9.06.2024

[music] The Magnetic Fields

8月31日、土曜日の晩にNight1を、9月1日、日曜日の晩にNight2を見ました。

4月の頭にNew Yorkに渡ってTown Hallで見た”69 Love Songs” (1999)のリリース25周年を祝って2日間かけてこれを、これだけを全曲演奏するライブがLondonにもきた。

New Yorkのチケットの前売りを取った時はまだ日本にいて、これがNYだけで8日間公演に広がって、更に全米をツアーして、そこから欧州までツアーする(この後またUSで少しやる)規模のものになるなんて誰が予想したであろうか? たぶんリリース当時に聴いていた若者たちがミドルエイジの危機を迎えたりして、ほうらやっぱり状態でやってくるの? などと思いつつ、でもとにかくチケットは取る – NYの時よりは断然取りやすい、けど客は3階まで埋まっていた。

25年前の楽曲たちだし、大勢が集まるスケールの、恋愛ばんざいー って等しくめでたく高揚するような内容のものではなく、聴いたからといって恋愛強者になれるわけでもなく、レコードの順番通りに演奏していくだけで意外性はゼロだし、OASIS25のあれはべつに驚かない(どーでもいい)けど、こっちの25のはちょっと驚く。

4月のNY公演は待望の! だったせいか物販に並ぶ列もすごかったのに対し、こっちのはTシャツ類とCDとバッチくらいで、あんましない。サイン入りポスターももちろんない。

20時過ぎに客電が落ちて、拍手しても出てこないのがとってもStephin Merrittしてて、3回目でなんとか現れる。

メンバーはNYの時は7人いたのに、今回は5人で、なんとClaudia GonsonとJohn Wooがいない。前回ここで彼らを見たとき(2017年9月だった..) - 50 Song Memoir”(2017)のツアーでもClaudiaとかはいなかったので、そういうものなのかも。なので、ヴォーカルはShirley SimmsとDudley KludtとStephin Merrittの3人で交互にとったり掛け合いしたり。USの時の適度にとっ散らかった楽しさはやや薄れて、ひたすらさくさく歌を聴かせていく。

Night1が"Absolutely Cuckoo"から"Promises of Eternity"までの35曲を、Night2が"World Love"から"I Shatter"までの34曲を演奏する。各夜の中間地点で約20分の休憩が入るところもUSのと同じ。音楽のライブというよりは、毎日毎回同じ演目、同じ曲をやり続けるブロードウェイのミュージカルなどの方に近いのかもしれない。

バンド構成としては7人→5人となったことでアンサンブル(とコーラスも)が少し整理されて、より聴きやすくなった気がするが、このバンドに「聴きやすさ」なんて誰も求めていないので、そこは評価の別れるところかも。 NYでやったようなハシゴを使った寸劇もなく、曲間のStephinのコメントも少なめで、要は疲れているのかも、それは疲れているよね、わかるわー なのだが、演奏される楽曲の性質上、そういった疲弊感もきちんと取りこまれ伝えられてしまうので万能、というか始末に負えない – これだから愛ってやつは、と。

愛にまつわる万象 - 高揚、どん詰まり、疲弊、殺伐、憐憫、支離滅裂、パンク、殺意、自分に向かうもの、同性/異性に向かうもの、クイア―、これら(の複合)を博覧会ふうに横並びにして、でも決して、断固として愛のすばらしさ美しさを直接的には礼賛せず、そうすることで資源ごみみたいにそこらじゅうにぶちまけられた愛の抜け殻、残滓あれこれがメリーゴーランドのように回りだす。 それはツアーを通して何十回でも繰り広げられるなか整理されることも磨きあげられることもなく、うめき声に近い何かとしてこちらに届いてくるし、こっちもそういうものとしてずーっと、ほぼ25年間聴いてきたの。

最後に「それでは休憩に入ります。次は25年後に」と静かに告げて締めたStephinがかっこよく見えてしまった。

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