1月7日、火曜日の晩、BFI SouthbankのLuchino Visconti特集で見ました。
4Kリストア版のUKプレミアだそう。 前回にこの作品を見たのもBFIだったかも。同じドストエフスキー原作 (1848)で、もうじき4Kリストア版が日本でもリバイバルされるブレッソンのも(ぜんぜん別物だけど)よいが、こちらも大好きで、これまでに見た(大して見てないけど)Visconti作品のなかで一番好きかも。英語題は”White Nights”、邦題は『白夜』、イタリア=フランス合作で、ヴェネツィアで銀獅子を受賞している。音楽は Nino Rota。
原作の19世紀ペテルブルク、ではなくイタリアの港町リヴォルノ(場所はほとんど動かず、全編スタジオ撮影だそう)の、寒そうな冬の夜、町に来たばかりらしいMario (Marcello Mastroianni)が、人(含.犬)恋しそうに誰かを探していると、橋の袂でしくしく泣いているNatalia (Maria Schell)を見つけて、声をかけようとしたら彼女は逃げだし、しばらくはその追いかけっこ - なんで彼はそんなに彼女に執着するのか、なんで彼女はあんな懸命に逃げようとするのか、こんなに凍える晩に - がひたすらおもしろかったり謎だったり。
バイクに乗って彼女をひっかけようとしたちんぴら二人組をMarioが追い払ってから、Nataliaは少し打ち解けて、Marioに自分はなんでそんなことをしているのかを話し始める。下宿屋をしている自分ちの戸口に突然現れた運命の男 - Jean Maraisに彼女は一瞬でやられて運命の人だ! って恋におちて、彼が同じ屋根の下にいる間はすべてが夢のようで、でもやがて彼はここを出ていかなければならない、1年待ってほしい、1年したら戻ってくるから、と告げていなくなり、彼女は約束した橋のところで毎晩彼が帰ってくるのを待っているのだと。
Jean Maraisの忠犬ハチ公のようになってしまった彼女をかわいそうに、って笑ってあげることは簡単だが、Marioにはそれができないの。なぜなら彼もまたNataliaと同様に、彼女にやられてしまって、彼女の泣き笑いする一挙一動から目を離せなくなってしまったから。こればっかりはもうどうしようもないし、Marioにできることと言ったら聞きたくもないNataliaの信仰にも近い止まらない愛の吐露を傍で聞いてあげることで、でもそうやっているうちに彼女が少しづつMarioの方を見てくれるようになってきて..
そうやって凍える夜の追いかけっこも含めてなにをやっているんだろ?の愛のどうしようもなさと面倒さが極まったところで突然降ってくる雪の奇跡 – ほらね、でも、そらみろ、でもないただふわふわと降り注いでくる白い光の渦に歓喜する彼女の姿を見ると、もう結末がどうであろうが、彼女があんなふうに笑ってくれただけで十分ではないか、になるの。 主人公たちそれぞれの境遇と来るべき運命をこねくりまわすViscontiぽいドラマのありようから離れて、すべてをもうお手あげ! きれいすぎる! にしてしまう白い夜の白い雪。
登場人物の序列でいうと明らかに神のように威圧的に(最後にすべてかっさらっていく)天辺にいるJean Maraisがいて、彼に振り回されるMaria Schellがいて、おろおろ落ち着きのない青年Marcello Mastroianniが底辺にいて、でもこの映画のまん中にいて、この世界を作って持ちこたえさせているのはどう見てもMaria Schellで、それだけで”It’s a Wonderful Life”になってしまうのだった。
あとね、事情もなにも告げないで1年間どこかに消えてしまうような男はやくざに決まっているのでついていかないほうが、って誰か彼女に言ってあげて。
東京に来ているのですが、なにもかもつまんなくてしんでる。
1.15.2025
[film] Le notti bianche (1957)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。