1.19.2025

[theatre] The Invention of Love

1月9日、木曜日の晩、Hampstead theatreで見ました。

原作はTom Stoppardの1997年の戯曲、演出はBlanche McIntyre。休憩入れてほぼ3時間。

舞台は一番下の客席と同じレベルの底にあって多くは同じ目の高さか見下ろす形、ぺったんこに黒の渦巻きが描いてあってなにもなくて、背後の壁が突然開いたり、ゆるやかな川になったりひとつ上のレベルの通路を人が通っていったりディスプレイになって投影されたり。

冒頭、舞台が明るくなると真ん中にクラシックな背広を着た丸っこいSimon Russell Bealeが立っていて、そこに(三途の川を渡る?)ボートと黒づくめの使者がやってきて、これに乗って死の世界に向かうことはわかっていて、彼は余裕でそれに乗り込んでゆっくり移動しつつ過去を振り返っていく。

英国の古典学者で詩人のA. E. Housman (1859-1936)の生涯や世界観、人々との出会いと成長について、老いて亡くなろうとしている彼をSimon Russell Bealeが、Oxfordに入学して間もない、まだぴちぴちの彼をMatthew Tennysonが演じて、19世紀の終わり頃の英国で、出会った人々との対話、大学での進路をめぐるあれこれ、成長と挫折、Moses Jackson (Ben Lloyd-Hughes)との儚い恋、などと共に追っていく。

実在の人物も沢山でてきて - 知っているのはJohn RuskinとかWalter PaterとかOscar Wildeとかくらい - 彼らが自身の知見や学説を当時の社会・政治情勢も含めて語るところもあったりするので英文学やラテン語や古典をある程度知っていないときついのかー、という気もするのだが、劇中で登場人物が語ったり議論したりする内容はそんなに厳密なものではないらしいので(←いや、わかんないけど)、ややひねくれて難しめの学園青春ドラマ、のように見ることもできるのか、な?

Housmanが学友たちと遊んだり議論したりする時は脚にコロコロの付いた木枠の乗りものに乗った彼らひとりひとりが軽快に滑り出てきて、3人くらいでそれらを金具で合体させると一艘のボートのようになって(楽しそう)、それに乗って議論したりする … Oxfordだからか。

そうやって学業の道に進むべく研鑽を積んでいくのだが、常に厳格さ厳密さ、真摯な探究を求められるアカデミアの世界の他に、彼は精神の自由や柔らかさが求められる詩作も愛して、書き綴ったものを冊子に纏めていて、このどちらも続けたいし止められない、ある意味真逆の方向性を持った世界をどうやって渡って、もしくはどちらかを選んだりしていけばよいのか? - で、ひょっとして、こういう分裂した魂のありようをどうにかするのって、それこそが愛、なのでは.. そんなInvention of Love?

そして、そんな統合を成し遂げて生き延びているスターのような人物として最後の方に現れるOscar Wilde (Dickie Beau)の貫禄、というかオーラ - ちょっと少女漫画ふうに美化しすぎでは、と少しだけ思った。

構成がやや平板で長く感じられて、もうちょっと波とうねりとか、啓示のようなものがあっても、と少しだけ思ったが、Simon Russell Bealeの立ち姿、ホビットのようななんとも言えない丸さと落ち着き、貫禄がすばらしく、それを見れただけでもよいか、って。

できれば、字幕つきので倍の時間をかけてもう一回見たい。

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