4月20日、日曜日の晩、Royal Albert Hallで見ました。
13時間半のフライトを経て飛行機がヒースロー空港に着いたのが、15時半くらい、おうちに着いたのが17時過ぎ、窓を開けて荷物を広げて少し片づけて、お腹の穴からなにかはみ出していないかを確認して、前座の始まる19時半丁度に会場に着く。
チケットはなんとか帰英できそうな状態であることを確認でき.. そうになれたライブの2週間前くらいに、アリーナの前から2列目のが取れた(リセールじゃない定価の)。入院中に本を読むのがきついときはスマホをいじるわけだが、いろんなチケットを頻繁にチェックしたり軽く取ってしまったりしがちなので、こういうのも起こったりする。いま恐いと思っているのは、そうやって深く考えずに取ってしまったやつがどこかで埋もれてダブルブッキングしたりしていないか、ということだわ。
前座はMolly Lewisという女性のWhistler(口笛吹き)で、きらきらしゃらんのドレスに手ぶらで登場し、オケにあわせて気持ちよさそうに口笛を吹く。これがテルミンのようにしなやかで吹かれる側も気持ちよくて素敵だった。拍手はよいけど口笛でヒューヒューするのは営業妨害になるのでやめてよね、って。
今回のライブのタイトルは”Beck with Live Orchestra”となっていて、19日-20日の2days、伴奏はBBC Concert Orchestraで指揮者はTroy Miller - 事情はわからないけど、二日間で指揮者は別々だったりしている。オーケストラの他にはJason Falkner、Roger Joseph Manning Jr.、Joey Waronkerといういつもの(見た目は地味だけどめちゃくちゃうまい)トリオがステージ左手に固まっている。
Beckのライブを見るのは2002年の”Sea Change”の時のBeacon Theatre以来で(20年以上…)、この時バックを務めたのはThe Flaming Lipsで、このライブがものすごくよかったので”Sea Change”はいまだによく聴く一枚で、今回のオーケストラとの競演でまずイメージしたのも”Sea Change”の波のようにゆったりとうねる音のカーテンで、実際演奏された殆どの曲は”Sea Change”と”Morning Phase”(2014)からのものだった。
オーケストラが”Cycle”で入口を優しく流しこんだ後、ギターを抱えたBeckが出てきて”The Golden Age”から、続いてギターを置いてサントラでカバーしたThe Kogisの“Everybody's Got to Learn Sometime”を。サントラで聴いたときは、冷たいところ温かいところが共存する微妙なかんじだったのだが、このライブではマイクを抱えて艶歌のように切なく歌いあげてくれて、この感じだわ、って納得した。以降、ギターありとなしを交互に繰り返しつつ、まずは歌に集中しているような。
MCでも語っていたがバンドアレンジの外側にオーケストラアレンジした楽曲を被せる、のではなく両者が一体となって新しいイメージを生んでくれるようなアレンジを目指した、ということで、その参考としたのが2曲のカバーを披露したScott Walkerであり、”We Live Again”を捧げたFrançoise Hardyであり、「ゴスになりたかったけどうまくいかなかった」と言ってカバーしたThis Mortal Coil(原曲はColourbox)の"Tarantula"であり、ゆらぎながら内側にゆっくりと崩れていく世界に、この人の声はとてもよくはまる、というか声と世界が対峙して移ろういろんな模様を見せてくれる。 声以外だとJoey Waronkerのばちばちに切れるドラムスに背後から襲いかかるティンパニーなどの打楽器群がとてつもない音の深淵を。
どの断面で切っても見事だったが、中盤の“Tarantula”~”It's Raining Today” (Scott Walker)~”Round the Bend”のあたりは、旅の疲れにまっすぐ沁みて撫でてくれる気持ちよさがあった。
“Where It's At”まででオーケストラの人々は去って、バンドはステージに残って”Devils Haircut”から”Loser”まで4曲。その間、がらんとしたオーケストラ席を酔っ払いのように動きまわり、上の方にあるパイプオルガンを弾かせろ、とか、打楽器を手にしてこれはなに? って銅鑼を鳴らしたりとか、子供か…
それにしても、とても失礼かもだけど、1993年の”Loser”から30年かけて、彼がこんなふうになるなんて誰が想像できただろうか? メインストリームかオルタナか、でいうといまだにオルタナとしか言いようがない音を出しているところもすごいし。
4.23.2025
[music] Beck with Live Orchestra
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