3.12.2025

[theatre] Three Sisters

3月3日、月曜日の晩、Shakespeare's GlobeのSam Wanamaker Playhouseで見ました。雛祭りの日なので三人官女(ではない)。

これ、2月に見た”Cymbeline”と同じシアターで交互に? 週替わりくらいで上演していて、セットとか結構違うのに大変では、と思ったのだが、シアターの仕様が特殊すぎるのでそんなに難しくないのかも - わかんないけど。

原作はチェーホフ(1900)で、理由は知らぬがここでチェーホフが上演されるのは初めてだそう。演出はCaroline Steinbeis、翻訳/脚本はRory Mullarkey、チェロを中心としたシンプルな演奏は3名構成。

”Cymbeline”のセットには骨が貼られたりしていたが、こっちは花で、特に1幕目は正面上部に花文字で”IRINA”ってでっかく掲げられていて、”IRINA”の結婚が彼女たちにとってひとつのテーマであることがわかる。

上演開始前からMasha (Shannon Tarbet)は黒い服を着て舞台の隅にじっと座って本を読んだりしていて、長女のOlga (Michelle Terry)はいかにも教師、という緑と白のかっちりした衣装で、冊子を抱えててきぱき行ったり来たりしている。そして末妹のIrina (Ruby Thompson)は白を纏って彼女が登場するだけで場が明るくなる、そんな三姉妹で、まずこのばらばらに見えるけど素敵に色分けされた衣装の3人が並んで舞台にいるだけで、ちょっとかっこいいバンドを見ているかんじになる。

他には姉妹から大事にされている兄弟Andrei (Stuart Thompson)とか彼の妻でOlgaとは別の意味できりきりしゃきしゃきしているNatalya Ivanovna (Natalie Klamar)とか、唯一結婚しているMashaの夫Fyodor Kulygin (Keir Charles)の - 教師だからしょうがないのか - しょうもない凡庸さとか、なにを言ってもやっても怒られたり無視されたりちょっとかわいそうな老家政婦のAnfisa (Ishia Bennison)とか、なんだかんだ三姉妹の傍にいたがる馴染みの老医師Ivan Chebutykin (Peter Wight)とか、あとはなにがしたいのか家にずっと居たり出入りしたりしている兵隊たちのよくわからない挙動とか。

みんなが今の暮らしに満たされていないもやもやを抱えつつ、Irinaの結婚(がもたらす何か)に僅かな望みを繋いでいて、それは過去の一家の栄華とモスクワでの暮らしに繋がっていて、「モスクワ」の単語が出るだけでその場が少し明るくなる不思議、があったりするのだが、そんな期待が内側外側それぞれの事情でどんよりと曇っていく、それと共に舞台上の蝋燭 – このシアターの照明で、本当に火が点いている – の火が消されていって、幕の終わりの方はこれまで見たことないような暗さ、暗がりに向かう中で劇が進行していく。

2幕目は、一家の屋根裏部屋のようなところにいる姉妹たちの周りで、それぞれに家庭に絶望しているAleksandr Vershinin (Paul Ready)とMashaが近づいて – いややっぱりだめだわ、になり、Andreiの賭博が問題になり、近くで火事が起こって、Irinaの結婚問題も夢や理想を追っても.. の辺りに落ちて、人々はばたばた動きまわるのだが、全体としては停滞と諦めの霧が次第に濃くなっていって、最後はIrinaの婚約者が決闘で亡くなってしまうのだが、もちろん誰にもどうすることはできないことばかりで、やっぱ自分たちでどうにかしていくしかないよね、って決意して終わる。

いろんな人が現れては消えてつつ勝手にいろんなことを言って、でも全体としては停滞したまま丸ごと沈んでいく… というチェーホフの芝居をシェイクスピア的な小世界の空間に展開してみたら、ということなのか… と思ったが、ショートコントみたいな芝居が次から次へ流れていくばかりでやや落ち着きはよくなかったかも。3姉妹はとても素敵で魅力的で、見ていて楽しかったのだが。

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