3月16日の午後、Alain Resnaisの↑のに続けて角川シネマ有楽町で見ました。
邦題は『白夜』、英語題だと”Four Nights of a Dreamer”、原作はドストエフスキーの短編、監督はRobert Bresson、撮影はPierre Lhomme、音楽はF. R. Davidが聞こえてくるのがうれしい。
4Kリストアされた版で、その色合い – モデルたちの顔とか頭よりも、首から少し下に纏っている服装の赤とか青の、くっきりではなく滲んだようにしみてくるその重なりよう、夜の河べりの雑踏など - の美しいこと、それを見てうっとりするだけでもよいの。暴力や激しい修羅場が出てくるわけではなく、夢見る者たちの四夜、でもあるので。
他方で、Robert Bressonの映画はシネマではなくシネマトグラフで、動いているのは俳優ではなくモデル、というところから始まっている。 例えば料理をお皿として、食材を原料として置き直したところで(ちょっとちがうか)、お料理の味が変わるのか(結構変わると思うよ)、というと、Bressonの映画の場合、映画の見方を根本から変えてくれるくらいにおもしろく変化してくれるので、とりあえずパンフレットだけでも買って読んでみると深まるのでは、とか。
画家志望のJacques (Guillaume des Forêts)はヒッチハイクで郊外に出かけて、発散というより悶々として戻ってきた晩、ポンヌフの橋のたもとで靴を脱いで身投げしようとしているMarthe (Isabelle Weingarten)を見かけて助けて、明日の晩もまたここで会おうって約束して、そこから始まる四夜のお話し。
Jacquesは携帯型のテープレコーダーに自分にとっての理想の出会い、みたいのをぼそぼそ語って、それを再生しながら絵を描いたりしているのだが、友人をアパートに招いて絵を見てもらっても、自分の絵や出会いのイメージを理解してくれる人なんて現れそうにない。
Martheは、離婚してひとりの母親の家に母と暮らして、そのうち一部屋を下宿人に貸しているのだが、新しく来た下宿人の部屋に積んである本をみたり、彼に映画に誘われて、最初はそんなでもなかったのだが、段々惹かれていって、互いに離れ難くなってきた頃に、下宿人はアメリカに留学するので1年待ってほしい、必ず戻ってくるから、と告げて消えてしまう。
JacquesがMartheに出会ったのは、下宿人が戻ったということを知っても連絡がないのでもう先はないのか、ってMartheが死のうとした晩で、JacquesはMartheに諦めないで手紙を書いてみれば、と言って励ましたりするのだが、そうしているうちにJacquesはMartheを好きになってしまったことに気づく。
最初の晩で出会ってすくいあげて、2日めの晩で過去からを振りかえって今がどうなのか、なんでそうなのかを確認して、3日めの晩で好きになっちゃったかも、になり、4日めの晩でMartheはJacquesの想いを受けいれる…と思ったら、のどんでんがあって夢から醒める、そんな4日間のふわふわ落ち着かない橋の上の日々、橋の下では船が楽しそうに流れていく。
Martheは戻ってきた彼のところに駆け寄ってキスをして、その後Jacquesの方にも戻ってきてキスをしてそのまま向こうに行ってしまう。
Jacquesについてはその後のことも少しだけ描かれて、彼は変わらずテープレコーダーにぶつぶつ吹きこんでいて、夢から醒めていないのかもしれない – でも勿論、醒めていようがいまいが、恋は続いているように見え、でもその恋が、どんなものなのかは描かれずに多分くすぶった状態のまま、それはBressonの他の映画で主人公たちが抱えこんでいる色を失った/黒めの何かと同じようなー。この映画はその際どい境い目のようなところを捕えようとしているような。
「俳優」ではなく「モデル」なので、この辺の「魂がこもって」いない、浮ついて彷徨っていくかんじがとてもよいの。
Jonathan Rosenbaum氏がエキストラとして映っているそうで - “Two Nights of an Extra: Working with Bresson” - エキストラとして夢のなかを彷徨う、というのがどんなかんじなのか、などがわかっておもしろい。
3.24.2025
[film] Quatre nuits d'un rêveur (1971)
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