るのだと。 9歳のデビュー当時の自分の姿を初めてスクリーンで見る、ってどんなかんじなのだろうか?
戦後の苦しい時期、家族の絆やよき父や母の像が求められ描かれていた頃に、こんな毒母モノがあったのか、と。 未亡人のLorna (Ursula Jeans)はプロの物乞いで、きちんとした身なりで娘を連れて、お金持ちぽい邸宅を訪ねていく。タイトルの”The Woman in the Hall”は、執事が主人に彼女が来ていることを伝える時の言葉で、そうして客間に通された彼女は娘と一緒に偽りの身分ででっちあげのかわいそうな話をすると、それは大変ですね、といくらかを恵んでもらう。身なりもきちんとしたLornaの揺るぎない語りもあって彼女の不幸物語を疑うお金持ちは殆どいないし、彼女も自分の行いをまったく悪いことだとは思っていない。
かわるがわる母に連れられて騙しの道具として使われていた娘たち – Jay (Susan Hampshire)とMolly (Tania Tipping)も大きくなって手を離れたので、次の大博打 - 富豪のSir Halmar (Cecil Parker)に近づいて彼と結婚することにして、計画は着実にしめしめと進んでいったのだが、ある日Jay (Jean Simmons)が窃盗で捕まった、という連絡が入って、裁判所に出頭することになる。
法廷では当然証人としてLornaの素性が明らかにされてしまうので、もう全ては終わりか、になるのだが、それ以上に衝撃だったのは、Jayにとって窃盗したり人を騙したりすることは、小さい頃からずっとその現場にいてやりとりを見てきたので、まったく悪いと思っていなかった、ということであった…(そしてそんなキャラクターにJean Simmonsのあの表情が見事にはまる)
ジェットコースターのような法廷の場面は目を離せないのだが、なによりも戦後のイギリスにはこんな毒母 - 本人未公認 - もあった/いた(のだろうな、というのは感覚としてわかる)、というのをドライに切り取って見せていて、とてもおもしろかった。
A Place to Go (1963)
8月19日、火曜日の晩、BFI Southbankの同じプロジェクトで見ました。こんなのがいったいあと何本あるのか、底なしではないか…
監督はBasil Dearden、原作はMichael Fisherによる1961年の小説”Bethnal Green”。Bethnal Greenはロンドンの東の外れの下町で、映画に出てくる建物のなかには今もまだ残っているものがあるそう(そういうの、本当に素敵だと思わない?)
Ricky (Mike Sarne)はそこのタバコ工場で働きながらいつか金持ちになってどん底から抜けだすことを考えている労働者階級のあんちゃんで、思いを実行に移すべく強盗を計画して地元のギャングのJack (John Slater)とつるんで、ついでにCharlie (William Marlowe)の彼女のCat (Rita Tushingham)と付きあい始めて。他にも道端で鎖抜け芸人をやっているRickyの父(Bernard Lee)とか、印象に残る下町の人たちがいっぱい出てくる。
犯罪ドラマ(成功するか失敗するか)、というよりはそういうのが湧いて出てしまう(そこから脱出して”A Place to go”に向かいたいと願う)界隈の人間関係などにフォーカスしたドラマで”A Taste of Honey”(1961)で既にスターになっていたRita Tushinghamが出ていることからもKitchen sink realismの方に分類されることもあるようだが、とにかくごちゃごちゃと落ち着かず、全体としてはしょぼくれていてなんかよいの。
本当にこういうの、TVドラマも含めて今でもいっぱいあるので、みんな好きなんだろうなー、と思って、Kitchen sinkについては本を買って見始めたりしたところ。なぜ、例えばアメリカがノワールで塗りつぶしてしまったようなあんなことこんなことを、イギリスは律儀に表に出して並べてみせるのか、という辺りに興味があるの。
今日は10月のLondon Film Festival (LFF)のチケットのBFIメンバー向け発売日だった。
10時にサイトオープンで、でもすっかり忘れていて10:30に入ったらキューが約3万.. やっと入ることができたのは12:50頃で、もうめぼしいところはほぼ売り切れていた。
少し待てば一般公開されるので高いチケットを買う理由があるとしたらゲストに会う/を見るため、でしかなくて、その欲もあんまなくなってきているので、チケットを買ったのはほんの少しだけになった。始まったらどうせ当日のを狙ってしまうのだろうがー。
9.10.2025
[film] The Woman in the Hall (1947)
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