2.14.2025

[film] Duel at Diablo (1966)

2月7日、金曜日の晩、BFI Southbankの特集 – “Black Rodeo: A History of the African American Western”、で見ました。

これも35mmフィルムを米国から取り寄せての上映だよ、とのこと。邦題は『砦の25人』。
監督はRalph Nelson、原作はベストセラーになったというMarvin H. Albertによる1957年の小説 - ”Apache Rising”。

Sidney Poitierの初の西部劇、ということで、でも彼は主演ではないし、”African American Western”というカテゴリもちょっと違うかも。

敵も味方も沢山人を殺したり殺されたり、(いっぱい人が亡くなってほぼなんも残らん、という点では)惨い映画で、でもなんで? なにがそんなに惨いのか、をいろんな角度から考えさせる内容のものだった。決してつまんない、というのではなく、ごちゃごちゃ深くてすごい、という。

焼き殺された死体が吊るされている砂漠を馬で渡っているJess (James Garner)がいて、彼は遠くのほうに馬で砂漠を渡りながら馬と一緒に死にそうになっていた女性とその向こうに彼女を追っているアパッチを見て、アパッチを追い払って彼女を助けて町に連れて帰る。

その女性Ellen (Bibi Andersson)はその町の実業家である夫のところに戻るのだが、アパッチにさらわれて彼らの子供を産んだらしい彼女に夫も世間も冷たくて、Jess自身もその直後に自身のアパッチの妻を殺されたことを知り愕然とする。ひとりになったJessは再会した旧知の陸軍中尉のScotty (Bill Travers)から、砂漠で孤立している部隊に水を届けるミッションに誘われるのだが、とてもそんな気分にはなれない。無理やり砂漠に出されたScottyの部隊は25人の兵しかいなくて、でも砂漠を行くなかアパッチの襲撃は当然来て、そこに元軍人で馬商人のToller (Sidney Poitier)が加勢したり、アパッチから赤ん坊を奪い返した後のEllenとJessも加わるのだが、土地をよく知っているアパッチのが断然有利で水を断たれた部隊は次々にやられていって…

砂漠のなかでの戦いの過酷さや虚しさもあるのだが、それ以上にアパッチやTollerに対する差別偏見、Ellenに対するミソジニーなどが目の前にきて、それらがだんだら模様になって、銃撃もあるのだが、背後からすとんって弓矢でやられてお尻や背中に刺さってくる痛さ、がやってくる。砂漠の熱さと喉が渇いてからからのなか、なんのために戦うのか、という問いがやってきて、虚しいというよりこんなのに勝ったところでどうする、になる。(人によってはとにかく勝ったんだからぜんぶ自分のもん、て喜ぶかもだけど…)

TollerとJessのコンビは素敵だし、EllenとJessはやがて一緒になるのだろうが、60年代の西部劇で単なる原住民 vs. 開拓者・征服者の構図以上の、ベースにある(内側に当然あったはずの)他者への偏見や蔑視の構図を串刺しで見せていた、というのはすごいな、と思った。


The Learning Tree (1969)

2月5日、水曜日の晩、”Architecton”を見た後に、BFIの上と同じ特集で見ました。 邦題は『知恵の木』。

写真家として知られる(ずっと写真家だと思っていたわ)Gordon Parksが、自分で書いた半自伝小説を元に脚本を書いて監督してプロデュースもして、音楽まで自分でやってしまった作品。
アフリカン・アメリカンの監督が最初にメジャースタジオ(ワーナー)と契約して作った映画でもある、と。

1920年代のカンサスの田舎町で、主人公の少年Newt (Kyle Johnson)は勉強もできるよいこだったが、仲間達と一緒に近所のリンゴ園の木からリンゴを盗ってそこの主人を少し痛めつけたりしたら、差別主義まるだしの警官に仲間が簡単に撃ち殺されたり、別の仲間は牢屋に入れられたり、いろんなことを経験し(散々な辛い目にあっ)て少しづつ大人になっていく。きれいな構図と風景と、大人になるにつれて見えてくる人種差別の泥沼のコントラストと、それでも前に歩もうとする主人公の強い眼差しと。

時代もトーンもぜんぜん違うけど、これが50年以上経つと”Nickel Boys” (2024)のようになるのか。
共通しているのは、アフリカン・アメリカンの子供の命なんて簡単にどうとでもできる、と思う白人男たちの救いようのない軽さ、傲慢さ。

これがいままた復活しようとしている…(吐)

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