9月18日、木曜日の晩、South BankのQueen Elizabeth Hallで見ました。2日間公演の2日目。
ブラジル生まれでアムステルダムで活動するアーティストCarolina Bianchiと彼女が率いるパフォーマンスグループthe Cara de Cavalo(馬の顔)による公演 - 演目は”Cadela ForçaTrilogy”のChapter-1で、18禁。休憩なしの2時間半。 2023年にアヴィニョンの演劇祭でプレミアされ、ヨーロッパ中をツアーしてきた舞台で、英国でも2023年にグラスゴーのフェスで上演されている。
“The Bride”というのは、イタリアの女性アーティスト/パフォーマーのPippa Baccaによるパフォーマンス”Brides on Tour”で、ウエディングドレスを着て花束を手にした彼女がヒッチハイクするのを記録していくパフォーマンスだったのだが、彼女は2008年の国際女性デーに、ミラノからエルサレムに向かう旅をしていた途中、イスタンブール近郊で、レイプされて殺されて道端に棄てられているのを発見された。
“Good Night, Cinderella”はブラジル人が使うお酒に入れて眠らせて.. のレイプドラッグの隠語で、Carolina Bianchi自身もこれの被害にあったことがあるという。
舞台上には簡素なデスクの上に書類の束、と背後にはプロジェクターがあり、前半はCarolina Bianchiがひとりで登場して客席に向けてレクチャーをしていく。最初がダンテの『神曲』からの引用、女性がどこまでも追われる姿を描いたボッティチェリの絵画たち、女性によるパフォーミングアートの歴史を踏まえつつ、特に”The Bride”のパフォーマンスについて、なんでこんなことになったのか、「女性側の落ち度」として片づけられがちであることを十分に承知したうえで、古来からずっと、揺るぎなくあって変わることのない男性による性加害やフェミサイドの歴史 – もうひとつピックアップされたのは、ブラジルのサッカー選手が恋人を仲間に殺させて、事件発覚後も選手を続けていた件 – などを紹介していくのと、ドラッグについてはMarina Abramović等によるパフォーマンスの例を示しつつ、自分で錠剤(たぶん本物じゃないだろうが)を砕いて飲んで、もし薬が効かなかったら数時間かけてレクチャーの残りをやりますが... と言ったりしているとぐったりして机の上に崩れ落ちて、ここから後半に移る。
前半のイメージは白で、BrideでもCinderellaでも祝福されたもの(白)としてあるはずだった女性のイメージは、男性の快楽のために消費され穢されるべきものとして初めからあったこと、女性によるアートがいかにそこに自覚的であったかを示して、後半は対照的に黒づくめの衣装(黒というだけで仕様は各自ばらばら)を纏った男女8人くらいが黒子のように出てきて、Carolinaを隅に運んで服を替えさせたりして、ぐったりしている彼女の脇でレイプドラッグがもたらす悪夢のような光景 - 外側だけでなく内側も - を本物の車を使ったりしつつ展開していって、前半のクリーンで整然としたレクチャーとは真逆の、リアルな地獄めぐりのような絵を見せてくれる。
ここで何度か言及されていたのがRoberto Bolañoの名前、特に”2666” (2004)で、なるほどいくらでも出てくる失踪者の件、それが至るところに埋められてうやむやになってきた歴史はあるかも。
2時間半で、ものすごくいろんなものが出てくるのでついていくのが大変だったが、それでも相手にしているものの始末に負えないどす黒いどうしようもなさ、その歴史も含めた巨大さは十分にわかってうんざりした(このパフォーマンスに対して、じゃないよ)。18禁でよいのかも。
性加害の罪がどこまでも軽くて、警察すらそこに加担して許してしまうような自分の国を見ても、容易にどうこうできるものではないことはわかる(いや、わからないよ - なんであんなに野放しで寛容なままで許されているのか) - が、だからこそ上演されてほしい。
9.25.2025
[theatre] The Bride and The Goodnight Cinderella
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