9.27.2024

[film] Le comte de Monte-Cristo (2024)

9月21日、土曜日の晩、Curzon Mayfairで見ました。英語題は“The Count of Monte Cristo”。原作はもちろんアレクサンドル・デュマの同名小説(1844)。
監督・脚本はMatthieu DelaporteとAlexandre de La Patellièreのふたり。このふたりは『三銃士』もやっているのね。

上映時間が2時間53分という長さなのでこんなの無理、って諦めていたのだが、結構長く上映されているところを見ると割と人気があるみたい。この回も20時過ぎからだったのに、近所に住んでいるっぽいおじいさんおばあさん達が、わーわー言いながら見ていた(お茶の間じゃないのでもう少し静かにしてね)。

今年のカンヌでコンペティション外作品として上映されている。

原作はおおむかしにたぶんダイジェスト版の『巌窟王』を読んだ – そんなの読んだとはいわない - 程度なのでどれくらい、の話はむり。
原作に忠実になのか、現代に即した超訳みたなのになっているのかは置いておいて、この日の4本目なのに眠くはならなくて、おもしろかった。

冒頭、燃えている船と海から脱出した船乗りのEdmond Dantès (Pierre Niney)がAngèleという若い女性を助けて、彼女から手紙のようなものを受けとり、それとは別に無事戻ってきたご褒美に船長に昇格されて、つきあっていたMercédès (Anaïs Demoustier)とも結婚まで行くのだが、結婚式の当日に手紙のせいで検事Villefort (Laurent Lafitte)に引ったてられよくわからない濡れ衣着せられて孤島の地下牢に幽閉されて10数年、もう死のうと思ったところで、壁に穴があいて隣の牢にいた太った男 (Pierfrancesco Favino) – あんま神父には見えない - と出会って、彼からいろんなことを、特にモンテ・クリスト島に隠された財宝も含めて – 教わり、生きる希望も湧いたので体を鍛えて、彼が亡くなった時に彼の亡骸にすり替わって島の外 - 海の上に捨てられ脱出することができて、モンテ・クリスト島までたどり着く。財宝を発見するところは、ややちょろくて、それだけ? になるけど。

こうして財宝の富により謎の男 – モンテ・クリスト伯爵に変身したEdmondが実家に戻ってみると、MercédèsはEdmondの横で坦々と彼女を狙っていたFernand (Bastien Bouillon)の妻になっているし、父は失意のなか亡くなっているし、これはもう復讐するしかないな、って検事とFernandとDanglars (Patrick Mille)の3人に狙いを定めて、こいつらのせいでひどい目にされた子供らを自分のところに寄せ、マスクで少し顔を変えて謎の富豪として社交界に出没するようになる。

彼の正体を巡るいろんな憶測やまさか.. がいり乱れ、その土台からしていかがわしい社交界に亀裂を走らせ、その亀裂めがけて復讐の狼煙が、という流れ。

復讐にすべてを賭けるのはよくない、って獄中で諭され、それはその通りと思うものの、あれだけの財力があって他にすることもない、子供たちは勝手に恋などに熱くなったりしている、となったら自分は一途に復讐に向かうしかないか - 片付けて次に向かうためにも。この辺、やたら情念をめらめらさせて吠えたりするのではなく因果の風車が廻るなか選択肢などが整然と並べられ絞られていくのはよかったかも。あっさりしすぎ、って言うひとは言うかもだけど。

他方で、そうやって流れていった果て、最後の決闘のシーンは雷落として嵐を呼んで、もっとどろどろぐしゃぐしゃの地獄絵にしてもよかったのではないか - Johnny Toの復讐劇みたいに。どこまでをトドメとするか、というあたりまで測っていたようなので、物語の流れにはそれなりにはまるのだが、あと少しだけなんか炸裂して木っ端微塵に、すべてを台無しにするくらいの何かがほしかったかも。

この内容なら前後半で切ってリリースしても十分おもしろくなったのではないか、とか。


夕方、映画に行く前にMaggie Smithさんが亡くなったことを知る。
BFIで見た映画は、”Martin Scorsese Selects… “特集からの”The Pumpkin Eater” (1964)で、これにMaggie Smithが出てくるの。主人公(Anne Bancroft)の友人の風来坊みたいな役で、冷蔵庫の上にひょろっとした脚を折り曲げて座り、少し上を向いてその場で思いついたどうでもよさそうなことを喋る - 晩年の彼女のお喋り芸は既にそこにあるのだった。というのもあるけどこの映画、すごいから見てほしい。

彼女は3回ライブで見たことがあって、最初は2017年のBFIでのイベントのトークで、2回めはRoyal Balletの「白鳥の湖」の休憩時間で、話しかけないでください、って顔をして立っていて、3回目は2019年、Bridge Theatreでの一人芝居 - “German Life”。どれもぜんぶMaggie Smithだった。

ありがとうございました。ゆっくり休んで、気が向いたら降りてきてください。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。