1.31.2025

[film] Presence (2024)

1月28日、火曜日の晩、Picturehouse Centralで見ました。

Steven Soderberghの新作、脚本をDavid Koeppが書いていて、昨年のSundanceでプレミアされた。
びゅうびゅう吹いてくるだけの予告がなかなか怖そうで、幽霊ホラーぽかったが、実際にはそんなに、ぜんぜん怖くなかったかも。85分。

冒頭、どこか(NJらしい)の古い、木造の大きめの家のなかの描写 – がらんとしていて引っ越された後なのか引っ越してくる前なのか、やがてそこに不動産屋と思われる女性が入ってきて、その後に物件を見に来たと思われる家族がやってきて、部屋や備え付けの家具 – 大きな楕円の鏡がある – を見て、夫と妻はローンのことなどで少し議論するが、次のシーンでその家族はそこに越してきて暮らしている。

カメラは家のなかをスムーズに動きまわり、窓辺に立って外を眺めたりするものの、家の外に出ることはない。その動き – 立ち止まるところ、その高さ、視点 - 目がとまるところ - などが一貫していることから、これはこの家にずっといる何か、誰かひとり、何かひとつの目線なのだな、というのがわかって、更にはタイトルとか既に知っている情報から、ふつうにずっとこの家にいる幽霊のそれだ、というのは簡単に導きだせる。

家族は力強いRebecca (Lucy Liu)と優しく受けとめるChris (Chris Sullivan)の夫婦と、水泳をやっていて学校の人気者らしいTyler (Eddy Maday)とちょっと不安定にみえるChloe (Callina Liang)の子供たちの4人で、RebeccaはTylerを溺愛していて、ChrisはChloeのことを気にかけている。 特に異様なところがある、そういうのが出たり取り憑いたりする - とは思えないごくふつーの人たちのようで、やがてカメラ(それ)は自分の部屋にいるChloeのことをよく見ていることがわかってくる。

そのうちChloeの部屋で、ベッドの上に置いておいたものがシャワーから出たら片付けられていたり、ものが突然ぜんぶ落ちたり、といったことが頻発して、Chrisの伝手で幽霊が見えるらしい女性に来てもらったりするのだが、彼女は家に入るなり... で、家族もこの家にはなんかがいてやばいかも、ということを意識するようになる。

でもTylerの同級生で下心ぷんぷんの不良のRyan (West Mulholland)が家に来た時、Chloeの飲み物に薬を入れたのを「それ」が妨害するシーンがあって、住人に悪さをする幽霊のようではなく、どちらかというと見守り系、そこにいるだけの奴なのかも、とか。

やがて週末に泊まりで父母が出て行ってしまうと、兄妹のところに好き勝手やったれ、って悪いRyanが泊まりにやってきて…

そこによくわからない何かが写っている、とか、なにかがいる/いた気配がある、ってそれだけで十分怖いものにすることができると思うのだが、あんまり怖いかんじがしないのは何故なのだろうか? あまり怖がらない、っていうのもあるけど、無理に怖がらせようとしていない、悪意殺意があるわけでもないし、ただそこにいる - Presenceだけ、その透明なありようを示して、それだけ。それでよいのかもね… ってなったところであの終わりが来たので少しびっくりしたり。

ただいるだけ系の幽霊話だとDavid Loweryの“A Ghost Story” (2017)を思いだしたけど、あの、変に切なく迫ってくるものもないし。

これ、Lucy Liuを真ん中にした方がおもしろいものになったのではないか? とか。

これ、おなじ予算(2百万ドル)を黒沢清に渡して同じ設定でなんかやらせたら、簡単にこれの百倍怖いのができると思うけどなー(ってみんな思う)。


R.I.P. Marianne Faithfull..  “Faithfull: An Autobiography” (1994)が出た時、まだ57thにあったRizzoli Bookstoreでサイン会があって、サインしてもらった。すごく柔らかくて素敵な人だった。ありがとうございました。

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