1月1日、元旦の18:40からの上映で、前の“Ossessione”(1943)の後に見ました。
BFIももうちょっとお正月ぽい明るめの映画とかやればいいのに。
前の映画が終わってから次までの約4時間、がらんとしたBFIのロビーの椅子にだらしなく座って、スマホで2024年のベストなどを打っていた。そんな素敵なお正月。BFIのロビーに炬燵とか置いてくれたらよいのにな。
これも今月から始まる特集 – “Sidney Poitier: His Own Person”の最初の1本。なぜSidney Poitierなのか、は昨年末にここであったJames Baldwin特集から繋がってくるものなのか、公開された”Nickel Boys”で彼への言及があるからか。
監督はJoseph L. Mankiewicz、邦題は『復讐鬼』 - でも主人公は復讐鬼に狙われる側なのでこの邦題はよくないと思う。 Sidney Poitierの長編映画デビュー作。オスカーのBest Story and Screenplayにノミネートされたが『サンセット大通り』に敗れた、って(こっちの方が断然すごいと思うけど)。
Dr. Luther Brooks (Sidney Poitier)は郡の大きめの病院で研修医から常勤の医師になったばかりで、上司のDr. Dan Wharton (Stephen McNally)も彼の実力には太鼓判を押しているのだが、本人はまだ十分な自信を持てないでいる。
そんなある晩、併設されている刑務所病棟に、抗争で足を撃たれた兄弟 – Johnny (Dick Paxton)とRay (Richard Widmark)の二人が搬送されてきて、Rayは口だけは達者でLutherに差別的な言葉を浴びせて、こんな奴にかかりたくない、とか騒ぐのだが、それに動じず隣に横たわるJonnyの様子がおかしいことに気付いたLutherが脊椎を調べようとしたところでJonnyは亡くなってしまう(ここのシーンは映らない)。足を撃たれただけなのに突然死んでしまったのは診ていたLutherが殺したからだ、とRayは騒いで、Lutherの上司のDanはLutherの初期の治療対応は間違っていなかった、と言うものの実際には検視をするしかない、となって、でもRayはそれで証拠を潰すつもりだ許さないというし、病院側も騒ぎを広げたくないので静観、になってしまう。
どうしようもなくなったLutherとDanはJohnnyの別れた元妻のEdie (Linda Darnell)に会いにいってRayを説得してもらうようにするのだが、これが逆効果で、彼らの育った白人の貧民街に根をおろしているヘイト感情を思いっきり煽ることになって、黒人居住区を襲撃してやれ、にまで膨れあがる。
この経緯と並行して、疲れて帰ったLutherの実家で、苦労と努力で医者にまでなったLutherをどんな家族が囲んでいたのかが描かれて、でもそんな彼らも白人たちの襲撃計画を知ると先制攻撃を仕掛けてやる、って揃って出て行って大騒ぎになって怪我人が沢山…
そんなごたごたを通して、いろんなことに疲れ切ってしまったEdieをDanのところの黒人メイドがやさしく介抱してくれて、よいかんじになるのだが、突然Lutherは自首してしまう - 自首すれば証拠を確認するために検視をせざるを得なくなるから、と…
最初は平等でなければならない医療の現場に差別の問題が絡んでくる、程度のお話しかと思ったら、差別と貧困に苦しむコミュニティの実情と根深い対立構造にまで踏み込み、更には暴動まで巻き起こし、そこから更に、それでも静まろうとしない憎悪の塊りをえぐってあぶりだす。最後にLutherがRayに言うことの重み。 デビュー当時のSpike Leeがやっていたことを既に軽々と。
ほぼ狂犬のようになってヘイトをまき散らすRichard Widmarkがすごいのは簡単に想像できると思うのだが、それを(内臓を沸騰させつつも)静かに受けとめて持ちこたえて、最後にあんなことを言えるSidney Poitierの佇まいがすばらしい。このかんじ、正しく今のDenzel Washingtonではないか、とか。
終わって、半分くらいは埋まっていた客席から強い拍手がわいた。年の初めによいものを見たわ、って。
1.11.2025
[film] No Way Out (1950)
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