3.02.2025

[theatre] Much Ado About Nothing

2月26日、水曜日の晩、Theatre Royal Drury Laneで見ました。
原作はこないだ映画“Anyone But You” (2023)にも翻案されていたシェイクスピア (1958-1959)の。邦題は『空騒ぎ』。

演出は年末に同じ劇場で見たSigourney Weaver主演の”The Tempest”と同じくJamie Lloyd (一部のキャスティングも被っている。どこかで繋がっているのかシリーズなのか?)。

Tom Hiddlestonの芝居を見るのは2回目で、前は2019年にHarold Pinterの”Betrayal”を見ている(この時の演出もJamie Lloydだった)。 ものすごく舞台映えのする俳優だと思うし、今回はコメディだというので。

えーでも、自分が見たいと思う演劇にみんなで歌って踊って楽しくしゃんしゃん! みたいな、温泉街の余興みたいな(←偏見)のは余り求めていなくて、でも今回のこれ、Tom HiddlestonとHayley Atwellが真ん中にいてまさかそういうのだとは思わないじゃん、でもそういうので、でもこれは許すかー、になった。

劇場の中に入るとバリバリのライティングのもとダンスミュージックががんがん掛かってて(どこかにDJもいたのか?)、でもEDMみたいにハードでごりごりのじゃなくて、お年寄りにも馴染めるエモっぽい90年代頃のダンスミュージックで、とってもあざといとこを狙っているかんじ。

巻くが開くとぎんぎらのMargaret (Mason Alexander Park - この人、”The Tempest”ではArielを演じて歌っていた)がマイクを片手に演歌歌手のように歌い出し、桜吹雪が舞って、登場人物たちも全員マイアミとかリゾートにいるようなチンピラかひらひらきらきらの衣装を纏い、この「ノリノリ」の狂躁状態の中で全員が恋をしなくちゃ踊らなきゃ! みたいなアホウになっていて、それは恋でもしなけりゃやってらんない、というのと恋だの結婚だの、そんなのばっかりやってらんない、の両方があって、その流れのなかで、Hero (Mara Huf)とClaudio (James Phoon)は簡単に恋に落ちて結婚することになり、Beatrice (Hayley Atwell)とBenedick (Tom Hiddleston)はあいつとだけはイヤだ、みたいな犬猿の仲になり、でも全体としてはみんなハッピーで、ハッピーでいるためにそうしているのだ、のヤク中のノリというかお約束の世界。

登場人物たちは全員が舞台の上に椅子を並べてずっといて、踊っているかやかましい音楽のなかで会話していて、全員がヘッドマイクを装着していて舞台の奥にいても話している内容は同じ音量レベルで聞こえて、たまに頭だけ被り物 - ワニとかパンダとかブタとかタコとかかわいい - をして、要は誰もヒトの顔と目を見て言うことなんて聞いちゃいないけど、自分がどう言われているかだけは地獄耳になっていたり。

音楽はDeee-LiteとかBackstreet Boysとか”Gonna Make You Sweat (Everybody Dance Now)”とか、懐メロであるがヒトをのせたりのせられたりのBGMとしての殺傷力はたいしたもので、そういうのにのって、ClaudioはHeroの不貞を簡単に信じてしまうし、独身を貫く! とか偉そうにほざいていたBenedickはBeatriceとあっさり恋におちてしまう。

この軽薄さのラインの際どいこと、なので下手な俳優が演じたら簡単に化けの皮、なのだが、Tom Hiddlestonは”Loki”だったのでこの辺がめちゃくちゃ巧いし、Hayley AtwellはCaptain Carterだったので - 理由になってないけど - このふたりの舞台上の相性がめちゃくちゃよくて楽しい - 一瞬ふたりのAvengers姿がハリボテで登場したり。

冒頭からノリノリで走っていった1幕目に対して、2幕目は最初から落ち着いた、やや内省モードになってそれぞれが少し立ち止まって考えたり、そしてそこからすべての収束〜一件落着に向かって弾けまくる - とてつもない量の桜吹雪エンディングまで、多幸感という言葉はあまり使いたくないけど、くやしいけどそういうのがくる。

これならフルバンド入れてかっちりとしたミュージカルにしても、と一瞬思ったが、たぶんこれくらいのスカスカでよいのかも、と。だってこれは「空騒ぎ」で、恋なんてその程度のもんでしかないのだから、って。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。