4月12日、土曜日の夕方、日仏のラリユー兄弟特集で見ました。邦題は『描くべきか愛を交わすべきか』。
前日の『パティーとの二十一夜』が素敵だったので、他のも見たくなり、でも『運命のつくり方』 (2002)以降、翌日曜日上映の回はどれも売り切れで取れないのだった。
Madeleine (Sabine Azéma)が田舎のほうにひとりで絵を描きに原っぱを降りて、森の方に向かっていくと、奥の方からサングラスをした熊みたいな男がよろよろやってきて、彼 – Adam (Sergi López)は目が見えないようだったが、ここの市長をやっていると言い、原っぱの外れにある売り出し中の一軒家を案内してくれる。
都会の自宅に戻ってリタイア目前の夫William (Daniel Auteuil)に家のことを話してみると興味を持ってくれて、見にいってみよう、って実際に見たら気に入って、ここを買おうよ、になって、暮らし始める(いいなー)。
新しい家にはAdamと彼の妻のEva (Amira Casar)も訪ねてきて、MadeleineとWilliamも、AdamとEvaの家を訪れて、二組四人の交流が深まっていく。
展開としては裕福な初老の夫婦が田舎の古民家を買って暮らし始めて、歩いていける距離の隣人夫婦と親交を深めていって、というそれだけなのだが、原っぱに建つ家の描写とかちっとも落ち着いているようには見えないし、夜中、灯りのない中、Adamに手を引かれて4人でMadeleineの家に戻るところ(画面まっくら)とか、EvaがMadeleineの絵のモデルになるところとか、ミステリアスななにかを暗示しているようで、この辺は『パティーとの二十一夜』にもあった、見えないところで蠢くなにかがこちらにやってきそうな光と空気が。
ある晩、AdamとEvaの家が火事になって全焼して、住処を失ってしまった彼らに、うちに来れば、とMadeleineとWilliamは誘って、4人での暮らしが始まるのだが… これが全ての過ちだった.. というほど劇的なことが起こるわけではなく、妙な空気になって夫婦の相手がなんとなく替わってて、気が付いたらなんてことを.. って狼狽して、MadeleineとWilliamはとにかく家を出て都会に宿を取ったりするのだが、自分たちが(も)やったことだし懺悔したり悔い改めたりもなんか違うかも.. ってなり、そうっと家に戻ってみるとAdamもEvaももういなくなっている。
原因はどこにあるのか、結果として許されるのか、とかそういう話ではなくて、『パティーとの… 』でも語られる「おおらかさ」みたいな話とも違う気がして、欲望というのは掴みどころがなくどこから現れてなにをしでかすのかわからないもの、というのが夫婦の取り替え、という犯罪とかスキャンダルになるほどのものではない(相手方がAdamとEvaというのが趣深い)愛のかたちを通して描かれていて、この後に現れる別の夫婦との出来事も含めて、そういうもんよね、って最後にはハッピーエンディングでよいのかどうかー みたいなトーンでさらりと描いていて、なんかよいの。
タイトルの「描くべきか愛を交わすべきか」については、どちらも交歓(何度か流れる”Nature Boy”の”The greatest thing you’ll ever learn is just to love and be loved in return“ )だし、「どちらもー」 しかない。『パティーとの… 』は、「語る(or書く)べきか愛を交わすべきか」っていうお話しだったのかも。
ニルヴァーナ 『イン・ユーテロ』 研究 ~アルビニ・オリジナル・ミックスを検証する~
↑の映画を見る前、新宿のRock Cafe Loftで音楽ライター鈴木善之さんのお話しを聞いて『イン・ユーテロ』の盤を聴いた。
入院していて一番飢えて困ったのががりがりやかましくでっかい音で、でも入院中も出所後も耳にはなにも装着したくなくて、でもライブに行くのはしんどいし、そういえばこの日はRSDだったのにどうしようもないし、せめてどこかででっかい音をー(涙)っていう要請にぴたりと応えてくれたイベント。
『イン・ユーテロ』 (1993)の”Heart-Shaped Box”と”All Apologies”はSteve Albiniのプロデュースで録られた後、Bob LudwigとScott Littによって「お化粧」されていた、そのお化粧の度合いが経緯は不明なるも2003年にリリースされた欧州盤(+更にその数年後のリリース)にしれっと差し替え?収録されていたAlbiniのオリジナル・ミックス(かどうかは不明)らしきものによって明らかにされていて、その2つを実際に聴き比べてみましょう、という試み。
この2曲のミックス関してはPC上の音源でもはっきりそれとわかるくらい違っていて、その後にお化粧なしの『イン・ユーテロ』を1曲目からフルで、今度はちゃんとしたオーディオのでっかい音で流してみる。(この後に1993年リリース盤の通しもあったのだがそれまではいられず..)
あーこれだよなー、って痺れたのは勿論なのだが、”Heart-Shaped Box”がリリースされた当時、Anton CorbijnのあのカラフルなPVに感じた微妙な違和感 - こっちに行っちゃうのか? - はこのミックスにも起因していたのかもしれないな、とか。
Scott LittはThe dB’sの2nd(名盤)を作った後にREMをメジャーにのしあげた名プロデューサーだし、彼は悪くなくて、当時のレコード会社がろくでもなかったのだと思う。
ということよりも、久々に全曲通して聴くと、ああこれだわ、これで生きてきたんだわ、ってしみじみ思って、それだけでも。
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