3.17.2025

[film] Mickey 17 (2025)

3月8日、土曜日の昼、BFI IMAXで見ました。

この日は帰国の前日で、あれこればたばたの中、見ようかどうしようか直前まで迷っていた。

世界中でものすごくお金かけていっぱい宣伝しているし、”Parasite” (2020)でオスカー作品賞監督となったBong Joon-hoが世界にうってでる英語作品 - でも内容は予告を見る限りどう見たってB級アクションだし、でもそこは本人が一番よくわかってやっているのだろうし、公開が一年延期となったのはなんかあるのか、などなど。

原作はEdward Ashtonの2022年の小説”Mickey7”をBong Joon-ho自身が脚色、撮影はDarius Khondji。

舞台は今から30年後、2054年で、宇宙移住計画を推進するキャンペーン中の政治家Kenneth Marshall (Mark Ruffalo)がいて、借金で首が回らず将来になんの希望も持てないMickey (Robert Pattinson)と友人のTimo (Steven Yeun)はこの計画のコアとなる宇宙船の乗員に応募して別の星に移住しようと考える。ただ、応募が殺到していたこともありMickeyの身分は"Expendable"という、生体情報と記憶をぜんぶコピーされて、何度でもリプリント可能な人体を提供する、地球では禁止されているやつ – 要は放射能で焼かれたり大気中のウィルスの耐性を試されたり、危険なミッションを遂行するためのブルシットの使い捨てで、そうやって何度死んでも何度でも再生されて、彼のバージョンは17人目まで行って、Timoを含めていろんな人から「死ぬのってどんなかんじ?」って聞かれるのだが、Mickeyはへらへらしている。のだが、そうしながらも乗組員のNasha (Naomi Ackie)と恋におちたり。

4年間航行して、船はNiflheimっていう雪に覆われた星に着いて、その地表にはクマムシ – ダンゴムシ - ナウシカの王蟲みたいな”Creeper”って呼ばれる生物がうようよいて、そこの探索中に17人目のMickeyは谷底に落ちて死んだ.. と思われたのだが彼はCreeperに救われて船室に戻ってきて、そうしたらそこには(17は死んだとみなされて)リプリントされたMickey18がいたので大騒ぎになるの。

まずクローンの"Multiples"は御法度で見つけたら殺す、ってMarshallが公言しているからか、Mickey18は17を殺そうとするし、Nashaに対してふたりは恋敵になるし、でもどっちかが生き残ったところで、そこにどんな差とか意味があるというのか、だし。

TrumpとMuskを足して割ったような低能傲慢ファシストとその妻で性悪の妻Ylfa (Toni Collette)が、彼らを支援するインチキ宗教団体と一緒になってクローズドな宇宙船内でやりたい放題している、というわかりやすく生々しいディストピアを背景に、生と共生(or 寄生)、アイデンティティ、できれば愛の可能性も探る、なんていうテーマを設定できないこともなさそうだが、それって地球から隔離された宇宙船の中、という設定の段階でどうすることもできない暗箱になっている(or うんざりするくらい「今」すぎて嫌だし見たくないし)ので、実際には壊れたロボットみたいにぼそぼそ喋るMikeyの佇まいとか、できれば小さめのを一匹ほしいなCreeperとか、そっちの方に目が向いて、なんの深い感慨もなしに終わってしまう。正しいB級、にできるかどうかすらわからないジャンクなのだが、雪原の中もじょもじょ動いていくCreeperの大群の影はなんかよかった。

人体破壊→リプリント、のようなテーマであれば、David Cronenbergがあたりがもっと生理的にねちゃねちゃリアルにやってくれるものだと思うのだが、この作品の視点はどちらかというと、使い捨てOKで代替可能な身体とか、Creeperとか(昔だと)Okjaみたいな生贄にされる異形生物のありよう、みたいな、どちらかと言うと社会寄りのところにあったりするのでどうかしら?

完全無欠で最強のヴァンパイアをやっていたRobert Pattinsonが、ここまで廃れてへたれた底辺労働者をやる - どちらも不死であること、あと社会的に不可視である、というところが同じ - というのはなんかおもしろいかも。”Parasite”から続く無産者たちのお話し。

日本のキャンペーンでは、あの人工肉プレート試食は必須。あとCreeperのぬいぐるみほしい。

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