9.19.2024

[film] Will & Harper (2024)

9月15日、日曜日の昼、Curzon Victoriaで見ました。

ロード・トリップを追ったドキュメンタリーで、監督はすばらしいコメディ “Barb and Star Go to Vista Del Mar” (2021)を撮ったJosh Greenbaumで、今年のサンダンスで上映されてからNetflixに買われて、なのでもうじき日本でも見れると思う。

90年代の半分以上をNYで過ごしていたので、あの当時のMTVとSaturday Night Live (SNL)がなかったら自分はたぶん死んでいた。だからこれはもう必須のやつで。

“Will”はもちろんWill Ferrellで、Adam SandlerやChris FarleyやRob Schneiderが思いっきり盛りあげた後のSNL– 誰もがもうあれ以上のはないんじゃないかと思った – に現れてCheri OteriやChris Kattanと共に次の黄金時代を築いた、その真ん中にいたのが彼で、Andrew Steele - ジェンダートランジションをしてHarper Steeleとなる前の「彼」 - は、Willと同時期にSNLのライターとなって、やがてヘッドライターとしてSNLを支えることになる。 つまりこの2人は自分にとっては命の恩人のようなものなので、見ないわけにはいかない。

そういうのを差っ引いてもすばらしいドキュメンタリーになっていると思う。

コロナ禍のロックダウン中、WillはHarper SteeleからEメールを受け取る。これまでずっと考えてきて言わなかった/言えなかったことだがAndrew Steeleはジェンダーを替えて名前も変えて、女性Harper Steeleになりました、と。Willはわかった、伝えてくれてありがとうと言いつつ、続くメールのやりとりがあって、とにかくふたりはひとつの車に乗って大陸を横断する旅、そうやって一緒に過ごす時間をもつことにした、と。

Harperの住むNYのUpstateからCityに降りて、Harperの子供たちとも会って、見ている我々はWillと同じ目線と時間で、長年の友人がジェンダーを変えることにしたその決断のありか、そうなっても友だちだよね、はもちろんあるとして、そこに至るまでに彼がひとりで抱えていたであろう苦痛とか、それをどうしてわかってあげられなかったのだろう、とか、いろいろ去来してくるものがあるに決まっていて、そういうのを抱いて車に乗りこむ。

NYではNBCのSNLのスタジオに行ってLorne Michaelsとも会い – 写真が一瞬でるだけ – いまのSNLのメンバーたちとも会って、ワシントンDCから中西部へ。誰もが知っているアメリカの風景を巡りながら、素朴な疑問から今の思いまで、率直に語りあい、ふたりでべそかいたり泣いちゃったりもして、それはこういうドキュメンタリーによくあるやつなのでまたか、って思いつつも、Harperがこんなことを内面に抱えながらあれらのコメディスケッチを書いていたのか、というあたりにちょっと驚き、それは勿論Willにとってもそうであろうから、改めてじーんとしたり。

あとは明らかにトランスに対する偏見や差別意識の強そうな中西部の町にあるいかにもの典型的な酒場に入ってHarperの姿を晒して、雲行きが怪しくなったらセレブであるWill Ferrellが出て行って場を収める - 実験のようなこともしてみたり(ひとつはうまくいって、ひとつは酷いことになる)、Harperの生まれ育った町で彼が子供の頃に乗り回していた一輪車に乗ってみたり、西海岸の場末で、すべてが嫌になった時に逃げこむ場として一万ドルで買ったという廃屋のような家とか - ここのシーンはかなしい - 子供のように花火をしたりダンキンドーナツにこだわったり…

あとは先々で出会う昔の仲間たち - Will ForteとかSeth MeyersとかMolly Shannonとか - エンドロールを見るともっといた模様。ぜんぶ見せてほしい。

結局、(当たり前だけど)名前と外見が変わっても彼女は彼、というか彼女のまま - むしろ初めからあった彼 or 彼女のままであるためにトランジションしたのだ、というのが彼女への思いや敬意として固まっていくばかりで、隠れる必要なんてどこにあろうか? になるの。そしてそんな彼女を泣いたり笑ったりしながら誇らしげに受けとめているWillもよいなー。

ところどころで流れてくる歌がよくて、First Aid Kitの”America”とか、Bon Iverの後に被さってくるThe Bandの”The Weight”とか。映画の真ん中くらいでこの旅のテーマソングを作って貰おう、って2人が連絡をとったKristen Wiig、そこから連絡の途絶えてしまった彼女がようやく仕上げた曲が最後にきて、それがまあすばらしく泣けるやつで。彼女の声、すてきよねー。シングルでリリースしてほしい。

うっかりしていたのだがこの日の晩、BFI Southbankで、この作品の上映とWillとHarperと監督のQ&Aがあって、気づいた時には売り切れで、同じ時間に別の映画のチケットを取ってしまっていたので諦めた。会いたかったなー。

いろんな人に見られてほしいやつ、って久々に思ったかも。

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