9.12.2024

[film] Firebrand (2023)

9月8日、日曜日の昼、Curzon Mayfairで見ました。

ついこの間まで、National Portrait Galleryでは”Six Lives: The Stories of Henry VIII’s Queens”ていうヘンリー8世と6人の妻にフォーカスした展示をやっていて、そこではErnst Lubitschのサイレント”Anna Boleyn” (1920) - Emil Janningsがヘンリー8世だって! - の一部がプロジェクションされていたりしたし、この人たち周辺て昔から沢山いろんな映画が作られているし、日本だったらぜったい大河ドラマの定番だろうし、実際にいろいろあったようだし、せっかく英国にいるのであればこの辺は追っていきたいものだ、と思うので。

監督はブラジルのKarim Aïnouz、Elizabeth Fremantleの小説 -”Queen's Gambit” (2013)をHenrietta AshworthとJessica Ashworthの姉妹が脚色したもの。撮影はAlice Rohrwacher作品やEliza Hittmanの”Never Rarely Sometimes Always” (2020)などを撮っているフランスのHélène Louvart。デジタルでなんか細工したりしているのかもしれないが、王室の衣装の色のかんじとかインテリアの落ち着いて綺麗で見事なことったらすばらしくて、びっくりする。そこだけでも。

ヘンリー8世(Jude Law)の6番目の妻Katherine Parr (Alicia Vikander)は既に結婚してて王妃であるところから始まって、まだ若い先妻の娘たち - Elizabeth (Junia Rees)やMary (Patsy Ferran)やまだ子供のEdward (Patrick Buckley)も傍にいて、はじめのうちは王がフランス遠征で不在だったりで、留守の間にみんなで気楽に遊んだり、地下で抵抗活動をしている幼馴染のAnne Askew (Erin Doherty)と会ったりしているのだが、王が戻ってくるといろいろ面倒なことがあちこちで巻き起こってきてどうしてくれよう、になる。

とにかく邪悪で傲慢で猜疑心まみれでKatherineだけじゃなく周囲のみんなから死んじゃえばいいのに、って憎まれ忌み嫌われ続けているヘンリー8世を演じるJude Lawの鯨のような重量感がすごくて、ボディスーツかなんか着ているのだろうが、00年代にはrom-comでそれなりにキラキラしていた彼が、でっぷりころころして足の傷のせい周囲にひどい臭いをまき散らし、それでも気まぐれでランダムに周囲を虐めまくる最低の王を演じて、ベッドシーンではむっちり白いお尻まで晒して、その怪物のありように圧倒される。ある時代のJude Lawに対するこれでもか、っていうイジメのように見えなくもない。

筋はほぼ、そんなパワハラ大王との神経戦を含む終わらない/なかなか死んでくれない - 攻防で、Katherineは親友のAnneを火あぶりにされたり、自分もあらゆる疑いをかけられて疲弊して流産までして、溝口映画の女性みたいに絶望のどん底におちた彼女(たち)がどうやって戦ったり我慢したり逃げたり隠したりしていったのかを描いてなかなかしんどい。もうちょっと彼女の感情のひだひだを描いていってもよかったのでは、とか。 実際にそこまでのことがあったのか、どこまできつかったのかわからないけど、映画を見ているともし自分の前でこんなことをされたり言われたりしたらどうする? みたいなことばかりいちいち考えてしまったりする。

ヘンリー8世がどうやって亡くなったのか、この映画はひとつの解釈を示していて、この流れだとまあそれはそうかも、になるのだがとにかくKatherineがんばれー、にはなった。Alicia Vikanderもすばらしい。

エンドロール、重厚なオーケストラと共に静かに閉まったあと大音量でまさかのあんな曲が流れ出し、そこだけはおおーってなって、個人的にはとても気持ちよくすっきりしたかも。

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