4月21日、月曜日の夕方、BFI Southbankで見ました。
これもBFIの4月の特集 – “The Long Strange Trips of Wojciech Jerzy Has”からの1本で、ポーランドの映画作家Wojciech Jerzy Has (1925-2000)の生誕百年を記念した初の全作品上映のレトロスペクティブ、だそう。
この人の作品は、日本のポーランド映画祭での”The Saragossa Manuscript”(1964) - 『サラゴサ手稿』くらいしか見たことがなかったのだが、お勉強で見たい – と思ったらこれももうほぼ終わっている状態で(泣)、でも見ないよりは見たほうがだから見るの。
Harmonia (1947)
最初は13分の短編で、単独監督デビュー作。英語題は”Accordion”。音は入っているが発話や会話はない。男の子が古物屋にあったアコーディオンを欲しくなって、でも彼を雇っている主人が買ってくれるとは思えないので、隠してあった小銭をかき集めて、履いていた靴と上着も足してようやく手に入れて持ち帰ったら主人がふざけんな、って叩き壊して雨の中に放り出し、それを見た男の子は壊れたアコーディオンを拾ってひとり家を出ていくの。 小さい子の後ろ姿がしんみり哀しい。
Rozstanie (1961)
英語題は”Goodbye to the Past”。72分の作品。 サブタイトルには”A Sentimental Comedy” とある。
朗らかで軽そうな青年Olek (Wladyslaw Kowalski)が列車で上品な中年女性Magdalena (Lidia Wysocka)と出会って、同じ駅で降りてそのままサラリと別れて、Magdalenaは彼女の生家である大きなお屋敷で行われる祖父の葬儀にやってきたらしい。
女優をしているMagdalenaが実家に戻るのは数十年ぶり、地元の名士だった祖父の屋敷を含む遺産 - でも彼女が出ていってからはからから - の相続人である彼女 - ずっと不在で葬儀が済んだら都会に戻ってしまうと思われる彼女に対して、ずっと家を維持してきた家政婦を始めとする旧勢力がしらじらとよそよそしく、これを機に屋敷を手放してくれないか or 地元の誰でもいい誰かと結婚して屋敷を自分らのどうにかできるようにしてくれないものか、だってあなたがいない間こんなにがんばって維持してきたのだから、とわかりやすい悪巧みを厚塗りで仕掛けてくる。
Magdalenaは彼らのそんな思惑はすべてお見通しで、故郷への郷愁や育った家に対する思い以上に、人々がそんなふうに変わってしまったこと、或いは歳を重ねた自分への接し方が(或いは歳を重ねた自分自身が?)変わってしまったこと、に失望しつつも、言われるままに人に会ったり、寄ってくる人達に会ったり、そのどれもが - “Goodbye to the Past” - あの頃に別れを告げるきっかけや踏ん切りのようにしか効いてこない。明らかに、もうここに自分の居場所はない。
そんな中、冒頭で出会ったOlekだけはなんのしがらみも縛りもない素の温度感でMagdalenaに接してくれて、彼と過ごす時間のなかで再訪する過去や部屋のあれこれは、全く異なる表情で迫ってくるのがなんだか切ない…
それでもやはりMagdalenaは元来たところに戻ることにして、あなた達の相手をしていても無駄だし、って蓋の開いた泥沼をあっさりかわして去っていく姿も、ほんの少しの心残りのOlekとのことも振り返らずに発つところもよくて。
難しくないテーマとはいえ、エピソードの並べ方や、少しだけ揺れつつも気を取りなおして過去を棄てて去るMagdalenaの毅然とした姿がかっこよいのだった。湿り気がなく立ち姿が素敵で、かんじとしては高峰秀子、だろうか。
ロンドンに戻ってきて1週間が経った。まだお腹の穴は塞がってくれなくて、そういうことならずっと閉じなくていい、こっちにも考えがある、になってきた。
4.28.2025
[film] Rozstanie (1961)
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