2.17.2025

[theatre] Oedipus

2月8日、土曜日にOld Vicのマチネで見ました。

昨年末に見た”Oedipus”は、Robert Icke演出、Lesley ManvilleとMark Strong主演だったが、こちらの演出はHofesh Shechter (振付も)& Matthew Warchus、翻案はElla Hickson、主演はRami MalekとIndira Varmaで、話題の舞台であることは確かなのだが、それよりも、この後、同日の晩に見た”Elektra”と合わせて、なんで今、こんなにもギリシャ悲劇なのか、は考えてみる価値があるかも。1時間40分、休憩なし。

現代都市における選挙戦〜キャンペーンというイベントを軸に市民大衆とのやりとりを背景に置いたRobert Icke版に対して、時代も地域も昔のギリシャっぽく、民衆はOedipusを熱狂的に支持しつつも干魃に苦しんでいて、よき施政者であるOedipusもその対応に頭を痛めている。

でもこれ、上演時間の半分(ほどでもないか)くらいがダンス、というか舞踏とか群舞のパフォーマンスなのよね。民衆の怒り、苦しみ、歓び、などをダイレクトに表現する様式としてダンスがあるのはわかる。わかるけど見たいのはそこではないわ、になる。パフォーマンスとしてのダンス、という点では、群衆の勢いを示す舞いなので一糸乱れぬ完成度とかスペクタクルとして見せるものではなくて、ライティングもバックの音楽もそこらで拾ってきたかのように雑でてきとーで、これなら映像を使ったりした方がマシだったのでは、とか。

なので、肝心のOedipusとJocastaが「がーん」てなるシーンもやや薄まってしまった感があり、でも最後は恵みの大雨が来てみんな歓んでいるのだからそれでよいのか、になってしまう。それでよい - 権力者の悩みなんてどうでもいい、のドラマなのだ - と言ってしまってよいの?

ただ、真ん中にいて悩んだり立ちすくんだりするRami Malekの表情 - 冒頭は彫刻のような彼の顔が背景に大写し - 立ち姿はやはり見事なものであった。


Elektra

2月8日の晩、↑の後にDuke of York’s theatreで見ました。

Captain Marvel = Brie LarsonのWest Endデビュー作。原作はSophokles* (原作者名もタイトルも”c”にxをして”k”に置き換えている)、翻案はカナダのAnne Carson 、演出はDaniel Fish。休憩なしの75分 - パンクだから短い。お芝居のハシゴをして休憩なしが続くのは珍しいかも。

会場に入ると、ステージ上では掃除機みたいな投光機みたいな、複数の機械がゆっくり同じ方向にぐるぐる回っていて止まらない - 止めることができない。

ステージに現れたElektra (Brie Larson)は七部刈りくらいのショートでBikini Killのタンクトップを着てハンドマイクを手にしたパンクシンガーで、ずっとマイクを手に客席に向かって吠え続け、たまに足下のエフェクターを踏みこんでその叫びを爆裂させる。声が彼女の武器となる。特に感情 - 特に怒りの。

初めの方は父が殺されたことについて、舞台の少し奥の方で揃ってなにやらひそひそ歌っている女性たちに対して、やがては陰謀に加担していると思われる母Clytemnestra (Stockard Channing)や弟Orestes (Patrick Vaill)や妹Chrysothemis (Marième Diouf)に対して、死の真相やだれがどうして裏切ったのかなんてことよりも裏だの陰だのでやらしくごちゃごちゃ言いやがって、おとなしく黙ってると思うなよ - 表に出てこいざけんな、って。結局、これらに対する物言いは権力とか女性とか家父長制とか、自動で動いていって止められない「システム」のようなところに集約されていって止まらなくて、そういうのに対するいいかげんにしろ!をぶちまけて終わる。

Brie Larsonさんは、先週土曜日朝のBBCのSaturday Kitchenていうお料理番組(大好き)にゲスト出演していて、お料理の腕前はふつうっぽかった(包丁を握るところまで)が、今回のWest End出演については、最初は毎日同じセリフの同じ舞台を何カ月も繰り返すのなんてありえない、と思ったけど、いまはものすごく楽しい、って。また演じに来てほしい。


どちらの劇も「ギリシャ悲劇」というかんじはあまりなくて、悲劇の土壌となる権力とか民衆の居場所、のようなところにフォーカスしたメタ悲劇のようで、今ってそういうものが求められているのかも、というのは演劇を見るようになってからずっと感じている。

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