3.03.2025

[film] Picnic at Hanging Rock (1975)

2月14日、金曜日の晩、BFI Southbankで見ました。

いま公開50周年を記念した4Kリストア版が全英でリバイバルされているが、その少し前のひと晩だけの公開で、なぜかというと、映画で描かれる事件の起こったのが1900年の2月14日だったから、と。50年前と125年前。

原作はJoan Lindsayによる同名小説(1967)をCliff Greenが脚色してPeter Weirが監督した。実際に起こった出来事にインスパイアされてはいるが、元は小説で、フィクションである、と。(“Virgin Suicides” (1999)もその傾向があるけど、勘違いしたがる人が多いのはなんでなのか?)

全体としてものすごく変で奇妙な映画。 1900年の2月14日、オーストラリアのビクトリア州の女学校で校長らしき女性が、Hanging Rockにピクニックに行きます、と宣言して、喜ぶ娘も少しいるが行けないでひとり残される娘もいる。引率の女教師を含めて白い服を来た女学生たちはみんなで馬車に乗って休憩したりしながら岩に向かう。どこが遠足の到達点なのかわからないのだが、Miranda, Marion, Irma, Edithの4人が集団から少し離れたところで英国人男子とすれ違って昼寝をして、起きあがるとちょっと夢遊病のようなかんじで3人が岩の隙間に歩いていって、それを見ていたEdithが絶叫して逃げだして – 何を見たのかなんで叫んだのかは明らかにされない - それを見た引率のMiss McCrawが彼女たちを探してやはり岩の向こうに消えて..  描かれて説明される失踪の顛末はこれだけで、あと冒頭にMirandaの声で”a dream within a dream…”という呪文のようなナレーションが入る、くらい。

その後は、地元の人たちも含めた何度かの捜索が行われて、少女たちが着ていたと思われる布の切れ端が見つかったりするが、なにも出てこない。そもそもHanging Rockがどういう土地(岩)で、なんでそこに遠足に行くことにしたのか、捜索はどこまでどんなふうに行われて十分だと言えるのか、とか失踪ものに不可欠な状況とか理由とか説明とかがあまりになさすぎて、反面、ぴょろろろーっていう笛の音とかまぶしい空とか、空のかんじ、岩のかんじは何回も出てきて、なにも説明されないホラーの黒とか赤とか闇がやたら怖くなるのと同じように、ここでの白さ、陽の光と透明さは事件の不気味さ不吉さをぐるぐるかき回していって、失踪した少女たちがとらわれたのと同質のなにかに巻きこみに来ているかのよう。

他方で、これはべつに謎解きでもなんでもなく、ただ少女たちが岩場のどこかにいなくなって見えなくなってしまった – 気がついたら125年が経っていました、というだけの話で、ちょっと気持ちわるいけど、かわいそうだけど、なにもできることはないー、という話。そうして見ると、校長も地元民も若者たちも、なにも「外側」からはどうすることもできない、理解しようがない、そういうこともある、というだけのー(無理しない)。

あと、消える側からすれば、あんなふうに消えてしまうことができたら、というのはあるかも。古本屋とか美術館であんなふうに忽然と消えてしまえたら、というのはよく思うしー。

リストア版は、例えば古いフィルムが持っていた傷みとか色褪せとかをぜんぶきれいにしてしまったので、彼女たちの着ている白が異様にまぶしい白さで迫ってきて、より非現実的な魔法のようなリアリティを実現している。David Hamiltonの、あのソフトフォーカスの世界が見事な解像度で。

で、この後にIMAXに”Captain America: Brave New World” (2025)を見に行って、とってもたいへんつかれたの。

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