9月5日、金曜日の晩、”Highest 2 Lowest”を見る前にPicturehouse Centralで見ました。
Netflixに入っていれば見れるやつなのかも知れないが、今のフラットに引っ越した際に契約するのを忘れてしまって、別に困っていない - 他に見るのがいくらでもあるのでそれでいいや、になっている。
原作は2020年のRichard Osmanによるベストセラー、監督はChris Columbus。
田舎に建つ引退した裕福な高齢者向けの養老施設Coopers Chaseに暮らす過去に輝かしい経歴をもって恥じることがない元MI6の諜報員Elizabeth (Helen Mirren), 元組合運動のリーダーRon (Pierce Brosnan), 元精神科医のIbrahim (Ben Kingsley)の3人(他に昏睡状態の女性ひとり)の老人たちが、新聞記事などから実際に起こった殺人事件をピックアップしていろんな角度から推理していく「木曜殺人クラブ」を作って、そこには医学の素養がある人が必要だ、って入居してきたばかりの元ナースのJoyce (Celia Imrie)を引き入れて興味深い事件を、ってなったところでCoopers Chaseの地権者のリアル殺人事件がすぐ近くで起こり、これは出番だっ、て警察から内部情報を入手すべく若い警官Donna de Freitas (Naomi Ackie)を仲間に加えて捜査を進めていくのと、殺人事件が自分たちの住処を中心とした一帯の再開発計画に絡んでいそうなので住民たちの間で反対運動が起こり、そんななか第二の殺人が.. とか。
老人たちは癖のある4人とその周辺(Elizabethの夫役のJonathan Pryceとか)も含めてよい人生を送ってきた善良な人たちばかりで、かたや悪い方はDavid TennantとかRichard E Grantとか見るからにー の連中で、その間でじたばたする警察は冴えない上司にしっかり者のDonnaという凸凹コンビで、登場人物すべてがこちらの期待した通りの役割と振る舞いをしてくれる、という点ではベストセラーになるのも納得だし、お年寄りを中心とした主役陣はみんな上手いし、すべてにおいてなんのひねりもないったらない。もっと老人達が悪い奴らを物理的にこてんぱんにする - Helen Mirrenの”Red”(2010) にあったような - のも期待したのだが、それもないし。
最初にタイトルだけ聞いた時は引退した老人達が完全犯罪を計画するようなドラマかと思ったのたが、そっちの方がおもしろくなったのではないか。
あと、お菓子作りが趣味のJoyceが焼くVictoria sponge(ケーキ)がおいしそうでー。
Honey Don’t! (2025)
9月7日、日曜日の昼、Curzon Soho で見ました。
Ethan Coenが妻のTricia Cookeと組んで、昨年の“Drive-Away Dolls” (2024)に続けて放つB級犯罪もの。Carter Burwellの音楽が冒頭からすばらしい。その音楽にのったタイトルバックで、カリフォルニアの寂れた町を車で抜けていくと、そのネオンとか落書きとか曲がりくねったパイプなどにスタッフやキャストの名前が浮かびあがってきておもしろい。
Honey O’Donahue (Margaret Qualley)はそんな町でひとりで私立探偵をしていて、ものすごく儲かっているわけでもかつかつでもなく、人探しの依頼が来ればふつうに警察なども使いながらクールに対応していって隙がない。
冒頭、崖下に落ちた車に乗っていた男女 - 当然怪我をして動けない - が誰かに車ごと焼かれて、以降その町できな臭い殺人事件が続いていくのと、その横でカルトっぽい新興宗教の牧師Drew (Chris Evans) - PTAの”Magnolia”(1999)のTom Cruiseぽい - がいつも信者の女性とやっていて、その周辺でどうも殺しは起こっているらしいぞ、なのだが、Honeyがその件に脚を突っ込んで冴えた推理や機転のきいた捜査を繰り広げていくようなやつかというと、そんなでもなく、そのカルトの中身に触れるか触れないかくらいのところでころころ簡単に人がいなくなったり殺されたりしていって、推理や捜査よりもとにかく数として溢れてくるきな臭いなにかにぶつかった、というくらいの描き方。
ナンバープレートが”Honey Dont”の車に乗って足取り軽く町を抜けていく彼女の内面に入りこんでいくような場面はそんなになくて、レズビアンの彼女がAubrey Plaza演じる不機嫌で不穏な警察官MGと恋仲になったりするくらいで、スタイリッシュではあるが、その反対側、町はずれで起こった陰惨なことを並べて、クールな女性探偵はそれにどう対応 - ほぼしてない - をしたのか、を淡々と追っていくだけ。怒りとか慟哭とか、そういうのに突き動かされて動いていくようなキャラではない。
唐突な残酷さとか喜劇的なくらいの救いのなさ、という点ではCoen兄弟の諸作っぽいかんじもなくはないのだが、すべてのピースが繋がって奇怪なランドスケープを描きだすようなところまでは行かず、いろんな一発芸を脈絡なく繋いでいくしまりのない、腑抜けた印象が残る。その腑抜け感 - ここはどうせそんな土地なのさ、のような投げやり感で転がっていくタンブルウィードの。
“The Substance”(2024)でのMargaret QualleyとDemi Moore との喧嘩はなかなかすごかったが、ここでのAubrey Plazaとの喧嘩もなかなかだったかも。
9.15.2025
[film] The Thursday Murder Club (2025)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。