9月7日、日曜日の夕方、BFI Southbankで見ました。
ここの9月の特集、でっかいのは”Ridley Scott: Building Cinematic Worlds”で、これは割とどうでもよくて、もうひとつは”Anna May Wong: The Art of Reinvention”で、がんばって見ているけどここに書けていなくて、あとひとつ、日程がぜんぜん合わずに泣いているのが”Associated-Rediffusion: The UK’s First Groundbreaking TV Franchise”という特集。
最初は何なのかわからなかったのだが、英国で商用TV放送は1955年、Associated-RediffusionとABCの2局による夜間番組の放送から始まって、国営のBBCとは別にドラマ、時事番組、討論番組、ドキュメンタリー、子供向け番組、コメディなどをかけて、TV CMの導入も含めて後の商用TV放送の先駆となったそう。Associated-Rediffusionが存続したのは1955年から1968年までで、その中からBFI National Archiveに保存されているものを紹介していく特集で、ComedyだとComedy1, Comedy2, Comedy3のようにオムニバスとして組み合わせたり、人気のあった連続ドラマだと数エピソードを纏めたり。
このDrama1は、Joe Ortonの書いた劇作をドラマ化したもの3本を束ねていて、Drama2は、Harold Pinter特集、Drama3は、Oscar WildeとAnton Chekhov。2は終わっちゃって3は予定があって見れない。 あーくやしいったら。
3本のトータルの上映時間は191分で、途中1回休憩が入った。しかしこんなのをTVで見れていたなんて。
Entertaining Mr Sloane (1968)
80分で、月曜の22:30に放映されたそうで、3幕の合間にはCMが入ったという。原作は1963年で1970年にはDouglas Hickox監督により映画化もされている。
若者Sloane (Clive Francis)が下宿先を探して中年女性Kath (Sheila Hancock)の家を訪ねてきて、同居している彼女の父Kemp (Arthur Lovegrove)は噛みついて、兄のEd (Edward Woodward)も眉をひそめるのだが、若いSloaneのことを気にいってしまったKathは、なんとしても彼に住んでほしくて1幕の終わりにはセクシーな寝間着姿で現れて。 2幕以降、出ていこうとするSloneと妊娠をほのめかしてなだめたり留めようとするKath、ろくなもんじゃない奴だ、って追い出そうとするKempとEdとの攻防が続いて、留守の隙にSloneはKempを殺してしまうのだが、その死の扱い/報告を巡ってKathと事実を握るEdが対立して…
まずは誰かの欲望とか野望があって、その後に続く終わりのないせめぎ合いと駆け引きをすごく狭いスペースと関係 - 「英国」的な? - のなかで描きながら、セクシャリティとか老いとか普遍的な、時として宇宙的に広がるなにか(の端っこ)を見せてくれる、というのが自分にとってのJoe Ortonで、モノクロで、小さな家のダイニングから断固として外に出ていかないカメラは、これだなー、というものだった。
いまYoung Vicで本作を上演しているので、そのうち見にいく。
The Erpingham Camp (1966)
“Seven Deadly Sins”という全7話からなるシリーズの一篇。Deadly Sinsは”Pride”, “Gluttony”, “Sloth”, “Avarice”, “Lust”, “Envy”, “Wrath”で、その回がこのうちの何をテーマにしていたのかは最後に明かされる。監督はJames Ormerod。 53分。
いつもきちんとして威厳たっぷりのMr. Erpingham(Reginald Marsh)が経営する伝統あるHoliday Campがあって、そこの従業員も彼の指揮下で軍隊のように教育され統率されているのだが、その晩のパーティの責任者に任命された若者がちょっと間抜けで張り切り過ぎたら何かのタガが外れ、客が暴走を始めて止められなくなって…
この日のテーマは”Pride”でした。
エウリピデスによる『バッコスの信女』 - The Bacchaeのペンテウスの悲劇を元にしているそうだが、あまりよくわからなかった。けど暴動のシーンの転がりかたはすごいと思った。 “Bacchae”もNational Theatreで上演が始まったのでそのうち行きたい。
The Good and Faithful Servant (1967)
“Seven Deadly Virtues”のシリーズからの一篇。書かれたのは1964年。これも監督はJames Ormerod。 53分。ここでテーマとなっているVirtueは”Faith”。
工場のドアマンとして50年間勤めてそこを退職することになったGeorge (Donald Pleasance)がいて、辞めることになっても自分のことなんて誰も気にしていないし覚えていないし贈り物もつまんないものだし、でも最後の日にそこで掃除婦をしていたかつての恋人Edith (Hermione Baddeley)と再会して、彼女の家で孫だという子供とも会うのだが...
しょぼくれの、失われた生の究極を描いたような作品で、自分のことに照らしてもしゃれになっていなくてうぅ、しかないのだが、Joe Ortonにとってはもっとも自伝的な作品でもあるそうで、これが放映されてしばらくして、彼は殺されてしまった、と…
9.20.2025
[film] Drama 1: The Entertaining Mr Orton
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。