4月13日、日曜日の昼、シネマヴェーラで新しく始まっている特集 - 『プレコード・ハリウッドⅡ』で見ました。
前回のプレコード特集の時はもう海外にいたので見れなかったのだが、プレコード時代の映画特集はNYのFilm Forumとかで結構あったりしたのでおもしろいのがおもしろい、ことはわかっている。ヘイズ・コードという規制で検閲をかけなければならない程、映画が興行面も含めて大きなパワーを持ち始めていた頃の作品たち。自分が好きなだけ映画史を勉強する時間を持てるとしたら、一番やってみたい時代とテーマがこの辺のかも。
監督はWilliam A. Wellman。長さは72分で、76分のオリジナル版は失われているそう。
第一次大戦下のドイツの戦場で、ドイツ軍の人質をさらってくる危険な任務で、勇敢なTom (Richard Barthelmess)は、なんとかドイツ兵を捕まえることに成功して、恐くて穴に隠れていた仲間のRoger (Gordon Westcott)にそいつを託したところで撃たれてドイツ側の捕虜になる。
Rogerは勲章を貰って帰国後にヒーローとなってパレードまでしてもらい、死んだと思われたがなんとか生きていたTomはドイツでの治療によりモルヒネ中毒になっていて、帰国後、薬代の横領容疑で療養施設に収容され、すっからかんの無職でシカゴの街に放り出される。
ダイナー兼下宿屋をやっているMary (Aline MacMahon)に拾われたTomは、同じ下宿屋にいたRuth (Loretta Young)に洗濯屋の仕事を紹介してもらい、もともと優秀だったので頭角を表してRuthとも結婚して、更に同じ下宿屋の極左のドイツ人発明家 (Robert Barrat)が発明した洗濯乾燥機の導入が洗濯工場の劇的な効率改善と収益をもたらす。
発明家は機械のパテントにまつわる収益を半分Tomに入るようにしてくれたのだが、Tomはそんなことより機械の導入が工場で働く労働者たちの職を奪わないように経営者に念を押していて、でもその経営者が亡くなって会社経営が他に移ると仲間たちは皆んな解雇され、それが暴動に発展して、それに巻き込まれたRuthは亡くなり、Tomは扇動の罪で逮捕されて5年間刑務所に。
刑務所を出ると大恐慌の只中で、職を求めて旅をするTomは同様に家が潰れてぼろぼろのRogerと再会して、でもTomが通帳 - 洗濯乾燥機のパテント代が貯まっている - を預けていたMaryのダイナーは人で溢れていて、Tomはこんなにも多くの人を救っているのでした、って。
今のドラマだったら軽く3時間かけそうなネタを80分以内に収めて、泣かせそうなところはぜんぶドライに飛ばして、こんな時代にヒーローであることなんて、どんな/なんの価値があろうか、ってストレートに突きつける。
あと、ガチの共産主義者だったドイツ人発明家が、貧困から抜け出した途端、貧乏人は社会のゴミだ、とか堂々と言いだすところ(→ナチス)の生々しいこと。
Five Star Final (1931)
4月13日、↑のを見たあと、2本置いて同じ特集で見ました。
天気がよくて体力があったら合間に美術館でも行くのに、どっちも酷すぎた。最後の日曜日だったのにー。
邦題は『特集社会面』。監督はMervyn LeRoy、原作はLouis Weitzenkornによる同名戯曲 (1930)、タイトルは一晩に何度も刷られる新聞の最終(勝負)刷のこと。オスカーの作品賞にノミネートされて”Grand Hotel”に負けているが、タブロイド・ジャーナリズムの世界を描いて、すばらしい緊張感と現代にも通じる残酷さが正面から。
タブロイド紙New York Evening Gazetteの編集長のJoseph W. Randall (Edward G. Robinson)は売れる紙面を作れ、っていう上からのプレッシャーにずっと押されていて、社主が20年前の殺人事件 - 結婚の約束を無視しようとした上司を射殺したが妊娠していたので無罪となったNancy Voorhees (Frances Starr) - の今を取材しろ、っていう案にしぶしぶ同意する。
結婚して名前をNancy Townsendと変え、夫Michael (H. B. Warner)と事件当時に身籠っていた娘Jenny (Marian Marsh)と平穏かつ幸せに暮らし、良家のぼんPhillip (Anthony Bushell)との結婚も控えている一家に、牧師になりすましたGazette紙の記者Isopod (Boris Karloff)が乗りこんで情報を聞きだし写真まで持ちだして記事としてセンセーショナルに掲載してしまう。そしたら翌朝にはJennyとPhillipが婚姻登録で不在の時、当然Phillipの両親が乗りこんできて、この結婚はなかったことに、と強く訴えてきたので、Nancyは彼らが帰った後に自殺、それを発見したMichaelもすぐに後を追って、ふたりを発見して一瞬で絶望の底に叩き落とされたJennyは銃を手に新聞社へ…
そもそもは被害者であったNancyを犯人/加害者呼ばわりし、更に平穏に暮らしていた彼女の家族も含めて不幸のどん底に突き落とす、これらを新聞を売るための手段として世間にぶちまけて何ひとつ悪いと思わない傲慢さ、見ていて胸が悪くなる無神経かつ無責任な加害とミソジニーがあり、更にこれらがふつうの慣行のように通用・流通してしまう今の時代も貫いてきて、しんどい。「オールド・メディア」でもなんでもいいけど、100年くらいこの体質って変わっていないことは確か。
それにしてもEdward G. Robinsonのすごいこと。ずっと仕事がたまらなく嫌そうで、なにかあると石鹸で手をごしごし洗って、最後に思いっきりぶちかまして何の不自然もない。彼をずっと横で見ている秘書のMiss Taylor (Aline MacMahon)の落ち着きもよいかんじで。 あと、もっとなんかしでかすと思われたBoris Karloffはおどおどしてばかりなのが趣き深かった。
4.16.2025
[film] Heroes for Sale (1933)
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