4月17日、木曜日の夕方、シネマヴェーラのプレコード映画特集で見ました。
邦題は『歩道の三人女』。監督は”Five Star Final” (1931)もなかなか陰惨でよかったMervyn LeRoy。コロナでロックダウンされていた時にCriterion Channelで見ていたことがわかったが、いいの。63分という長さなのに、ものすごく濃くて恐ろしい。ホラー、といっても通用しそうな地に足のついた残酷さがある。
NYのパブリックスクール(P.S.62)で、3人の女の子 - Mary, Ruth, Vivianがいて、ふつーに不良の子、男付き合いのうまい子、ふつーのよい子、それぞれがいて、大きくなったMary(Joan Blondell)は少年院に入れられたりしていたがどうにかそこを抜けて更生していて、Ruth (Bette Davis)は速記者としてまじめに社会人していて、Vivian (Ann Dvorak)は成功した弁護士Robert Kirkwood (Warren William)と結婚してお屋敷に暮らし、小さい息子Robert Jr. (Buster Phelps)がいてなにひとつ不自由ないように見えるのだが、漠然となにかを抱えこんでいるような。
この3人が町中で久々に再会して、お茶でも飲みましょう、ってテーブルを囲んで談笑して、3人で一本のマッチの火を分けあう – これが第一次世界大戦下、兵士の間で流れた迷信 = 3人でマッチの火を分け合うとその最後に火を点けた人がしばらくすると亡くなる – に繋がっていく。それは戦場という特殊な状況下での出来事ではなく、画面に紙芝居のように流れていく当時の社会の世相や出来事の間、そこにふつうに暮らす我々の間に起こりうる災禍としてあるような。この辺、”Five Star Final”にもあったように、降りかかってくる悲劇というより始めから避けられない運命の溝として見せるのがうまい。
日々どんよりのVivianはRobertを連れてクルーズの旅に出ようとするのだが、見送りタイムにMaryとその仲間が現れて楽しく盛りあげてくれて、Maryの傍にいたちんぴらのMichael (Lyle Talbot)のねっちりした口説きに動かされてしまったVivianとRobert Jr.は出港直前に姿を消してしまう。
妻と息子に失踪されたKirkwoodはMaryの助けを借りて捜索するのだが、次にMaryの前に現れたVivianは明らかにやつれた薬物中毒になって金をタカリにきて、Maryが恵んでくれたお金$80をボスのところに運んだヒモのMichaelは、兄貴のHarve (Humphrey Bogart)とボスから借金は$2000じゃなめとんのかおらー、って怒られシバかれて、もうあれしかない、とセントラルパークで遊んでいたRobert Jr.をさらって身代金$25000を要求する。
お金持ちのKirkwoodは、こっちもふざけんな、って金とパワーにものいわせてすごい捜査網を敷かせて、網はあと一歩のところに迫り、追い詰められたギャングはガキを殺して逃げるしかない、って決めて隠れアパートに向かい、渋るMichaelをあっさり殺し、そのやりとりを聞いていた扉の向こうのVivianはRobert Jr.を隠して、扉を叩く連中の反対側で鏡に向かって必死に何かやってて、そこから…
その先になにが起こるのか、そのショットの連なりも含めてあっという間で結構衝撃的で、迷信がどうしたとかどうでもよくなるくらいなのだが、最後はMary とRuthのふたりがマッチに火を点けて終わるの。
ませたガキ、少年院、不貞、児童虐待、ドラッグ、自殺など、社会的によろしくないものがぜんぜんありうる束として世相に絡まって走馬灯のてんこ盛りで、これぞプレコード、しかない。
あとは極悪冷血のギャングを演じたHumphrey Bogart、あんたはこっちの方に行くべきだったな。
シネマヴェーラの特集、今回はここまで。
昨日、滞在の最後に『アブラハム渓谷』 (1993)を見れたので思い残すことはないの。
3週間前の日曜日に入院して、というのが今思うと遠い夢のようだが、これから英国に戻ります。まだ穴がいっこ塞がってなくて、機内でここから何か出てきたりして… なのだががんばる。
いろいろ考えさせられたよい旅だったかも。
4.19.2025
[film] Three on a Match (1932)
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