3.08.2025

[theatre] Hadestown

3月2日、日曜日の午後のマチネを、Lyric theatreで見ました。

ふつう演劇って、日曜日は公演しないと思っていたのだが、これは日曜日のマチネがあって、今週は特に時間がないので取りたいと思ったのだが、人気があるのかリリースされる端からすいすいなくなっていくし、チケットの値段高いし。 でもしょうがないのでどうにか取る。

最初は2007年にバーモント州のD.I.Y.プロジェクトとして始まり、2019年のブロードウェイ公演はTONY賞の14部門にノミネートされ、Best Musical、Best Original Scoreを含む8部門で受賞していて、ロンドン版は2018年にNational Theatreで上演された後、2024年からここでリバイバルされている – のが今回見たバージョン。こういう人気ミュージカルって、実はあまり見たことないの(”Wicked”も”Hamilton”も”SIX”も見てないや...)。

客層はみんな若めで華やかで、物販にわいわい並んでいるし、看板のとこで記念写真撮っているし、自分がいつもいく演劇とか映画のかんじとは結構ちがう(それがどうした?)。

原作はギリシャ神話の”Orpheus and Eurydice” - 『オルペウスとエウリュディケ』を元にAnaïs Mitchellが脚色、作詞、作曲までぜんぶやっていて、この舞台の演出はRachel Chavkin。

舞台は現代の栄えているとは思えない町の居酒屋、天井高のあるサロンバーのようなところで、左右に各3名くらいのバンド、奥の扉の向こうにドラムス、その上には工場を含めてその一帯を支配しているHades (Phillip Boykin)と妻のPersephone (Amber Gray)がふんぞり返っていて、その周りをモイラ - 「運命の三女神」が歌って舞って動きまわる。 という全体図をMCにあたるHermes (André De Shields)がゴスペルの司祭の威厳と貫禄でもって紹介していく。音楽から離れた台詞や会話はなく、すべてが音楽のなかで語られ、怒り、泣き、愛もまた。

そういう雑踏のなか、仕事を求めて流れてきたEurydice(Eva Noblezada)とミュージシャンになりたいけどまだ半端なOrpheus (Reeve Carney)の若いふたりが運命の出会いをして、互いに運命の出会いであることはわかるけど、日々の生活をどうにかしなきゃ、なので、EurydiceはふらふらとHadesのブラック工場に契約して、ふたりは引き離されてしまい…

ギリシャの神々が大恐慌時代のアメリカの貧富がくっきり分かれた社会階層の断面に現れて(いて)なんかする、というのはわかるし、そこに現代の格差や労使問題を練りこむ、のもあるだろう、し、そこで貧しいけれど心のきれいな男女が出会って、純愛... になりそうなところで女性が売られて一転悲恋に、というのは昭和の労働者を描いた映画やドラマで散々に見てきたので今更、なのだが、格上の権力者に敵いようがない圧倒的な強者であるギリシャの神々を置いた、というのが(少しだけ)新しいのか。

あとは使い古されたドラマでも、歌いあげるミュージカルにすることで心に灯が(ポスターにあるような紅いバラが)ともる、のかも知れない。音楽はオーケストレーションやコーラスを多用して音の壁で盛りあげるのではなく、フォーク、ブルース、ゴスペル、R&Bなど、アコースティック寄りで、踏み鳴らす足音と耳元の歌声で切々と親密に持ちあげていくので、圧倒される、というよりもつい拳とハンカチをぎゅううっとしてしまう、というか。(すすり泣いている人が結構いたのでびっくりしたけど)

でも最後の結末が鶴の恩返し(ふう)になってしまうのは、ギリシャの神々にしてはせこすぎやしないだろうか? (いまのUSAを見ると全く笑えないけど) そしてそのせこいのに負けてしまったOrpheusもさー…

あ、でも、若いふたりはきらきらしていてとてもよかった。ちょっと疲れたPersephoneも。

このアンプラグドみたいなバージョンとは別にパンク(スチームパンク)バージョンとか作ればいいのに。

この回ではないが、フィルム撮りをしていたようなので、そのうち日本の劇場でも見れるようになるかもしれない。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。